第107話 チンケな疑問

「ふぐうっ!」


 ――ドサッ……


 再び訪れた暗闇と静寂せいじゃくの中。

 短いうめき声とともに、何者かが倒れるような気配が伝わって来た。


 ヤッたか!

 って言うか、ヤッちまったか!?


 いくら老人とは言え。

 血まみれになった蓮爾 れんじ様を、片手で鷲掴わしづかみにしている様なヤツだ。

 完全に怪しいし、俺達の敵って事で間違いは無いと思う。


 とは言えだなぁ……。


 何の誰何すいかもせず、しかも何の躊躇ためらいもなく引き金が引けてしまう片岡が立派と言うか、何と言うか……。


 俺は姿勢を低くしたまま、周囲に何か他の動きが無いかを注視する。


 ……。


 依然として、静まり返る室内。

 何か特別な動きがある様には感じられない。


 どうやら、他に敵はいない様だな。

 もし敵がいたとすれば、今の片岡の発砲に釣られて、必ず何らかの行動を起こしたはずだ。


 そして、発砲炎マズルフラッシュの影響から解放され、暗闇に目が慣れ始めた頃。


 再び顔を上げ、周囲を見回してみれば、テーブルの向こう側で壁を背に、周囲を警戒している片岡の様子が見てとれた。


 どうやら俺の方が例の老人の場所に近いようだな。

 となれば俺が先行し、片岡がサポートに回った方が良いだろう。


 俺は右手を挙げて自分が先行する事を伝えると、片岡の方からも了承の合図が帰って来る。


 よし、行くか。


 俺は銃を構えたままの格好で、老人が倒れている場所へと移動を開始した。


 ――ジャリッ……シャリ、ジャリッ


 崩れ落ちた大理石の砂が足元で不気味な不協和音を奏でている。

 耳をそばだてなければ聞こえないほどの小さな音でしかないのに。

 それが、あまりにも耳障りなように感じられて、思わず顔を歪めてしまう。


 くっそ! 緊張感が半端ねぇ。

 口から心臓が飛び出そうってなぁ、まさにこの事だな。

 チックショウ! 落ち着け俺っ。落ち着けッ!

 

 そう自分に言い聞かせながら、ようやく目的の場所へとたどり着いた俺は、横たわる老人へ銃口を向けつつも、その首元へと左手をあてた。


 脈はねぇな……。


 完全に事切れているようだ。


 次に老人の頭部から背中の方にも手を伸ばしてみる。

 側頭部と、肩口に生暖かいヌルヌルとした感触が感じられる。


 片岡の撃った弾は、この老人の左側頭部と肩に命中したようだな。

 頭部の方は……射出口もあるなぁ。


 完全に貫通してる所をみれば、間違いなく即死だ。

 俺は老人がまとっていたトガの端を使って、左手に付いた血を拭いとる。


 身長は百六十センチほど。

 若いころに何かスポーツでもやっていたんだろうか?

