第166話 女騎士とダークエルフ

「お、目が覚めましたか」

「……シエル、何してるの?」


いつものようにシャルティアとシエルが2人で楽しそうに訓練をしている傍で、少しうとうとしていたら、気がつくと少し寝てしまったようだ。


屋敷の中ではなるべく無防備を心掛けているからか、シエルの接近に気づけずに、目が覚めると何故かシエルに膝枕されているという状況になっていた。


……何故にシエルが膝枕を?


「おはようございます、シリウス殿」

「あ、うん。おはよう。それで、なんでシエルは膝枕してくれてるの?」

「嫌でした?」

「嫌ではないけど、不思議だなって」


婚約者ではないシエルが、このような真似をするとは思えなくて首を傾げていると、視界の端に少し憮然としたシャルティアの姿が映る。


それで、何となく予想がついた。


「……もしかして、シャルティアと勝負して、勝った方が俺の膝枕をする……的な?」

「ええ、私が勝ったのでやってみました。如何ですか?」

「悪くないけど、シエルはいいの?」

「シリウス殿なら構いませんよ」


子供とはいえ、好きでもない男にこんな事していいのだろうかと思ったが、シエルの様子では膝枕程度なら問題ないのかもしれないな。


「というか、シャルティア負けちゃったの?盾使ってないみたいだけど……」


シエルは確かにダークエルフとしてかなり強いけど、シャルティアだっていつの間にか相当強くなっていた。


そのシャルティアとシエルの戦績は五分五分……盾を使ってのものがそうなっていたはず。


そう、シャルティアは本来、盾を使う方が強いので、昔持っていた飛龍の盾から、新しく俺が良い盾を渡していたのだが、シャルティアに盾を使った様子がなかったのに気がつく。


「……あれは、シリウス様をお守りするためのものですから。私の個人的な戦いには使えません」


それでも、負けて俺の膝枕の権利を取られたのが悔しいようで、むむっとしているシャルティア。


相変わらず真面目で不器用だが……そんな彼女が可愛いと思う俺も俺かな。


「シャルティア、おいで」

「はい」


俺の言葉に、一瞬で近づいてくるシャルティア。


そんなシャルティアの頭を撫でながら、俺は微笑んで言った。


「あれは、シャルティアのために贈ったものだから、シャルティアの好きにして構わないけど、今度は勝って俺に膝枕してほしいかな」

「……はい!次こそは勝ってみせます!」


シャルティアの背後に、しっぽを振るご機嫌な犬の姿を幻視するが、近いのでいいか。


なお、セシルの場合は何となく猫のイメージがあるような気がする。


気まぐれで甘えてくる感じが近そう。


わんわんシャルティアに、にゃーにゃーセシルか……萌えだな。


猫耳と犬耳を作っておかねば。


「次も負けませんよ、シャルティア殿」

「それはこちらの台詞だ、次こそ勝つ」


そんな俺の考えなど知る由もない2人は、何とも楽しげにそんな事を言っていた。


何となくいいライバルになってるような2人だが、賭けの対象が俺の膝枕なのはどうかと思わなくはない。


まあ、2人がそれでいいならいいか。



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