七夕祭りは、華やかに変身して
暫くカフェでお話をした甲斐もありまして、
懐かれた…とは変な話ですよね…。彼女は私より1歳年上ですが、前世からの乙女ゲーキャラへの憧れが強い所為なのか、私達のことを敬うようなご様子が、チラホラと…感じられますのよ。何と言うか…憧れのキャラに会えた、というような感じでしょうか…。そういう熱視線を注がれますのよ、それはもう…
実は私の計画では、私達が悠里先輩に懐いちゃおう…と策略しておりまして、途中まではそういう流れになっていたと思うのですが、気がつけば…逆の流れになっていました的な…???……う~ん、何がいけなかったのだろう…。
「随分と…仲良くなったんだな。瑠々華さん達ならば、
いや、光条さま…。この場合、逆ではありませんの?…光条さままで、悠里先輩に私達が仲良くしてもらう…とは、思われていませんのね。確かに彼女の性格面から考えるに、そういう風には考えられないのでしょうけれど…。う~ん、何となく…光条さまの恋のお相手というより、人見知りな妹をご心配されるお兄様、という感じ…なのでしてよ。…などと自分のことは棚に置き、他人のことを心配する私…なのでした。
その後はゾロゾロと、男女10人でペチャクチャお喋りしながら、少しお下品かもしれませんけれど、七夕祭りの露店の食べ物を買い食いしたりして、食べ歩きしておりました。前世のお嬢様だった麻衣沙は除外ですが、他の4人の女性陣は前世が一般庶民だったこともありまして、露店での買い食いを懐かしく思うのですよ…。エリちゃんと美和ちゃんは、今も時折されていらしたようでして。…ううっ、お嬢様なのが、裏目に出ましたのね…。しくしく……
麻衣沙は初挑戦のご様子でして、嬉しそうにされてます。今迄も毎年七夕祭りには来ましたけれども、今はお嬢様ということもありまして、転生者とバレないようにしなければ…と、私は一度も買い食いはしておりませんのよ。
何時の間にか私の横には、樹さんがおられます。他の皆さんも何気無く、カップルで歩かれていましたわ。そして光条さまも悠里先輩と…。何となく自然な感じで、良い雰囲気なのですが…。如何せん、彼女の服装や髪型やお化粧が…エトセトラ。野暮った過ぎまして、キラキラ派手系男性と地味すぎ女性では、釣り合いが取れておられません…。その証拠に、お2人の周りを通り過ぎて行かれる人々が、振り返ってまでジロジロと…見られておりました…。う~~む……。
「折角の七夕祭りなのだから、浴衣を着たルルを見たかった……。」
「………それですわ、樹さんっ!」
「……へっ?……それとは…どれのこと?」
「決まってますわっ!…着物のことですわっ!…とっても、いいアイデアでしてよ。ナイスですわ、樹さん。」
そう悩んでおりました時に、お隣の樹さんから神がかりの呟き声が…。私の着物姿を見たい?…そうだ、その手がありましたわ。着物姿ならば、彼女をもっと輝かせられるかもしれません。
私1人で盛り上がっておりますと、樹さんはキョトンと目をパチクリされ、可愛いかも…とか思っている場合では、ないですね…。彼はお坊ちゃまですから、こういう所でレンタルしようとは、思っておられないことでしょう。
私はすぐさま、エリちゃんにご相談致しましたわ。こういう時には、エリちゃんの方がきっとご存じの筈。案の定エリちゃんは、スマホを使わずともご存じでした。「私が案内しますね。」と言うとスタスタと、私達の道案内をしてくださいます。麻衣沙と美和ちゃんにもお伝えして協力を仰ぎましたので、美和ちゃんが、悠里先輩を連れて来てくださってます。樹さん達男性陣は行き先が分からず、結託して先を歩く女性陣を、後ろからオロオロと追い掛けて来られていて。
暫く歩いて人混みが少ない場所に、そのレンタル着物屋さんのお店がありましたのよ。エリちゃんは以前に、着物のレンタルをされたそうですわ。今回は私達全員、レンタルする予定でしてよ。そのぐらいのレンタル料金ならば、私や麻衣沙に樹さんと岬さん、そして光条さまもおられますし、少々高くついても大丈夫ですわ。
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本来ならば、悠里先輩だけのレンタルでOKですが、彼女お1人だけがレンタルするのは、戸惑われることでしょう。それならば…全員でレンタルすれば、良いのですわ。女性陣だけではなく、男性陣も…ですよ。
そうご相談致しましたら、エリちゃんも同様に右堂さんとお2人で、レンタルされたそうですわ。何でも、彼が支払われたとか…。右堂さん、以外と気が利かれますのね、見直しましたわ…。
同様の事実から…申し上げますと、樹さんにしろ岬さんにしろ彼らは、レンタルではなく中古でもなく、新品を即決で購入されますのよ…。然も、バカ高い高価な商品を…。現金ではなくクレジット払いをされまして、それが…前世では一度も見たことのない、ブラックカードですからね…。前世と同じでカードの意味も種類も、同じ意味を持っておりますから…。
まだ私達が小学生の頃に、「これで支払いを…。」と樹さんが提示されたのが、ブラックカードでしたのよ…。その時、私が固まったのは…言うまでもありません。その後に泡を吹いてぶっ倒れたのが、昨日のことのようですわ。…ああ。思い出すだけでも、恥ずかしい……。
さて、何としてでも悠里先輩を、光条さまにお似合いの飛びっきりの美少女に、してさしあげなくては…。そういう使命に私も燃えておりますが、こういう時は麻衣沙にお任せですわね。勿論残りの私達も、お手伝い致しますわよ。
レンタルする着物や小物は麻衣沙が選ばれ、私は悠里先輩の着付けをお手伝いし、髪を結うのはエリちゃんにお任せして、悠里先輩を変身されていきます。男性陣の着物に関しては、美和ちゃんに全てお任せしておりますが。
男性陣は、美和ちゃんの勢いにタジタジですわね。それでも、樹さんは漸く意味が分かったとばかりに、嬉しそうにワンコのような表情をされ、私と目が合うとにこりと満足げに笑まれますのよ。…うわあ~。何か、勘違いされてそうな予感が…。面倒臭いことになりそうな気が、致します…。そう言えば、私の着物姿を見たかったとか…でしたっけ。もしかして、私が着物をレンタルする理由が、樹さんの申し出を受け取ったと、そう思われてます…?
