第307話 成果と進捗
ライブの翌日、孤児院にケイオスが顔を出した。
「昨日は凄かったね」
「楽しんでもらえたなら何より」
「うん、楽しんでたよ。姉さんが」
「知ってるよ」
先程、ラウル兄様のファンのケイオスの姉から直接サインをねだられたくらいだ。
どうやら演歌歌手のソウメイがお気に入りらしい。
今もソウメイの話を楽しそうにシエルとしていた。
「それで?そっちはどうなんだ?」
「うん、概ね問題なく進んでるよ。とりあえず騎士団の半分はこちらに引き込めたから、ペースとしては悪くないね」
初めて一週間とそこそこくらいで半分か。
やっぱりケイオスも凄いな。
「クーデター組織についても、ビリオン殿が手伝ってくれてるし、問題なく動かせてるよ。マーデリン国王には王になったら直接感謝を伝えないとね」
クーデター組織のまとめ役のビリオンはマーデリン王国の人間だし、そのビリオンは国王の信頼のあつい人物のようだ。
確かに感謝は伝えるべきだな。
「勿論、シリウスを貸してくれたスレインド国王とシスタシア国王には真っ先にお礼を言うつもりだけどね。シリウス本人は何かお礼とか欲しい?」
「いらないよ。というか、俺自身の意思で好き勝手やってるだけだし」
とはいえ、兄様達へ感謝するというのは悪いことじゃないし、そっちはお任せしておく。
「シリウスらしいね。そうそう、僕の顔も民衆にかなり広まってきてるようだね。これなら僕がクーデターを起こしても民衆に疑問は少なく済みそうだ」
「国王か……大変そうだな」
「まあね。でも、僕は楽な方だと思うよ。これだけ後ろ盾があって準備の時間もある。あとは棚ぼたな王様らしく欲張らずに堅実に行けば問題ないかな」
そんな事を言うケイオスだけど、実際のところあの偽物が居なくて普通に腐敗してるだけの国ならケイオスだけでも余裕で変えられた可能性は高いと俺は見ている。
それだけのスペックがあるし、人の心を掴むのも上手い。
やっぱり、父様やラウル兄様にレグルス兄様、ヘルメス義兄様と同じような人種なのだろうとしみじみと思った。
俺には王様は向いてないしなりたくないので素直に凄いと思う。
「それにしても、君の魔法は凄いね。僕の動きを完璧に隠してくれてるのがよく分かるよ。お陰で偽物を気にせず自由に動ける」
「それなら良かった」
一応、偽物の動向も油断なくチェックしているけど気づかれた様子はないし、実際に動いているケイオスが大丈夫だというのなら恐らく大丈夫なのだろう。
「屋敷の方にも何か魔法をかけてくれてたんだってね。ありがとう」
「念の為だし、気にしなくていいよ」
偽物に露骨にバレるような真似は避けねばならないので、念の為にケイオスの今居る屋敷に結界を張っておいたのだけど、そちらも機能してるようで良かった。
「お礼がしたいし、食事にでも誘いたいけど……シリウスの作るご飯が美味しいから招待しづらいね。まあ、でも一度時間があったら屋敷に来てくれると嬉しいかな」
「分かったよ。じゃあ、その時ついでに結界関係を強化するからよろしく」
「……お礼を返せるのは当分先になりそうだね、これは」
「お互い様だよ」
ケイオスのお陰で楽が出来ているのも確かだし、持ちつ持たれつってね。
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