モブで地味な俺だけど、現実世界にダンジョンができて種族がゴブリンになったから鍛えて進化して最強を目指す

@RANDOSERU

第1話 獣人選べずゴブリンに

季節は夏、今は早朝。これが片田舎だったら爽やかな、と頭につくのだろうが、あいにく自分が今いるのは都会も都会、大都会の日本の首都だ。

 つまりは高層マンションなどに囲まれ、蒸し暑い。燦燦と降り注ぐ日差しも冬だったら、それも雪が降る場所であったら綺麗に反射しているのだろうがアスファルトに日が当たっても火傷しそうなほど暑くなるだけだ。

 まったく、いくらクソみたいな受験システムから抜け出したかったとは言え地球温暖化が進んでいる中で個人的に沖縄の次に暑いイメージがある東京になんて移住なんてするんじゃなかった。

 去年からずっと持ち越し続けている感情が収まらない。


 今日も俺、過野 栄人すぎの えいとの代わり映えのしない一日が始まる。

 いつもの行動に沿うだけの、つまらない時間だ。

 五時に起きて、両親はかなり前からシンデレラハネムーンに行って帰って来ないので自分で弁当を作り、朝食を食べ、登校する。一時間程かけて高校一年生の生徒として登校する。


 そこでついていけなくなってきた授業を受け、昼になればぼっち飯を食い、誰とも話さないまま残りの授業を終え、一人で帰宅し、夕食を食い、深夜までゲームをする。

 このままだといつか体を壊しそうだなとか、受験は厳しくなるだろうなとか、そんなことから逃げ出すにはゲームは丁度いい。ゲームをしている間は他の人とたまにだが関われるしな。


 まあこれからのことについては、どうせ受験に失敗するか受験は諦めて就職活動にいそしもうとするも何度も連続で失敗。結局縋り付いた会社がブラック企業で毎日徹夜して残業。病気になってお先真っ暗なんだろうなあと結論を出す。


 そこには人間の得意能力である環境適応力君に頑張ってもらうとしよう。今は今が楽しければそれでいい、いや、それだと俺は今全く楽しくない時間を過ごしているから良くないのだろうな。


 と、いくら考えてもネガティブになる感情にいったん区切りをつけ、弁当、もう面倒くさくなったので白米に梅干しを乗せただけの日の丸弁当を作る。

 作ると言っていいのかすらも怪しいがまあ弁当だ。だって名前に弁当ってついてるもん。


 では朝食は何にしようか。まあ今日は弁当が日の丸弁当なんだし朝食も手抜き、は人聞きが悪いので時短飯でいいか。じゃあツナマヨにしよう。


「……さて」


 これでもう今日の朝の時間はほとんどやることが亡くなったので、二度寝タイムだ。

 俺はカーテンを閉め、電気を消し、四つ折にしたタオルケットを顔に被せて光を遮断し、最後に念のためペタペタと適当なアニメキャラの超巨大ポスターをカーテンに被せ光を完全遮断。

 目を閉じて、寝た。







 眠りから目覚め、朝食を頂いて諸々の準備を整え終えた。


 そして、俺は目の前の〝それ〟を見据える。


 それは、ステータスプレートの一段階前にあたるであろう、少なくとも俺の中ではそう定義しているもの。いくら視線を巡らせても必ず視界の中心に位置してくる煩わしいもの。

 それは、恐らくファンタジーへの片道切符。そしてこのつまらないループから抜け出せる権利。


 それは、種族選択画面。

 記されているのは、どの種族を選択しますか? という文字と、人間、獣人、妖精などの種族の名称。


 そして、この選択はあなたの人生、いや、一生を左右するので慎重に選択してくださいという注意書き。

 この種族選択画面は俺が朝起きた時から存在していて、さっきも言った通り俺がどれだけ激しく視線を巡らせようと俺の視界の中心にとっとと選べとでも言うかのように鎮座している。


 そして、気になるのはさっきから点滅していることだな。


 時間制限でもあるのだろうか。あるのだったら早く決めなきゃ種族を強制決定させられたりするかもしれないから早く決めとかなきゃだけど。

 まあ無いにしても楽しそうだし選んだりするけどな。少なくとも学校よりかは百倍楽しいだろう。


 というわけであるかどうかは不明だがあるかもしれない時間制限に気を付けて種族を選択していこうかね。


 見たところ、選べる種族はぱっと見では多かったがその実意外と少ない。同じ獣人の中でも馬だったり猫だったりイヌだったり、そういう細かい種続分けで稼いでいるだけで、大きくまとめると三種類ほどしかない。いまからその系統ごとの特徴を説明するテキストを表示させよう。


