第27話・ほどほどにお願いしますよ
それからのシャルの行動は俺にとって謎だった。暇さえあれば俺の隣にいる。なんだかんだ理由をつけて俺の世話を焼きたがる。それは島で暮らしていた時にも見られた行動だったけれど、それはどこか遠慮がちだったものが、最近では堂々としたものへと変わってきた。
食堂では俺の隣の席についていた彼女がスプーンを差し出してきた。俺がチョコを抱いていたからなのだろうけど、いきなり目の前に突き出されたら驚く。彼女にしてみれば親切のつもりなのだろうけど。
「ナツさまは両手が塞がっているようですから、わたくしが食べさせて差し上げますね」
と、ニコニコしながら差し出すものだから、悪気はないんだよな? と、周囲を伺ってしまった。オウロ達は苦笑していた。
「別に良いよ。気にせず先に食べてくれ。俺はチョコと食べるからさ」
「チョコちゃんに食べさせていたらナツさまは……」
シャルは引く様子がなく、ガイムと目が会えば可笑しそうにしていた。これはヤツの差し金か? と、ピンと来る。皆の前で美少女に食べさせてもらうってどんな罰だよ。
「ああ。いいよ。気にしないで。チョコと一緒に食べるから。なあ、チョコ」
「ニャアアン」
俺は目の前のスプーンは無視し、パンを手に取ると端を口に咥えてチョコに向けた。チョコは俺の意を理解して、反対側から食べ始める。クーっ。一度やってみたかったんだ。愛猫と同じものを食べるってやつ。かなり萌える。
最後まで食べきると、チョコは俺の唇をぺろりと舐めた。そして得意げな顔をして横を見る。つられて見ると顔を真っ赤にしたシャルが慌てて席に着くところだった。
「あてられますね。ほどほどにお願いしますよ。ナツ」
「ほんと。チョコちゃんが可愛いのは分かるけど」
向かい側の席に着いているオウロから呆れた声がかけられて、それに追従するファラルの声があがる。ガイムはといえば、落ち込むシャルをよしよしと頭を撫でて慰めていた。
やっぱりガイムの仕業だったらしい。後でヤツをとっちめないとな。と、思っているうちに日が暮れた。
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