 貧相な体格の割に、肉付きは良い。


 まぁなぁ。

 もしかしたら、気の良い爺さんだったのかもしれないが。

 こんな場所でウロウロしてたら、そりゃ撃たれても文句は言えねぇってもんだぜ。

 なぁ、爺さんよぉ。片岡の事は恨んだりせず、往生してくれや。


 俺は左手一本で軽く爺さんを拝むと、今度は老人の横に倒れているもう一人の人物へと手を伸ばした。


蓮爾 れんじ様……」


 本来の目的はこっちだ。

 老人の時と同じように、蓮爾 れんじ様の首元へと手を伸ばす


 脈はある。

 呼吸も感じられる。


「おいっ、片岡っ!」


「はいっ!」


 周囲を警戒していた片岡が、二つ返事で駆け寄って来た。


「お前が蓮爾 れんじ様の傷の具合を確認しろ。急げ、時間が無いっ!」


「はいっ!」


 ようやく目が慣れて来たとは言え、この暗さだ。

 深手かどうかを確認するには、どうしても手探りとなってしまう。

 流石に男の俺がそれをする訳にも行かねぇからな。


 俺は片岡が蓮爾 れんじ様の衣装を脱がせ始めた所で視線を上げ、周囲を警戒する体勢へと移った。


 いま俺達の居る部屋の最奥部が最も暗く、入り口に近い方が星明りで照らし出されていてわずかに明るい。

 そんな関係もあってか、この場所からであれば部屋の全域を見渡す事が出来た。


 テーブルのそこかしこに伏せている黒い影。

 これらは全て司教連中の亡骸なきがらって事だろう。

 かなりの人数が蓮爾 れんじ様の祝福により、命を落としたようだ。


 部屋の壁際に置いてあった衝立ついたても、その全てが破壊されるか床に倒された状態で、敵がひそんでいそうな場所はどこにも見当たらない。


 これなら表の二人を呼んでも大丈夫そうだな。


藍麗ランリーに、紅麗ホンリー! 聞こえてるかっ? 部屋の中は大丈夫そうだっ! それから蓮爾 れんじ様が怪我をしてるみたいなんだっ! どっちか一人だけ手伝いに来てくれっ!」


 入口付近で小さな影が揺れている。

 どちらが部屋の中へと行くのか、相談でもしているのだろう。


加茂坂かもさかさん」


「おぉ。どうだ? 蓮爾 れんじ様の様子は?」


 どうやら片岡の方も蓮爾 れんじ様の傷の確認が終わったらしい。


悪い知らせから。胸と上腕を含む複数個所に打撲の痕が見受けられます。恐らく肋骨ろっこつも何本かイってますね。早く医者に診せないとかなりマズい状態だと思われます。また、頭部裂傷による流血はさほど多くはありませんが、こちらについても早急な対処が必要です」


 そうか。

 しっかし、肋骨はマズいな。

 骨折した肋骨が内臓を傷つけてしまう場合も考えられる。

 医学の知識が乏しい俺達では、さすがに内蔵の状態まで判断するのは難しい。

 とにかく、一刻も早くこの場を離れ、病院へと担ぎ込む必要がありそうだ。


「そうかっ。で? って事は、良い知らせもあるのか?」


「はい、蓮爾 れんじ様の意識が戻りました」

  

「おぉ、そうか!」


 俺は急いで拳銃を胸のホルスターにしまい込むと、蓮爾 れんじ様のすぐ横へとひざまずいた。


蓮爾 れんじ様、加茂坂かもさかでございます。到着が遅れ、大変失申し訳ございません」


「おぉ……加茂坂かもさか……か」


 短い呼吸を繰り返す中。

 言葉を発するたびに、顔を歪める彼女。


 やはり肋骨が内臓……とりわけ、肺を圧迫しているようだな。

 こりゃ、あまり喋らせない方が良い。


蓮爾 れんじ様、この加茂坂かもさかが参りましたので、もう大丈夫でございます、どうかご安心下さい。ただ、片岡の見立てでは胸部に打撲の痕があるとの事。かなり痛むかと思いますので、あまりお話しにならない方が良いかと存じます」


 俺からの簡単な説明に、蓮爾 れんじ様が小さくうなずき返してくれる。


「ありがとう……でも私は……大丈夫だ。それより……今は……何時頃……だ? 私は……どのぐらい倒れて……いた?」


 見ている限りでは、息も絶えだえと言う状態だ。

 にもかかわらず、まずは状況を把握しようとする蓮爾 れんじ様の不屈の精神力に頭が下がる。


「はい。時刻は正確には分りかねますが、蓮爾 れんじ様の祝福が止んでから、十分程も経ったかどうか? と言う所です」


「そうか……」


 しばらく何かを思案する様な表情を浮かべた後で、彼女はもう一度口を開いた。


「この部屋には……他に誰か……居なかった……か?」


 ん? 誰の事だ?

 あぁ、例の老人の事か?


