第51話 血まみれのマリア
――フォォンッ! フォォンッ! キィィィィン!
――シュバッ! バシューッ!
見えない敵からの
グアツッ! 右目がッ!
ヤツからの
その奥では
思わず腕で
ただただ、居ても立っても居られないと言うもどかしさだけが
今では自慢の
ブラックハウンドの持つ
当然回復するまでには
魔力の
まさにそれを実感させるかの様に、僕の体からは
このまま行けば、あと一分と経たずに僕の魔力は底をつく事だろう。
すでに体中から
『タケシッ! タケシィッ!!』
悲痛なクロの
まだ僕の近くに居るんだろう。
でもクロ。
流石にもう駄目だ。
僕がヤラれている間に、クロだけでも逃げてくれ。
でないと、『僕の死』自体が無駄になってしまう。
クロ……。
出来れば、先輩と
それから、もし、もしも、生き残る事が出来たなら。
僕の親友である飯田の事も。
アイツの事も何とかしてやって欲しい。
クロ……本当に……本当にごめんなさい。
僕、結局
『タケシィッ!!』
最後の最後。
自分の想いを少しでも伝えられて……良かった。
死ぬ
僕の目に映るのは、ビルの屋上で
その周囲からは
あぁ、あれが結界の元となる魔力ってヤツか。
今更そんな事が分かったとしても、
しかし、僕の人生最後の景色が、あんな
はは……。
嫌われ者のヲタクには、これがお似合いかぁ。
……はは、ははは。
僕は
「うっ……グハッ!!」
その時突然、
何事かと大きく目を見開き、苦痛に顔を
更には両手を広げ、小刻みに震え出したかと思うと、今度は鬼の様な
「あがっ……!」
視線の先。
その中央には赤黒いシミが徐々に広がって……。
「あぐっ! あぁぁぁぁ……」
老人は
瞳は裏返り、両腕はダラリと垂れ下がったまま。
やがて老人はその場で
「はいはいはい。いきなり呼び出されて来てみれば、何? この有様は」
老人の背後から聞こえる不機嫌な声。
――ドシャッ!
たった今まで空中に浮かんでいた老人。
それが、数メートル先へと
「とりあえず、一番
老人の立っていたその場所に、
未だその姿は夜の
ただ、
「ふぅぅん。このお
やがて、その人影は何事も無かったかの様に、屋上中央付近へと歩み出て来たではないか。
全身黒ずくめ。
総エナメル地のボンデージスーツは既に
左手にはご
「さて、残りの二人……あぁ、えっと三人居るのかな? 私、試合の合間に来てるから早く戻らないとマズいのよ。相手になってあげるから一度に掛かって来なさい」
先程まであれだけ繰り返されていた風魔法はすっかりと影をひそめ、ビジネスホテルの屋上は突然の
「ふぅ……。仕方が無いわねぇ。ソッチがその気なら、私の方から行くわよ」
半ば呆れ顔の
彼女はまず手始めに
しかし……。
「いやいや。エロいお姉さん。どういう経緯でココに割り込んで来たのかは知らないけど、今の所、僕は部外者だ。うぅん。そうだなぁ……見学? って感じかな。もしどうしても戦いたいって言うなら、もう一人の方へ行くが良いさ。何しろ、僕はこの件への参加を止められている身だからね」
両手を広げ、さも残念そうにそう告げる青年。
しかし、彼女の視線は依然鋭いままで。
「あらそう? このビルの屋上に居る
そう言いながら、彼女はご自慢の超極太の黒
「まぁ、お姉さんが魔獣の味方……って事であれば、敵には違い無いけどね。でもまぁ、繰り返しになるけど、今の所僕はお姉さんと戦う気は無いよ」
「ふうぅん。そうなんだ。それじゃあ、キミはそのまま見学って事で。後で気が向いたら
とここで、
「ただし?」
「ただしね……もし参入するのなら、確実に死ぬ
少し薄い
「ふっ、良いねぇお姉さん。僕がこんなに
そう言うなり、
先生はそんな
「のっ、
またもや、洞窟の中でこだまするかの様な声が響く。
風魔法の司教だ。
だけど、
「私って、割と
そう言うなり、彼女は誰もいない空間へとその右腕を突き出したのさ。
その途端。
――ビシッ! バチッ、バチバチバチッ!
隣のビルとの丁度
ビル屋上の
そんな何も無い空間で、突然青白い
「ぐぅっ!」
激しく飛び散る火花。
その中から
「どうしたの? 貴方も
そう言いながら、両手を大きく広げてみせる
しかし、風魔法司教の方はと言えば、彼女の事を
「うふふふ。そう、そうよね。撃とうと思っても、撃てない。そうでしょ? だって、今この場は私の
確かに。
薄青に輝く波の様なモノ。
それが
色合いこそ違えど、例の爺さん司教の場合と仕組みは全く同じなのかもしれない。
「さぁ、命乞いするなら今のうちよ。でもまぁ、私は助ける気なんて毛頭無いけどねぇ」
先生は何の構えも取らぬまま、まるで普段通りの様な感じで風魔法司教の方へ歩み寄って行ったんだ。……すると。
「うっ、動くなっ! それ以上、近付くなっ! こっ、これを見ろっ!」
そう言って持ち上げたモノ。
それは……。
「
あっ!
髪の毛を
「あぁ、アナタそこに居たの? もぉ、探したわよ。ところでアナタが
って言うか。
先生ったら、敵かどうかも分からないのに、さっきの爺さんいきなり殺したって事?
うえぇぇ……。それはそれで、どうなんだろう?
「おいっ、魔導士の女。今直ぐ結界を解くんだ。さもなくばこの娘の命は無いぞっ!」
おぉ! 悪者定番の人質攻撃だっ!
先生っ、ヤバいよっ! どうする、
「別に……。好きにすれば?」
即答っ!
全く動じないどころか、気にする
しかも、それだけを言い残したら、何食わぬ顔で更に近付いて行こうとしてる。
「おまっ、お前ッ、本気かっ! この者達は仲間では無いのか?!」
「知らないわよ。だって、この前初めて会ったばかりなんですもの。ほぼ赤の他人。たまたまアドレス交換してたってだけでさぁ。別に煮ようが、焼こうが。
そう話しながらも、ズンズンと距離を詰めて行く先生。
「くっ! おのれっ! この私に近付いた事を後悔させてやるっ!
たて続けの魔法二連発。
司教が振り下ろした腕の先。
そこから発した鋭い気流の
――フォォンッ! キィィィィン! フォォンッ! キィィィィン!
ブラックハウンドを傷つけ、
風魔法と言うだけあって空気中を
しかし、この至近距離では流石の先生だって
そんな攻撃魔法を避けるでもなく、全身に受けてしまってはひとたまりもないっ!
これはマズいぞ。
やっぱりこの男は結界の中でも魔法が使えるんだっ!
先生は絶対に魔法は来ないって決めて掛かってたみたいだけど、これって……。
「クッ!」
案の定。
魔法を真正面から
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