第235話 ヌロスレアの聖女
孤児院に案内してもらうと、予想よりも多くの子供たちをアリシアは面倒を見ていた。
数人のお手伝いの人は居るけど、それだと手が回らなそうなその様子と、建物もかなりガタがきており、立て直しが必要そうなのを確認してから俺は少し考える。
クーデター組織の作戦決行まで支援するにしても、足りないものが多すぎるし、ここは彼らの手助けも軽くはした方が早く終わる可能性もある。
でも、まずはお腹の空いた子達に食べさせてあげないといけないな。
「アリシア、孤児院はここ以外にもあるのかな?」
「いえ、私がやってるここしかありません」
昔はいくつかあったそうだが、今はアリシアの所くらいしかまともに孤児院を運営してる所がないらしい。
物取りの子供たちはアリシアの管轄には入ってない、スラム街の住人らしいが、そちらの子供たちの引き取りは難しいらしい。
「面倒を見てあげたいのですが……断れてしまいます」
「断るなんてあるのか?」
「彼らには彼らのルールがあるってことかな?」
「そのようですね」
古くからあるスラム街だと、やはりその土地には独自のルールや文化があるのだろう。
だからこそ、救いたくてもアリシアには救えなかった。
それに、今見てる人数ですら限界を超えてそうなので、スラム街の子供たちの受け入れは現実的ではないのかもしれない。
「まあ、何にしてもまずはお腹をいっぱいにしようか」
ササッと空間魔法の亜空間から食材を取り出して、簡単に出来るのものを次々作っていく。
病気がちの子供には治癒も施したりするけど、殆どの子供が健康なのはアリシアのお陰のようだ。
アリシアも治癒魔法が使えるらしく、その腕前も見た感じかなりものだった。
治癒魔法で稼ぐという手もあるはずだが、彼女はそれはせずに求める人や子供やお年寄りを優先して治してるらしい。
「神から授かった力は、人を救うものです。多くの人を救うことはしても、決してそこに対価を求めてはいけません」
とはいえ、無償というのも気が引けるのか、大概の人はお礼に食糧を分けてくれるそうだ。
アリシアからは決して強要はせず、無理ない範囲で貰ってるとのこと。
それでも足りないのだから、それだけで子供たちの人数が多いのも一目瞭然だが、自分の分を削ってでも子供たちを飢えさせないように彼女は頑張っているらしい。
人から見たら、治癒魔法だけで金持ち相手にぼろ儲けした方が子供たちの為になると言うかもしれないけど、アリシアの理想と現実を考えた結果の行動に関しては俺は嫌いではなかった。
これだけの子供たちを何とか面倒見てる時点で、彼女は十分すぎるのほどに頑張っている。
なら、多少の手助けを俺がしてもバチは当たらないだろう。
そう思いながら、久しぶりのお腹いっぱいのご飯に喜ぶ子供たちの様子を見ながら調理を続けるが、何故か虎太郎も混じって食べていたのは虎太郎らしいのかもしれない。
まあ、虎太郎が増えようが問題ないくらいに色んなストックはあるので、俺はアリシアに手伝って貰って調理を頑張るのだった。
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