第210話 自動車椅子
「あ、シリウス様」
執務室を出て、一休みしようかと自室に向かっていると、フローラが前方からやって来る。
車椅子なので、普段は誰かしら付き添ってる人が居るのだが、先日のアップデートにより一人でも移動できるようになっていた。
魔道具を補助にしたもので、フローラの思ったように動かせる自動走行の車椅子なのだが、前までとデザインに違いは無いので違和感は無かった。
「やあ、フローラ。散歩かな?」
「はい。シリウス様はお仕事終わりですか?」
「まあね。外に行くなら付き合ってもいいかな?」
「勿論です」
ニッコリと嬉しそうに微笑むフローラ。
エスコートするように、俺は車椅子を押すとゆっくりと揺れないように丁寧に移動を開始する。
要するに、いつも通りフローラのエスコートをしてるだけだが、この時間が好きだったりする。
「すみません、お手間をお掛けてして」
「気にしなくていいよ。俺が好きでやってる事だからね」
自動で動く車椅子になった事で、こうして人力を頼ることは不要にもなっているのだが、こうしてフローラの車椅子を押すのが俺は結構気に入ってるので、是非とも今後も任せて欲しいものだ。
「車椅子の調子はどう?」
「凄く便利です。実はさっき転びそうになったのですが、安全装置が動いて何ともありませんでした」
「転びそうに?」
俺は心配になって、ついついフローラの全身を眺めて確認してしまう。
相変わらずの綺麗な青髪と空色の瞳の可愛い女の子だなぁ……と、無事を確かめつつフローラの可愛さを堪能すると近すぎてフローラが顔を赤くしてるのに気がつく。
婚約者に近づいてしげしげと全身を眺める俺……ふむ、婚約者でなければただの変態だったかもしれないと思いつつ俺は取り繕うように微笑んで言った。
「無事みたいで良かったよ」
「ご、ご心配おかけしました……」
「心配するのは当たり前だよ。婚約者だし。それに、俺の技術にも欠陥はあるかもしれないからね。フローラが無事なら良かったよ」
諸事情で、前世の英雄時代の知識から魔道具も作れるのだけど、どれだけ完璧に作ってもやはり何かしら予想外の欠陥が無いとも言えないので、もう少し改良もしたい所。
「そういえば、フローラが欲しがってた本。手に入りそうだよ」
「本当ですか?」
「うん、期待しててよ」
「ありがとうございます」
そう微笑んでから、車椅子から近くに俺の顔があったことでまた赤くなるフローラさんは、初心で可愛くて最高でした。
こうして、エスコート出来る栄誉を楽しみつつ、フローラと最近読んだ本で盛り上がったり、照れ照れになったりと楽しむ一時……いいね。
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