閑話 とある神の狂愛
空腹と退屈は最大の罪だ。
そう思うからこそ、その生き物を私は面白く思う。
とある世界の一つ、ヌロスレアという国に巣食うそれは十全に育っている。
多少のイレギュラーはあったけど、このまま見ていてもきっと楽しめる。
とはいえ、それではつまらない。
何せ、私のお気に入りがようやくこちらに来たのだ。
原初の創造神に横槍を入れられるまで、あれは私にとって最も大切で――壊しがいのある存在だったけど、あの女神に盗られてから気づいた。
私は――あれを愛していたのだ。
苦痛に歪む顔が、絶望に打ちひしがれるその様子が、最高に――ソソる。
あぁ……早くまた愛でたい。
壊れるまで、愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して――私があれを魂ごと味わいたい。
あの創造神とオトコ女の女神の横槍は面倒だけど、恐れることはない。
こちらでは神のルールもあってあいつらの動きには限度がある。
その点、私はそれらに縛られない、全ての神々と世界の敵――大悪神なのだから、問題ない。
求めるのはあれの破滅と絶望。
この世界に来て、あれは愛することを知った。
奪うのは容易いが、あれには原初の創造神とオトコ女の神が幾重にも加護を重ねている。
その力は、その周囲にも影響してるし、無理に狙うことも無い。
それよりも……もっと狙いやすいものがあるのだから。
『すこーし弱いけど……まあ、足止めくらいはできるでしょ』
神域に比較的近い魔獣を二体生成して送り込む。
弱いけど、これでもこの世界の人間には天災に近いはず。
それでも、この程度の魔獣じゃあ、あれには大した相手じゃないけど、あれの足止めとしては申し分ない。
失敗しようと成功しようとどちらでも楽しめるのだから、やはりあれは私の最大のお気に入りなのだろうと笑みが浮かぶ。
あれが最も嫌うのは愛する者を亡くすことだろうけど、それは後でもいい。
まずは……あれが二度の人生で経験して二度となりたくないと思ってるものにさせることにしよう。
楽しみだなぁ、凄く楽しみ。
あれはどんな顔をするのだろう?あれはどんな事を思うのだろう?
どんな感情だろうと、私にとってあれの全てが愛おしい。
あぁ、これこそ最大の愛。
あれを一番愛してるのは、あの原初の創造神ではなく私。
そして――あれに一番似合うのはマイナスな感情。
それらを見るために私は全てを整える。
あの原初の創造神にはお見通しかもしれないが、それでもあの女神が世界に鑑賞するのには限度があるし、問題ない。
今でもあれを盗られたのは腹立たしいけど、最後にはきっと私が取り戻す。
だから、私の愛するお気に入りよ。
その顔をもっともっと――曇らせておくれ。
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