第145話 醤油と味噌の偉大さ
2人に教えつつの久しぶりの日本食の調理だったが、比較的手際よく作業は進んでいると思う。
お米も土鍋で、俺が火加減を見極めて炊いてるし、お味噌汁も出汁をきちんと取って大根とネギの味噌汁を作っていた。
味噌汁は、豆腐とワカメが好き俺だが、大根も捨て難い所なので、久しぶりの味に満足している。
「……シリウス様、これ凄く美味しい」
「何だか、心が落ち着きますね」
「私も好きな味かも」
特に、一緒に調理している、フィリアとセシル、そして味見役で待機していたスフィアは味噌汁の味に大層ご満悦のようで、その様子を見ている俺はどこか誇らしい気持ちになる。
「お味噌も美味しいですけど、溶かす前の味噌とキュウリの組み合わせの方が私は好きです」
「それも美味しいよね」
そして、フローラと無言で味噌をつけたキュウリを、カリカリと小動物のように食べるハーフエルフのソルテの2人組は実に微笑ましいものだ。
二人とも、お肉とかよりも野菜の方が好きなのでその食べ方が合ってるのかもしれない。
「シリウスくん!お代わり!」
「セリア、食べすぎだぞ。夕飯に響く」
「……とか言って、シャルティアも食べてるじゃん」
「私は鍛えてるから、この程度は問題ない」
残る二人……セリアとシャルティアは味噌よりも醤油に興味が向かっているご様子だ。
先程作った浅漬けや、片手間に醤油の良さをアピール出来そうな焼き魚と、シンプルに目玉焼きを作ってみると、美味しそうに平らげてしまう。
なお、浅漬けに関しては、フローラとソルテも手を出していたが、2人ほどは食べていなかった。
まあ、元来、食の細い婚約者が多いから、夕飯に響くしそれが普通なのだが、鍛えているシャルティアや、元気なセリアは意外と食べるので、全体の作るの量はそこそこ多くなる傾向にはあった。
「……シリウス様、前に作った餃子にも醤油は使えそう」
「鋭いね、確かに美味しくなるけど」
「餃子美味しいですよね。でも、食べると臭いが少し気になってしまうので、そこはちょっとお困りです」
そのフィリアの言葉に、女性陣は皆頷いていた。
俺も前世では気にしてなかったのだが、今世で婚約者が出来てからは、ニンニクで口の匂いが気になるという乙女心……というか、マナー的なものが何となく分かるようにはなった。
キスしようとして、口の臭いで婚約者に拒否られるとか、想像しただけで絶望しかないし。
「とりあえず、もう時期完成だか、フィリアとセシル以外は先に食堂行ってていいよ。あと、シャルティアとセリアも間食はその辺で終わり。残りは夕飯で満腹にしてね」
「畏まりました」
「はーい」
それにしても、醤油と味噌を手に入れただけで世界が変わるような気持ちになるとは……本当に調味料とは凄まじいものだとしみじみ思う。
そうして、久しぶりの日本食を夕飯にて食べることが出来た俺だったが、今度は冷奴や豆腐の味噌汁なんかもいいね。
丼物も作りたいし、水餃子リベンジもしたいところ……そして、刺身とかも醤油で食べたいし、うーむ、本当にやりたいことだらけだ。
婚約者達も、お米や醤油、味噌を気に入ってくれたし、やはり現地には行けるようになっておかねば。
一応、定期的な流通経路の確保には成功しているが、何かあった時のために現地を抑えるのは確実にプラスにはたらくはず。
あ、お餅とかもいいね。
インスピレーションが止まらない……これが、元日本人の魂に刻まれたDNAなのだろうか?
何にしても、炊きたてご飯とお味噌があったので、今宵はこれで満足です
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