昼休み……ある父親の愚痴(お題:現代社会怪奇)

「とうとう来ちゃったかあ」

「何が?」


 お昼の休憩時間、同僚が意味ありげに呟いたので、聞いてやることにした。


「アレだよ……反抗期」

「あー」


 そう言えば、彼には今年で五歳くらいになる子供がいたはずだ。子供だっていつまでも天使でいるわけではないだろうとは思ってはいたが、ついに来てしまったようだ。まあ、子供の成長の上で必須なことだ。俺も経験がある。


「で、何が大変なんだ?」

「構ってほしくてわざおもちゃを乱暴に投げるとか、寝ろって言ってもなかなか寝ないとか、とにかく、俺も女房もまいっちゃって」

「あー……そりゃ大変だなあ」

「他人事だなあ~」

「誰だって経験することさ。俺んとこのだって、親のいうことなんて聞きもしない」

「え?」

「TVだってアニメのDVD見たいって朝になっていきなり言い出すしさ。お嫁さんも、仕事前にはTVのニュースみたいっていつも喧嘩さ」

「お……おい、お前、何を」

「ん?」


 なんだ、人が折角相談に乗ってやってるというのに。


「そら、子供の育児なんて人によってバラバラだけどさ、大変だってことだけは同じなわけよ。だから、お前も嫁さんにまかせっきりにならないように……」

「そういうことじゃなくて!」

「な、なんだよ!急に怒鳴って……」

「なにって……お前の嫁さん……八年前に死んだだろ……死産で」


 俺は……彼が言っている意味が分からなかった……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る