第427話 フロストと領地

フロストが領地に来てから数日。


すっかりフロストは領地に馴染んでいた。


もっと言えば、屋敷にも馴染んでいた。


うん、俺の屋敷。


元から部屋は空いてるし、問題ないとは思うけど屋敷に住んでることと、俺が連れて帰ってきてという事で領地からは新しい婚約者扱いされてるみたいだ。


「シリウスの新しいお嫁さんに見えるみたいだね」


楽しげにそんな事を報告してくるフロスト。


嫌じゃないのだろうか?


「私、浮いた話って全然無かったから悪くない気分なんだ」


……まあ、本人が楽しんでるならいいのかな?


「でも、シリウスのお嫁さんたち皆良い子達だね」

「自慢の婚約者だよ」


屋敷に住むことで、自然と婚約者達とも仲良くなっているフロストから見ても、婚約者達の人の良さは折り紙付きらしい。


ちょっと誇らしくなる。


「私がドラゴンだって知ってもあんな風なのは、シリウスを信じきってるからだね。皆シリウスのこと心から大好きなんだってすぐに分かったよ」


……うん、まあ、それはそうなのかもしれないけど、本人の前で言うことだろうか?


「そうそう。これ、使ってみたけど凄く良かったよ。シリウスの魔道具は昔のに負けず劣らず効果あるんだね」

「なら良かった。少しづつ改良予定ではあるんだけどね」


フロストの左手にはブレスレット型の魔道具がある。


帰ってきてから、材料を集めて作ってみた試作品の魔道具。


効果はドラゴンの力を無理なく抑制するもの。


厳密に言えば抑制ではないのだけど、フロスト自身に負担をかけずかつ、周囲に龍族としての力を溢れさせないようにするという意味では抑制と言えなくもないかな?


無論、この魔道具はフロストが意図して力を解放すれば効果はない。


フロストの場合は無意識でも力を抑えられるから、心配する必要もなさそうだけど、今の状態だと他の龍族に渡したら不便をかけるかもしれない。


だからこそ、試作品はフロスト専用になりそうだけど、改良の目処は立ってるし、他の龍族用にあとはそれを形にするだけ。


特にまだまだ幼い子供のホムラやエンビ用には気をつけたいところ。


「フロストの持ってる素材のお陰で良いものが出来たよ。ありがとう」


お忍びというだけでなく、本当に世界のあっちこっちに行ってたようで様々な素材を持っているフロストのお陰で短期間に仕上げることが出来た。


そうお礼を言うとフロストは嬉しそうに笑みを浮かべて言った。


「ふふふ、こちらこそありがとうだよ。まあ、色んなところに行ってたからねぇ。でも、どうせだったら指輪とかでも良かったのに」

「それだと余計勘違いされるかもよ」

「それはそれで面白そう」


面白そうなんだ。


本当に変わってるけど、迷惑でないなら良かったのかな?


そんな風にフロストが領地にすんなりと馴染んで暫くした頃。


今度は獣人族のクーデリンが外交官として領地へとやって来るのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る