第289話 優しい微睡み
ラナとセリアとセシルの案で、『親睦も兼ねてお風呂でも』とアリシアを連れて、我が家自慢の大浴場に婚約者達が向かうと、自然と俺とフィリアの二人きりとなる。
気を使ってくれたのだろうと分かるけど、にしても本来は日の浅いラナもアリシア側であるはずなのに謎に馴染んでるのは何なのだろうか?
相変わらず読めない子だけど、それはそれとして。
「シリウス様、どうぞ」
「ありがとう、フィリア」
フィリアの淹れてくれるお茶と甲斐甲斐しいお世話で解れていく心。
ヌロスレアで自然と張っていたものが和らぐのを感じる。
「フィリア」
「はい、どうぞ」
何も言わずとも俺の望みをフィリアは理解してくれる。
そんな些細な心の距離さえ愛おしい。
ゆったりとフィリアに膝枕をしてもらう。
「ありがとう、フィリア」
「私にとっても役得ですから」
そう言いつつ優しく髪を撫でるフィリアは母性に満ち満ちていた。
俺も男らしく、包容力に溢れた様子を見せたい所だけど、年々強まるフィリアの魅力には抗えないのも事実。
「後で、皆さんともお時間を作りましょうね」
「そうだね。そう出来るようにするよ」
自分だけでなく、俺を好いてくれる婚約者全員のことも考えてくれるフィリアさん、マジ天使。
「無理はしないでくださいね」
「フィリアの前だと無理は出来ないからね」
「はい、させませんし、その前に私達に出来ることがあるならシリウス様を支えます」
支えるか……本当にこの子には勝てないなぁ。
「ありがとう」
「シリウス様。シリウス様は偉大なお力を持っております」
ゆっくりと語りかけるようにそう言うフィリア。
「そのお力で頼れられたり、シリウス様はお優しいので何かと他人を気遣ってしまうのでしょう。それはとても素敵なことで、そんなシリウス様は凄くカッコ良いですが……私は、こうして今穏やかな顔をされているシリウス様が一番大好きなんです」
……あぁ、もう、ダメだなぁ。
そんな風にはにかむフィリアを見ると……もう、本当にどうしようもないくらいに愛しくて同時に安心してしまう。
「ごめん、フィリア。少しだけこのままで……」
「はい、勿論です」
前世の時の影響か、睡眠時間が短くても支障がないはずなのに、それでもフィリアを前にして安堵すると徹夜なのを思い出したように少しづつ意識が微睡みはじめる。
あまり長居する訳にはいかないけど、アリシア達がお風呂から上がるまで多少、フィリアの膝の上でうとうとするくらいは問題ないはず。
そんな言い訳とともに俺は軽く意識を手放してその優しい温もりに身を任せるのであった。
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