第231話 裏市場
ヌロスレア王国の現状をあれこれ確認しつつ、街を歩いていると、とある住人から裏市場と呼ばれるものがある事を教えられて俺たちは入り組んだ街の奥へと入っていく。
「うわぁ……本当にあるんだね」
「だな、ここまで堂々としてるともはや凄いもんだな」
たどり着いたそこでは、様々な怪しいものが取引されているようだ。
いわく付きの掘り出し物から、完全にアウトな薬なんかも取り扱ってるようでヤバすぎる。
自警団には知らされてない……いや、手が回らないのか?
何にしても、売っていいものが少な過ぎて、俺としては軽く目眩がしてくる。
国を恨む貧民に、復讐するための呪いの魔道具を薦めるような商人がそこら中に居るとなると、やはり根本から……一から国を作り直さないとダメなのだろう。
「まあ、それはそれとして軽く見ていこうか」
俺の役目はあくまで、偵察なのでここで変に出しゃばることはない。
俺しかやらない前世と違って、ヘルメス義兄様達は優秀なのできっとこの国も良い方向へと導いてくれる。
だからこそ、俺は俺でその手助けをするくらいが丁度いいだろう。
「なんか買うのか?」
「いんや。でも、本当に掘り出し物あるかもだし、取り締まられる前に見ておくのも良さそうでしょ?」
「まあ、坊主なら変なもんは買わないだろうが……気をつけるに越したことはないな」
「それはそうだね」
言葉巧みなセールスに引っかからないようにするのは絶対条件なので、裏市場の商人の話を話半分で聞きながら色々見て回る。
「坊主、あの笛はなんだ?」
「確か、『亡者の笛』だね。自分を悪霊にして相手を呪い殺す魔道具だよ」
「……それ、強いのか?」
「自滅前提だけど、そういう系統の魔法がないとかなり厄介かな」
不思議と、知ってる魔道具が多かったけど、裏市場ともなるといわく付きの物の多さは半端なかった。
「あの林檎みたいなの上手いのか?」
「食べるとこの世の快楽を全て凝縮したような感覚になって、一瞬気持ちよくなるそうだよ。まあ、普通に一口で死ぬようなレベルだけど」
非合法の食品まであるとは恐れ入った。
「坊主、これ飲むと髪が生えるって本当か?」
「生えるけど、目が見えなくなる副作用付きだよ」
「何かを得るには何かを失うしかないんだな」
「それが自然の摂理だよ」
他にも色々あったけど、とりあえず俺は薬に使えそうな物をいくつかと、分解して部品を使うために呪系の魔道具をいくつか買っておく。
値段はどれもこの裏市場では良心的な方だけど、それだけ危険度や効果が低いからかもしれない。
まあ、危険度が低めでも、一応取り扱い注意には間違いないので、そこは気をつけよう。
この手の品の取り扱いには慣れてるし、問題ないはずだけど、婚約者たちには絶対に触れさせないことは確定事項なのでそれだけはきちんとしようと決めつつ、俺は残りの裏市場の様子を報告するために、ある程度は見ておくのであった。
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