【人族】:人としての姿の種族。一つのステータスが特出していることなどが無く、バランスの良いステータス、スキル構成をしている。また、広い分野のスキルに適性があり、一人で多くの作業をこなせるバランス型。この種族は進化による可能性が大きい。


【獣人族】:身に獣の特徴をまとう種族。体格は混ざっているもののベースごとに変わり、大きいものだと二メートルを超える者もいる。また、小さい物であれば一メートル台前半程度しかない者もいる。この種族は体格動揺得意な役割やステータスの分布、覚えやすいスキルの分野に特出しているものがあり、それ以外は不得意だというものが多い。この種族は進化により可能性は狭まるがその分堅実な強化が約束される。余談だがこれにより変化したベースのものの影響を受け、好みの食べ物屋好みのタイプなどが変わる場合もある。


【妖精族】:妖精に属する種族。体格は小さいものが多数を占めているがなにもすべての妖精が小さいわけではない。大きいものもいるし、多数が魔法を得意としている中で魔法が使えない者もいれば、物理攻撃の方が得意な者もいる。この種族を選択した場合、食物を摂取できなくなることを考慮しておいた方がいい。この種族は進化により二つの分岐点に直面することとなる。



 まず人間系、これは大体の小説やゲームなどで共通しているイメージ通りバランス型、というより器用貧乏と言った感じだ。

 まあその分自分が自分の姿かたちを保つことが確実にできるわけだから選ぶ人も多いだろうけど―――いや、こんなものがいきなり出てきたら困惑する者か楽しむ者か慎重に行動する者か、大きく分けてこの三つに分かれるだろう。


 そして、俺の予想だと困惑する者が多くなりそうな気がしている。次点で楽しむ者、一番少ないのが事態を重く見て慎重に物事を進めていく者になるだろう。

 理由としては、まず社会人はほとんどの人がステータスなんて言われたら「は?」となるか「私は〇〇が得意で〇〇の記録が○○です」なんて言うだろう。

 妖精とかについてはわかってもその前の種族を選択してください、でまず理解不能になる。そしてそれは一部の学生についてもそうだろう。有名なゲームでも種族は人間に固定されていたりするのが多いイメージだし。


 次に楽しむ者が多い理由だがまず間違いなく陽キャはこの状況を楽しむ。そしてケモ耳生えたぜYearとか、モンスターマジマジ卍とか、モンスターをタピったりとかするんだ、きっとそうだ。あとは俺みたいな陰キャもせっかくのステータスなんだ、人生逆転のチャンス! 的な理由ではしゃいだりする奴もいるだろう。


 最後に一番少ないと予想する慎重派。これについては最初は少ないだろうが時間が経つにつれて増えていくだろうなとも思っている。


 理由としては家族がいるとまずこの道を取るだろうからだ。しかし家族がいる場合は社会人であることが多いから最初は困惑派だろうが時間が経てば冷静に物事をとらえられるようになって家族を守るために慎重に行動するはずだ。


 まあ完全にモンスターと関わらず、戦わずにに他の人に助けを求めるっていう人によっては、いや、命がかかっている状況で、何もしないくせに消費することだけは一丁前なただ飯喰らいが来る訳だし、根が良すぎる一部の人間以外には屑だったり寄生だったりの嫌悪の感情を抱かれるだろう方法を取る者もいるかもしれないな。これに関してはある程度人間だし仕方ないよなあとは思う。助けないけど。

 あとは、ステータスやローファンハイファンに造詣の深いタイプの陰キャはこっち側かな?


 まあそんなわけで予想を立ててみたわけだが、これもそもそもモンスターや種族なんて本当にできたりするのかや、できたとして自由に徘徊するのか、ダンジョンの中にこもっているのか、などによって大分変るんだろうけどな。

 まさか一番弱いモンスターで戦車吹き飛ばせるとかにはならないだろうけど、てかなったらクソゲー認定するけど。

 まあいいや、そろそろ種族選択画面の点滅速度が自動車とかじゃない方の信号機の点滅レベルに早くなってきたから時間制限があるならそろそろ選ばなきゃ不味いだろうな。早く決めないと。


 えーとまず、人は先頭には向かなさそうだから敵を早めに察知できるか戦闘に向いている種族、ならば獣人族か。

 魔法にも憧れるけどもしかしたら何か月も修行してやっと初級の魔法が使えるようになる、なんて罠が仕込まれているかもしれないし安全策をとって魔法が使える系の妖精続はやめておこう。

 というわけで魔法をメインにする種族非表示っと。

 んじゃ次、番長とかやってたりしたら戦闘が得意そうな種族選んだんだけど生憎喧嘩なんてしたことが無いからな。近接戦闘系もやめとこう。

 じゃあ、もうあれだ。暗殺者プレイでもするか。俺は陰キャでぼっちなのに未だにいじめられずにいるほど気配を消すのが上手いからな、結構相良いんじゃないか?