そう気付いた途端、私は…恥ずかしくなって来ましたわ。悠里先輩の着付けに集中し、頭の中から雑念を追い払う私…。悠里先輩の着付けが全て終了し、着付けをお手伝いしていた私達4人は、ハッと致しましたわよ…。…おおっ!…何とも愛らしい美少女が、出来上がりましたわね…。まるで…芋虫から行き成り蝶になられたような、変身ぶりでしてよ…。此処に居るキャラで、唯一の普通顔は…もしかして、私だけ…?
「……まあ。とてもお似合いですわね。これで…光条さまのお隣に立たれても、全く見劣り致しませんことよ。」
「本当ですね…。悠里お姉さまって、案外とお色気がムンムンですね?」
「わあ~~!…とっても素敵~。悠里さん、超可愛いっ!」
麻衣沙が選ばれたデザインですけれど、麻衣沙自身も想像以上だった模様ですね。髪型をアップにし髪飾りを選ばれたエリちゃんも、動揺に驚かれて。確かにお色気もあり、胸もそれなりに大きくて。…う、羨ましい。背の低さは変わらないのに、色気も胸もない普通顔の私は、この中で一番貧相なのかも…。ううっ…。
こうして悠里先輩は、地味系女子から華やか系女子へと変貌され、肝心の光条さまは暫し見とれておられるご様子。真っ赤になられた着物姿の光条さまに、悠里先輩の方も見とれておられて。その後は良い雰囲気になりましたのよ。ふふふふっ…。これで私も、恋のキューピットかしら?
ふと私の目の前が暗くなり、何とはなしに見上げますと、着物姿の樹さんが私の直ぐ目の前に、立っておられて。…うわあ、物凄くカッコいい~。着物姿の樹さんを拝見したのは、何年振りかな…。大学生になられてからは新年も紳士服でしたし、ここ数年は拝見しておりません。私は暫し、着物姿の彼に見惚れておりました…。
「ルルは常に可愛いけれど、今日は…その、一段と可愛いよ…。あまりにも可愛過ぎて、今直ぐ…ハグしたいぐらいだ。」
「………樹さんも、その着物姿…素敵です。…めちゃ × 2…かっこいい……」
大好きな樹さんに褒められた私は、普通顔とか胸がないとか、どうでもよくなりましたわ。顔を真っ赤にしながらも、私も…樹さんをベタ誉め致しますと、彼は珍しく真っ赤になられ、照れておられましたのよ。…ふふっ。こういう樹さんも、可愛いっ!…着物姿がめちゃ × 2…かっこよくて、思わずボソッと呟いてしまって…。その途端彼に、着物が着崩れないよう…そおっと抱き締められ。
「…ああ。今すぐキスしたい…。出来れば、ルルを…食べちゃいたい…。」
そういう不純な呟きが、すぐ耳元から聞こえて参りますが、私は…聞こえないフリをして。…いえいえ、まだ…無理なんです、樹さん…。もう少し、待ってくださいませ…。私の心が、追いつくまで…。
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前回からの続き、七夕当日の話です。
今回は前半後半共に、瑠々華視点です。
編集も全て終えてから気付いたのですが、悠里のセリフだけなかった…。まあ、いいか…。地味系女子の悠里が瑠々華達のお陰で、華やか系美少女へと見事に変貌しています。ルルが頻りに、自分の顔を普通顔と連発しますが、気付いていないのは当人だけかと…。
※読んでいただきまして、ありがとうございました。
次回は、また何時になるか…分かりませんが、またよろしくお願い致します。
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