第22話

原田沙織には婚約者がいた。

いた、と過去形で書いたのには

もちろん、わけがある。

その婚約者、三上伸一は三年前に傷害罪で

捕まり、現在も東京拘置所に収監中だったの

だ。

両親はもう三上とはわかれてくれ、と

泣いて頼んだ。

沙織はまだ三上を愛していたが、

仕方なく今は周りの意見に同意していた。

「沙織、三上さんをまだ好きなんでしょう」

親友の玉置美憂が食堂で沙織にはなしかけた。

「えっ、まっ、まあ」

「それ、オンナの性(さが)」

「うん」

「暴力男を好きになるっていう、あれでしょう」

「そうでもないけど」 

沙織がヤンワリと否定した。


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