第157話 まさかの発見

「わぁ……こんな事あるんだ……」


取っても取っても減る様子がまるでなく、むしろ増える摩訶不思議な鰻は虎太郎に任せて、近くで珍しい果物なんかを採取していると、偶然にも俺はそれを発見してしまう。


「すぅ……すぅ……」


木に寄り添って、すやすやと眠る美人さん。


見覚えのある肌色は、まさしく先程まで会っていたダークエルフと相違なく、そして更に、先程族長宅にて、お茶を出してくれたエデルの奥さんが幼くなったような、15歳前後の美少女。


うん、この子がエデルの娘さんなのだろうが……にしても、まさかこんな所で出会うとは想像してなかったのでかなりびっくりした。


「うぅん……ん……?」


そんな事を思いながら、俺がその子を観察していると、ふと、寝ぼけ眼で薄らと目を開けたその子は、ぼんやりしながら視線を俺に向けてから首を傾げる。


「えっと……おはよう」


なんと言えばいいのか少し迷いつつも、とりあえず平和に話しあうためにそう挨拶をしてみる。


何処か不思議そうな表情をしていたその子は、自身の状況を思い出したのか、俺の存在を完璧に認識すると、ハッとしてから、飛び退いて、腰から剣を抜くと臨戦態勢を取る。


「何者だ?その気配の消し方、立ち振る舞い……ただの人間ではなかろう」


いえ、ただの人間ですけども。


それにしても、今の動き……突然の出来事にも関わらず挙動に迷いが一切なく、かつ自身が攻撃できて相手から攻撃を受けても対処出来る最良の間合いを取る動きは見事としか言いようがなかった。


やはり、エデルや族長が言ってた通り、この子はかなり凄腕であるみたいだ。


「……まさか、私がここまで近づかれて気が付かないとは……不覚」


そんなに存在感薄いでしょうか?


とはいえ、あの状態でもある程度気配が察知できるのなら、確かに俺のように無意識に気配を消してしまうタイプは結構レアケースなのかもしれないな。


まあ、そんな事よりもこの子が本当にエデルの娘さんなのか……まあ、かなりの確率でそうだろうが、人違いの可能性も無くはないので、念の為確認しておくのが良いかもしれない。


「聞きたいことがあるんだけど、君はダークエルフの族長の息子……エデルの娘さんであってる?」

「……何故父の名前を?」


警戒しつつも、どこか困惑気味の娘さん。


確かに、あの里の場所で人間が自身の父親の名前を知ってるなどマジで意味不明にも程があるから、ある意味妥当な反応だが、どう説明すれば納得しやすいだろうか。


「色々あって、知り合いになってさ。とりあえず話だけでも聞いて貰えると助かるんだけど――」


と、俺が警戒を解こうとすると、目の前のその子から……否、その子のお腹から、『ぐぅー』という、食べ物を催促する音が聞こえてくる。


お腹すいてるのかな?


「……えっと、何か作るから食べながら話さない?」

「……ああ、分かった」




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