第144話 腕前と愛情

「……で、何で皆集まってるの?」


招集をかけたのは、料理の得意なフィリアとセシルのみだったのだが、調理場には何処からか椅子を持ち込んで座っている他の婚約者達の姿があった。


というか、フィリアを呼びに行かせたシャルティアもちゃっかり座っておるよ。


「いやー、シリウスくんが新しい料理を作るって聞いたから、味見役は居るでしょ?」

「私は必要なら手助け出来るからね」


完全に手伝う気皆無な様子のセリアに対し、姉のスフィアは必要なら手助けをするスタンスで、味見役として待機するようだ。


なんて言うか、ここまで開き直られるとセリアの場合は逆に可愛らしいと思えてしまう不思議。


『ご主人様、なんなりとお申し付けください』

「私も……あんまり、手際は良くないので、足を引っ張るかもしれませんが、味見はお任せください」


そして、器用なソルテは俺の命令も特に無いので、何かあった場合の待機と味見で備えており、フローラは調理場での機動性を自覚してるのか、そんな風にやんわりとお願いしてくる。


この二人はこの二人で性格の良さが出ている答えなので、微笑ましいものだ。


「……そして、食いしん坊なシャルティアも味見を希望と」

「ぐっ……わ、私ではシリウス様の料理の足を引っ張るから仕方なくだ」

「……仕方ないの?」

「……いや、仕方なくはないが、そのうち克服してみせる。なので、シリウス様何卒……」

「うん、期待してるよ」


その答えに表情を輝かせるシャルティア。


それにしても、流れるようにシャルティアをイジるセシルには職人のようなプロ魂を感じざる得ないよ。


いいコンビだよね。


「じゃあ、味見の時は声かけるから、他の料理人達の邪魔をしない範囲で見守っててよ」

「分かった!任せて!」

「はっ!お任せを」


真っ先に、元気に返事をするセリアとシャルティア。


他の婚約者達も異存ないようだし、とりあえずはいいかな。


「さて、お待たせ、二人とも。そろそろ始めようか」

「はい、シリウス様」

「……うん、分かった」


俺の贈ったエプロンを身につける二人。


婚約者の中で、最も料理の得意な銀髪美少女フィリアさんは、エプロンという装備でより一層魅力が増すのだから、末恐ろしいものだ。


そして、何でも器用にこなすセシルもまた、エプロンを身につけることで、家庭的な面が出て非常に良いと思う。


「……シリウス様、相変わらずエプロンが様になる」

「良くお似合いです、シリウス様」


俺が2人を褒める前に、先に言われてしまうが……俺としては2人とは比べるまでもなく、普通に着ているだけなので、何とも言えない気持ちにはなってしまうが、ここは素直にいくとしよう。


「ありがとう。2人も相変わらず似合ってるよ」


その言葉に嬉しそうにはにかむフィリアと、何処かドヤ顔気味のセシル。


それぞれのリアクションに満足をしてから、良く手を洗って料理に入ることにする。


腕前だけなら、スフィアやソルテもこの中に入れるのだが……スフィアの場合は、料理するテンションの時とそうでない時でパフォーマンスに大きな差があるので、ノッてる時に頼むのが望ましい。


そして、ソルテの方は、俺に対して作るのなら、フィリアにも匹敵する腕前になるのだが、対象に俺以外が入るとそのクオリティが下がってしまうことがあるので、こちらも俺限定でやってもらう方が良いだろう。


フローラは、時間のある時にのんびりやるのがあってるし、セリアとシャルティアはもう少し練習が必要……と、俺が言うと、虎太郎は『嬢ちゃん達に甘々だな』と言われるのだが……まあ、そんな感じなので、こちらは別途で楽しませてもらうとしよう。


なお、エプロン姿は皆素晴らしいので、それを楽しむ余裕がある時はそちらをオススメにしておきたいところ。


本日は、よくやく手に入れた米達を早く堪能したいので、味見役をお願いするのは悪くないチョイスとも言えた。


うむ、さて、何を作ろうかな。










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