「はい。私と片岡が駆けつけた時には老人が一名おりましたが、蓮爾 れんじ様に危害を加えている様に見受けられましたので、とっさに危険人物と判断し、即時排除いたしました」


「排……除……!?」


 こんな暗闇の中にもかかわらず、みるみる内に蓮爾 れんじ様の表情が強張り始めて行く。


「そっ……その老人……は……いま……どこに!?」


「はい。蓮爾 れんじ様の左隣、片岡の向こう側で倒れております」


加茂坂かもさかっ! 手を……貸せっ!」


 そう言うなり、蓮爾 れんじ様が無理やり体を起こそうとし始める。


「いやっ、しかしっ!」


「良いから……早くっ! 手を……手を貸せっ!」


 焦りのこもった蓮爾 れんじ様の声に押される形で、俺は彼女を背後から抱きかかえるようにして、半身を起こす手助けをする。


「おぉ……おぉぉ……なんと……なんと言う事を……」


 床の上に横たわる老人の姿を目にした途端、蓮爾 れんじ様の打ち震える様子がひしひしと伝わって来た。


 何者なんだ? この老人は?

 蓮爾 れんじ様の関係者か何かだったか?

 だとすると、かなりマズいな?


 でも着ていたものは、粗末なトガ一枚だけだったし。

 司教位の連中では無いと思うのだが……。

 それとも昔に世話になった人とか?

 そう言う感じの誰かだったのかもしれんが。

 ただ、怪我を負っている蓮爾 れんじ様の髪の毛を、不敬にも鷲掴みにする様なヤツなんざ、たとえ神が許したとしても、この俺が許さねぇ。


 などと考えていた所で、俺の背後から声が掛かった。


蓮爾 れんじ様、お体の具合は?」


紅麗ホンリー……か」


 打ちひしがれた様子の蓮爾 れんじ様が、紅麗ホンリーちゃんの声を聞いて、ゆっくりと振り返る。


 あぁ、紅麗ホンリーちゃんが来てくれたのか。

 と言う事は、藍麗ランリーちゃんが外で監視を続けてくれる事になったんだな。

 確かに活動的なのは紅麗ホンリーちゃんの方だしな。

 仮にこの後、蓮爾 れんじ様を皆で運び出す事になったとしても、藍麗ランリーちゃんよりは紅麗ホンリーちゃんの方がまだ使えそうな気はする。


「はい、紅麗ホンリーでございます。蓮爾 れんじ様は、かなり御加減おかげんが悪いように見受けられます。私ではしたる事も出来ませんが、できればお体の方へ少しでも癒しを……」


 とここで突然、蓮爾 れんじ様の声に力が籠った。


「いや、紅麗ホンリーよ。私の事など、どうでも良いっ。それより……あの方を……。あの方を癒して差し上げよっ!」


 蓮爾 れんじ様の視線の先に横たわるのは、例の老人。


 最初の方こそいぶかし気な表情を浮かべていた紅麗ホンリーちゃんだったが、次第にその顔が驚きの表情に包まれて行く。


「えっ!? まさか……そんな事って……」


 なんだ、なんだっ!?

 紅麗ホンリーちゃんまで、この爺さんの知り合いか?


 更なる不安に駆られた俺は、背後で立ち尽くす紅麗ホンリーちゃんに向かって、この爺さんの事を聞き出そうとした、ちょうどその時。


 ――バシュゥゥゥゥゥ!


 突然、辺り一面に蒸気が立ち込め始めた。


「なっ、なんだっ! ガス? 催涙弾かっ!?」


 俺は蒸気を吸い込まないようトガの端で自分の鼻と口を押えつけると、出来るだけ身を低くして、なんとかこの蒸気をやり過ごそうと試みる。


 なんだ!? 機動隊の突入か!?

 意外と新しい武器も持ってんじゃねぇかよっ!

 突入してくるとすれば、入り口側か?


 俺は腹ばいになりながらも、入り口付近への警戒を厳にする。


 来るか?

 来るのかっ!

 来るとしたら何人だっ? 武器は? 装備はっ!?


 数々の疑問が頭の中で浮かんでは消え、浮かんでは消え。


 えぇい、迷うな。

 これは明らかに正当防衛だっ!


