第207話 セリアさんの当たり前
「シリウスくーん、何見てるのー?」
屋敷の二階の空き部屋から外を眺めていると、不意に柔らかい感触に包まれる。
後ろからセリアに抱きつかれたのだろう。
少し驚いたけど、割と頻繁にこういう不意打ちを受けるせいか比較的少ない驚きで落ち着けたのは小さくとも成長と言えなくもないかもしれない。
「あれだよ」
視線を戻すと、そこでは俺の騎士のシャルティアとダークエルフのシエルがいつも通り訓練をしていた。
「あー、またやってるんだねぇ」
俺を抱きしめるのを止めずに外の光景に納得するセリア。
日常的な光景なので納得も早いのだろうが、それにしても離す気配が微塵もないのは凄いな。
流石は婚約者の中において、セシルと双璧をなすスキンシップの積極性に定評のあるエルフさんだ。
姉のスフィアは要所要所で比較的、人の目がない時なのに対して、セリアは基本的に抱きついても大丈夫な時なんかは積極性に抱きついてくるので、嬉しいような少し照れるような何とも言えない気持ちにさせれらる。
まあ、嫌ではないのは言うまでもないけどね。
「でも、ここじゃなくてテラスとかの方が見やすいよね?」
いつもなら庭の稽古場が一望できる場所か、近くから見学するので、こうしてあまり使われてない二階の空き部屋からその様子を眺める俺に首を傾げるセリア。
「たまには違う角度から見ようかなぁって思ってさ」
「なるほどねぇ」
場所によって見え方も違うので、楽しみ方は色々あるのだろうと思っての試みだけど、結果的には正解だったかもしれないと思っている。
それにしても、毎日のように二人で高みを目指してるのを見ると、俺もやる気になるから不思議だ。
努力する人というのは魅力的に映るものだけど、婚約者としての補正もかかってるのは否定できないかも。
「二人は華やかでいいなぁー、私はああしてシリウスくんを魅了することは出来ないしー」
「その分、領地運営の補佐とかで助けて貰ってるし、セリアには十分魅了されてるよ」
「む〜、可愛いこと言うなぁー。もっとギュッーってしちゃうから。えい」
ホムンクルスの体はすっかりとセリアの魂と馴染んだのか、徐々に本来の肉体と差異が無くなってきてるようだけど、それにしてもこの柔らかさ……女の子って本当に凄いなぁ。
シャンプーとリンスを使ってるのに、セリアから微かに感じる優しい香りは、俺にはどうやっても出せないことを直感する。
香水とかも作ってみたけど、そのうちお世話になるかもなぁ……なんて思いつつも、セリアに抱きつかれて、二人の騎士の研鑽を見守る俺は凄く贅沢だと思った。
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