第170話 ちょっと休憩

「はぁ……やっぱり人前は緊張しますね……」


入学式も終わり、少しお茶でもと寄った喫茶店。


あまり人前が得意でないフィリアはようやく少し落ち着いたようでホッとしていた。


俺の婚約者として、日々頑張ってくれており、苦手な社交なんかもこなしてくれるフィリアであるが、昔からのその気質は中々抜けないようだ。


俺もそこまで人前が好きではないので気持ちは分かる。


特に、フィリアは綺麗な銀髪とオッドアイの美少女なので、目立ってしまうのだろうが、俺からしたらどれもフィリアの可愛さを引き立たせており大好きであった。


それが分からない奴らの多いこと多いこと……まあ、フィリアの魅力に気づくのは男だと俺だけで十分だけどね。


「でも、シリウス様はやはり凄いですね。堂々と新入生代表として皆さんの前に立ってて……凄くカッコよかったです」


頬を赤くしてそんな事を言われると、流石に照れるが、俺としては生徒や教師の下見をしていたので、あまり誇れないかな。


「ありがとう。皆が居るから少しは王子様らしくしなきゃね」

「いえ、いつもシリウス様はカッコイイですよ。ただ、今日は大勢の人の前なので、いつもよりもどこか大人っぽく見えました」


……自然とそんな事が言えるのが凄いよ。


「……うん、カッコよかった。シリウス様に熱い視線を向ける子も多かった」

「そ、そうなのか?確かに先程のシリウス様は、凛々しくてカッコよかったが……」


セシルの言葉に思い出したのか少し頬を赤くしてうっとりするシャルティア。


護衛として2人にも来てもらって居たが、やはりあの様な場で最も情報が集めやすいのはセシルなのだろうなぁ。


シャルティアは人の機敏はそこまで敏感ではないし、フィリアはやれば出来るだろうが、セシルのように自然には難しいだろう。


なお、シャルティアの場合は俺への悪意や害意にはそこそこ鋭いようではあった。


それにしても……


「そんな視線あったかな?」


これでも鈍感系には属しないと自負しているが、そんな熱い視線あっただろうか?


確かに、謎に敬うような視線は多かったが、混じってて気づかなかったとか?


「……凄くあった。生徒会長以外にも最低10人くらいは」

「相変わらず、セシルは凄いね」

「……シャルティアが鈍いだけで、私は普通」


まあ、シャルティアは鈍感系に近いかもしれないなぁ。


否定は出来なかった。


「そこまで鈍くは……」

「……事実、男女の機微には鈍い」

「ぐっ……だが、シリウス様への敵意には気づくぞ!」

「うん、頼りにしてるよシャルティア」

「はい!」


相変わらず真っ直ぐで可愛いものだ。


「そういえば、生徒会長さんがシリウス様のこと見てましたね。お知り合いなのですか?」

「いや、俺が第3王子だから気になっただけじゃない?」


紅髪の美少女生徒会長……名前はエレン・ルナティック。


名門であるルナティック公爵のご令嬢だが、俺はあまり会った記憶が無い。


というか、その名前を聞くようになったのは割と最近な気がする。


俺が必要な社交以外しないせいもあるかもしれないが、それにしてもあれだけ目立つ容姿と才女と言われる才覚ならもっと前に知っててもおかしくなかったはず。


何か訳ありなのだろうか?


「……あの視線には、乙女的なものと玩具的なものが混じってた気がする」

「前半はともかく、後半は何?」

「……退屈な日常に対するスパイスとか爆薬?」


言いたいことは何となく分からなくはないが、そんなおもしれー存在的な存在ではないのでご期待には添えなそうだ。


まあ、生徒会長様のことはまたの機会でいいだろう。


今は、入学式が終わった後のこの時間を婚約者達と楽しめばそれでいい。









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