第284話 出迎えとライバル宣言

孤児院から虎太郎とアリシアを連れて、領地に転移する。


「これが空間魔法……本当に一瞬なのですね」

「慣れてないとそうなるよな」

「はい、流石はシリウス様です」


……あの、転移だけでそんな褒められても……悪い気はしなくても褒められ慣れてないので少し困ってしまう。


「ここがシリウス様の領地なのですか?」

「そうだよ。ようこそ、我が領地へ」


屋敷に直接転移する予定だったけど、同行を希望したアリシアのためにあえて街を見渡せる場所に転移していた。


狙ってる人材にこの地を気に入って貰うのもスカウトには役立つはずだしね。


「領主様、こんにちは」

「本日もお元気そうでなによりです」


すれ違う領民達にちょくちょく声をかけられるけど、俺の不在を悟られてなかったようなのでまずまずの成果と言えるだろう。


俺の事を疎んでるような輩も居ないとは言えないし、俺の留守を知って、よからぬ事を企んでもすぐに潰せるとはいえ、その手間で仕事が増えても困るしね。


「新しいお嬢様をお連れですが、新しい奥様でしょうか?」

「お子の顔が楽しみですねぇ」


……ただ、何故か一緒にいるアリシアが俺の新しい嫁候補だと早速思われたようだけど。


何なの、俺が女の子連れてたら娶ったと思われるの?


「あ!えい……シリウス様!」


好色という二文字が俺を象徴してないか少し不安になっていると、聞き覚えのある声が後ろから聞こえてくる。


「やあ、ラナ」


振り返ると予想通り、この前シスタシアでスカウトしてこちらで店を出してもらう約束をしたラナが嬉しそうに近づいてくる。


俺の前世を知る今世でほぼ唯一の存在ではあるけど、それよりも俺にグイグイくるその謎の積極性が気になるところ。


「英雄さん」


ラナは俺と一緒にいるアリシアを見てから、顔を寄せてきて小声で話しかけてくる。


意図的だろうけど近くない?


「何やら英雄さんはまた誰かのために頑張ってるとお聞きしてます」


俺からは話してないし、婚約者たちの誰かから聞いたのかもしれない。


「私でお力になれる事があればなんでも言ってください」

「それは助かるよ。ありがとう」

「いえいえ」


そう微笑んでから、ラナはアリシアに自己紹介をする。


「初めまして。シリウス様のお嫁さんを目指してますラナです。一緒に仲間になれるように頑張りましょう!」


……本人の前で宣言することだろうか?


「あ、アリシアです……こちらこそ、よろしくお願いします」


スルーしたのか、それとも同意したのか。


聞くのが怖くて何となくそのままにしてしまったが目の前であっという間に仲良くなる女の子二人を見てると悪い気はしないというもの。


「仲間であり、ライバルもいいですよね!」


ただ、ラナのそのセリフは本当に意味が分からなかったけど。


少年漫画のお約束とかにありそうだけど、何にしてもアリシアはこちらに来てもやれそうな臨機応変さもあるようでますます欲しくなるのであった。



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