夏休み
第16話お見舞い1
夏休みが始まり、数日が経ったある日。
俺は、火野家にお見舞いに訪れる途中、後ろから聞き覚えのある高い声が名前を呼ぶ。
「あれっ牧平君だよね。おーい、牧平くーん」
俺は、立ち止まって振り返る。
「佐藤さん。近所なの、佐藤さんの家って?」
「えっとぉ、友達ん家にね、行くとこだよ」
佐藤弥生は、小さく頬を掻いてこたえた。
何か隠してるような仕草をしたことが気になったが、訊ねることはやめた。
「へぇ。もしかして火野さんを訪ねるんじゃ、ないの?」
「ちっ違うよ。体調が悪いって言ってて、迷惑になるでしょ。違うから!」
動揺をみせる彼女。
「火野さんから聞いたの、体調が悪いこと?」
「そうだよ。何で睨んでんの、怖いよ」
「おかしいよ、佐藤さんが知ってるのは。誰から聞いたの?」
俺が火野家にお見舞いに訪れようとしているのは俺と出かける約束をしていて、体調不良になり、俺にしか連絡を寄越していないから。
それに、彼女には俺達が出かけることは知られていないはずで両親はおらず、火野さんの容態を知ることはできない。
「......」
「佐藤さん。妬んでたりしてるの、火野さんを?」
「......う、うん。少しだけ......牧平君といることが多いな、って思って胸が......ざわついて」
「少ないけど断るのは。誘ってくれたら行くよ。じゃあ、またね」
俺は、歩きだし、火野家に向かう。
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