 そう自分自身に言い聞かせた俺は、倒れた椅子の影から入り口に向かって拳銃を構えなおした。

 ちょうどその時、俺の背後から再び声が聞こえて来たんだ。


「ヌシは……誰じゃ?」


「!?」


 そのあまりの衝撃に、俺は拳銃を構えていた事すら忘れて、思い切り後ろを振り向いてしまう。


 あぁっ!! あの爺さんだっ!

 どうなってるっ!?

 まさかあれだけの重傷にもかかわらず、死んでなかったって言うのかっ!?


 って言うか、入り口はどうなってる!?

 突入部隊は来るのか?

 えぇぇい! 前も後ろも気になるっ!

 どうすりゃ良い? 一体どうすりゃ良いってんだっ!


 俺は半分パニックに陥りながらも、入り口と老人の両方を交互に何度も確認するハメに。


せわしないヤツじゃのぉ……」


 そんな慌てふためく俺の姿に、すっかり興味を無くしてしまったのか。

 老人は俺からの返事を待つ事なく、蓮爾 れんじ様たちの方へと移動し始めた。

 いや、蓮爾 れんじ様や、紅麗ホンリーちゃん達を素通りし、例のが横たわっていた場所へと近付いて行く。


「ふぅぅむ。残念ながらこの体はもう使えんようじゃのぉ。せめて息があれば、何が起きたかぐらいは分ろうと言うものを……」


 老人はさも残念そうにつぶやきながら、自分とおぼしき遺体の前で腕組みを始めてしまった。


 どうなってやがんだ!?

 全く意味が分からんぞ。

 この爺ィは一体どこから湧いて出やがったんだっ!?


 数々の疑問が頭の中を駆け巡る。


 って言うか、さっき死んだ爺ィとは別モンか?

 別モンなのか!?

 いや、だってそうだろう?

 俺のこの位置からでも見える。

 例の老人は間違いなくソコに横たわってるじゃねぇか。


 そんな飄々ひょうひょうとした老人の姿を蓮爾 れんじ様と紅麗ホンリーちゃんの二人も、ただ茫然ぼうぜんと見守っているだけだ。


「サクラよ。返事をせよ。サクラよ」


 老人は俺達の事は完全に無視したまま、中空を見つめて何やら独り言を言い始めた。


「ワシが眠ってから、何年経った?」


「……」


「そうか、まだその程度か……。では、なぜワシが急に目覚める事になったのじゃ?」


「……」


「ほほぉ、そうか。原因はこの女か……」


 老人が蓮爾 れんじ様に対して、鋭い視線を投げかける。


「……」


「それでワシがこの女を止めたと言う訳か。なるほどな。ではなぜ、がココで死んでおる?」


「……」


「撃たれた? 拳銃で? 誰に?」


「……」


「あぁ、なるほど。向こうにいるあの女か……」 


 老人は片岡の方へと視線を向けた後、まるで聞き分けの無い子供をさとすかのような口ぶりで話し始めたのだ。


「そこな女。いきなり無抵抗の人間を撃つとはどう言う了見じゃ。因果応報と言う言葉を知っておるか? おのが行いは、必ずやおのれに帰って来る。人を傷つける者は、人より傷つけられても文句は言えぬと言う事じゃぞ。だいたいおヌシも……」


 ――パァン!


 一発の銃声が老人の言葉をいとも簡単にさえぎってみせた!