 というわけで隠密系統スキルと不意打ちダメージボーナス系スキルを知特できそうな種族は―――よし、獣人の狼か犬か猫か、だな。さてどれにするか。

 見た目的ダメージが少ないのは狼かな? いや、それもそれで厨二病感が出てて辛いな。じゃあ犬にするか? 猫は―――うん、論外だな。 


 というわけでど、ち、ら、に、し、よ、う、か、な。 

 よし決まった、俺の種族は狼系獣人だ。

 じゃあ獣人(狼)をタップしよう。

 それ、ぽちっとなー――




 その瞬間、点滅していた種族選択画面が目の前から消失した。




 ―――え、これ、やばくね?

 呆然としていると、数秒後どこからか無機質な声が響く。


《ただいまを持ちまして人類の皆様の種族自由選択権限が失われます》

《よって現在種族を選択されていない人類の方々種族はランダムで決定させて頂きます。なおその際自由選択可能種族以外の種族になる可能性がございます》

《それでは、この世界を好きなようにお楽しみ下さい》


 ちょっと待って、ランダム? 今ランダムっつったかこの仮称世界アナウンスは。そしてさっきまでの種族選択画面になかった種族以外になるかもしれないとも言ったな?

 つまり、俺の種族は下手したらこの場所で植物とかになってしまうかもしれないってことだ。もっと酷かったら蟻とかも? いや、それは嫌すぎる。

 というか今の蟻のせいでもっと酷い可能性もめっちゃ思いついちゃうんですけど。例えば蜘蛛とか、ウミウシとか、ワラジムシとか。

 ああ嫌だいやだ嫌だ嫌だ嫌だ――――――

 

《あなたの種族が確定しました。その生態に環境を合わせる為転移を開始します》


 また、世界アナウンスが響く。しかし今回は主語的に俺一人に向けた感じか?


 ところで転移って聞こえたんだけどまさかここじゃ生きれない、人じゃない感じ?

 いやだなー、まあ虫だったらここで生きられるだろうし虫じゃないだろうなってわかったのは少し安心だな。とりあえず転移に備えて何か持ってくか。


 じゃあ水と、武器になりそうなものは無いかな。

 あ、こんなとことろに金属製のバットがあるじゃないか。持ってこ。


 バットを手に取ると、世界が歪む。まあこれは俺の主観ではたから見たら世界じゃなくて俺が歪んでるように見えるんだろうな。

 いや、俺の周囲だけが歪んでたりする感じかな?

 そんなことを考えていると、歪みが元に戻っていく。

 なので転移が終わったのだと仮定し、周囲を見渡そうとするが、見渡すまでもなく洞窟。一面壁に囲まれ一方向だけに出口があるということは迷路の行き止まりを小部屋にしたようなところか。


 ちなみに出口には扉が付いていた。ドアノブのような形ではないがでっぱりは付いている。開いた途端詰む可能性もあるのでひとまずスルーする方向で。

 そして暗さだが、そんなに暗くはないな、そこまで遠くは見えないが三分ほど目を慣らした後くらいには見えている。


 光源は見えないから本来はもっと暗いと思うのだが、少しは見えているということは恐らくこの洞窟の中で暮らしているであろう俺の種族が取得するスキルか、もしくは人類全員に与えられた能力が作用しているということだな。


 ゲームのプレイヤーからしたら真っ暗闇も明るく見える、なんてままあることだ。流石に明るく、まではいかずとも真っ暗闇ってのは無いだろう。少なくともプレイヤーの判断に委ねて明るさの調整は出来るようにしているのが大多数だと思う。


 まあそんなわけで場所に関する確認は終わり、次は俺の姿を確認するとしよう。

 まず首を回してみる、回せた。つまり首があってそれを自由に動かせる種族ということだ。手足も人間と同じ形。

 次、身長。比較対象が無いから分からんわ。まあかなり手足が短くなってる気はするけど、ね。

 顔……これも鏡が無いから分からない。

 次、肌の色………うん、緑だ。

 ここまでくると分かってくる。耳を確認すると、予想通り尖っている。


 うん、俺ゴブリンになってたよ。



 そこでふと、俺はゴブリンの身体の下方を見やる。




 ――あれ、じゃん!?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る