第9話気まずい空気

4限目が終わり、火野さんの教室に向かう。教室から出てきた女子に火野さんを呼んでほしいと頼む。

「ちょっといいかな。火野さんを呼んでほしいんだけど」

「あっはい。......って、牧平君だ。なんで教室に?」

「火野さんと約束してて、迎えに」

「えっ、火野さんとですか!意外な組み合わせ~」

彼女に驚かれる。

「火野さーん、人気の彼がきたよー」

彼女は、教室にいる火野さんに大きな声で呼ぶ。

すぐに火野さんが出てきた。

「や、やめてよ。恥ずかしいから、でも...ありがとう」

火野さんは呼んでくれた彼女に小さく気持ちを伝える。

「頑張ってね、じゃあ!」

廊下を走っていく彼女。

「行こうか、火野さん」

「はっははい。牧平さん」

俺と火野さんは並んで屋上に向かう。その間彼女は俯いていた。すれ違う人達からの視線がたえられなかったみたいだ。

屋上の扉を開けて、ベンチに向かう。

「火野さん、顔をあげて。もう大丈夫だよ」

彼女は顔をあげる。

俺達は、ベンチに腰かけ、昼食を口に運ぶ。

楽しく会話をしていると、扉が開き結野先輩が現れた。

「牧平く~ん、楽しそうね。隣に居るのは?」

「どうしてここに結野先輩が...」

「牧平君を見かけて。話したくて、追いかけてきたの」

だめだったかな、牧平君。

いつもと変わらない優しい声で言う彼女。

俺の目の前に立ち止まる。

この状況に火野さんは俺と結野先輩を交互に見て、あたふたしていた。

「だめではないですよ、結野先輩」

俺の返事に結野先輩は小さく笑う。

「わっ私は、おおお邪魔ですよね。もう...行くので、私は─」

ベンチから立ち上がり、走る寸前の火野さんの腕を掴む俺。

「邪魔なんかじゃないよ、火野さん。大丈夫だから、座って火野さん」

彼女は大人しくちょこんと座る。

結野先輩も俺の隣に座る。

「牧平君、手を繋─」

「あっあのときのことは」

火野さんに聞かれる前に慌てて、結野先輩をせいする。

「えっーと、今日の放課後、図書室でということで、許してほしいのですが...」

俺は、彼女の顔をうかがいながら提案をする。

「放課後ね、待ってるよ。牧平君」

彼女は、屋上を後にする。

俺は、胸を撫で下ろす。

「ごめんね。火野さん。変なところを」

「結野先輩と仲、いいんですね......私と居て、いいんですか」

火野さんから笑顔が消えていた。

「......」

「牧平さん、少しだけでいいんです。仲よくしてくれませんかっ」

「少しと言わないで、仲よくするよ。火野さん。付き合っていないから」


俺達は、昼食を食べ終え屋上を後にした。気まずい空気が漂った。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る