「黙りなさいっ! いますぐ両手を挙げてっ! さもなければ撃ちます。言っておきますが、私はこの距離で絶対に外しませんよっ!」


 撃ったのは片岡だ。今回は威嚇射撃だったらしいが。

 しかも、それに合わせて啖呵たんかまで切りやがった。


 気の短いアイツの事だ。

 どうせ爺ィの長い説教話に業を煮やしたって事なんだろうが。

 しっかし、この思い切りの良さがコイツの長所でもあり、短所でもあるんだよな。


「おぉ、まこと威勢いせいの良い女子おなごだのぉ。若さと言うモノは本当に良いものじゃ」


 片岡の威嚇射撃を受けたにもかかわらず、老人は全くひるむ様子が見受けられない。

 そればかりか、一瞬、意味不明の笑顔を浮かべた老人は、何食わぬ顔で片岡の方へと歩み寄って行ったのだ。


「よっ、寄るなっ! 本当に撃つぞっ!」


 あれだけ威勢の良かった片岡だったが、今度は逆に、老人から放たれる謎の威圧感プレッシャー気圧けおされて、ジリジリと後退あとずさりして行く始末。


「その恐いもの知らずと言うヤツも、時と場合による……と言う事をヌシも学ばねばならんのぉ。そうでなければ、若くして冥府への扉プロピュライアを潜る事になろうぞぉ?」


「くっ!」


 ふと気付けば壁際にまで追い詰められ、もう後が無いような状態の片岡。

 しかし、そんな事ぐらいでひるむ様な彼女では決してない。


「ふおぉぉぉ!」


 開口一番。

 気合の入った叫び声を上げたかと思うと、ナイフとナックルダスターを握り込んだ右腕で、爺ィの顔面めがけて最速のジャブを繰り出し始めた。


 ――ビシッツ! ビシッツ!


 片岡のジャブ二連撃は、老人の軽いスウェーによって難なくかわされる。

 一瞬ではあるが、驚きの表情を隠せない片岡。


 しかし、次の瞬間。


「はぁぁぁっ!!」


 握りしめていたはずのGlockを放り投げ、全体重を乗せた片岡渾身の左ストレートが老人の顔面めがけて解き放たれた。


 最初っからコレを狙ってやがったのか!

 爺ィに対しても全く容赦ねぇなっ。

 そう言う素直かつ、老若男女に平等な所は評価に値するっちゃするが。

 それはさすがにエゲツないのでは? と問われれば、かなりのレベルでエゲツないと言い切れる事だろう。


 ――ドゴッ! ミシミシ……ミシッ!


「あぁ……やっちまったぁ」 


 暗がりの中。

 老人の顔があった場所と、片岡の左腕が見事なまでに交錯する。

 ナックルダスターを握り込んだ片岡渾身のストレートを顔面で受ければ、良くて顔面陥没、悪くすれば頭蓋骨骨折で即死の可能性だってある。


「おいおいおい、また殺さねぇでくれよぉ……」


 俺が爺ィの様子生死を確認するため、椅子の影から身を起こそうとした……その時。


 ――ガクッツ……ズル、ズルズル……


 まるでスローモーションのように倒れ込んで行く人影。

 しかしそのシルエットは、老人のモノでは無くて。


「あっ! かっ、片岡ッ!」


 一体何が起きたんだっ!?

 盛大に床との熱い抱擁を交わしたのは、老人ではなく片岡の方だったのだ。


 予想外の事態に、俺が片岡の元へと駆け寄ろうとした次の瞬間。

 俺の目の前に、両手を広げた紅麗ホンリーちゃんが立ち塞がった。


加茂坂かもさか様、このまま動かないで下さいましっ!」


「いやしかし、片岡がっ!」


「いいえ、決して動いてはなりませんっ! ここは姉様にお任せ下さいませっ!」


 姉様……だと?


 いつになく真剣な表情を浮かべる紅麗ホンリーちゃん。

 そんな紅麗ホンリーちゃんに気圧された俺は、その場を一歩も動く事なく、片岡の様子を伺いみる事に。

 するとそこには、老人の目の前で恭しくひざまず藍麗ランリーちゃんの姿があったのだ。


 え? いつの間に?


 俺のそんな素朴チンケな疑問は、藍麗ランリーちゃんの発した次の言葉によって、簡単に吹き飛ばされる事となる。


「遥か高みにおわし、常に我ら信徒を正しき道へとお導き下さるまこと尊き神。甚だ不敬な事とは存じますが、私のような一介の信徒よりお声がけさせていただく不明を、何卒お許し下さいませ」


 え? この爺さんって……。


 ……神様?


 ……マジかっ!?

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