第101話 お迎え
「シリウス様、お待ちしておりました」
まず迎えに行くのは、アスタルテ伯爵家に居るフィリアだ。
転移で向かうと、そこにはこの2年で益々美少女になってきて、さらに女の子らしさが増してきた銀髪でオッドアイの俺の可愛い婚約者の美少女が待っており、嬉しそうに出迎えてくれた。
うむ、今日もフィリアは可愛いね。
「お待たせフィリア。アスタルテ伯爵とお義母様は?」
「はい、おりますよ」
「じゃあ、挨拶をしてから領地に行こうか。荷物は大丈夫?」
「勿論です。楽しみすぎて昨日はなかなか寝つけませんでした」
どこか照れながらそんなことを言われてしまうが……これが天然なのがフィリアの恐ろしいところだよね。
そんなことを思いながら、俺はフィリアの両親であるアスタルテ伯爵とお義母様に挨拶をするが、少し心配そうなアスタルテ伯爵とは対照的に何とも微笑ましそうに見送ってくれたお義母様は流石だと思う。
まあ、娘の気持ちを良く理解しているのだろう。
ちなみに、アスタルテ伯爵夫人のことはお義母様と呼ぶ俺だが、アスタルテ伯爵のことはお義父様とは呼んでなかった。
前に呼んだ時に、何とも言い難い表情をされたので、やめたのだが……まあ、アスタルテ伯爵はあまり馴れ馴れしいのは好まないようだしこの位でちょうど良いのかもしれないな。
それでも、やはり娘のことは可愛がっていたからか寂しみそうなアスタルテ伯爵に対して、フィリアも少しは寂しがるかと予想していたが、むしろ俺との新生活にワクワクといった様子であった。
その様子が微笑ましくもあり、そこまで想われてるのは純粋に嬉しかった。
「フローラさんのお迎えはこれからですか?」
「うん、フィリアはこのまま屋敷で皆と待ってる?」
「いえ、お邪魔じゃなければ、私も着いて行きたいです」
「そっか、分かったよ」
同年代ということもあってか、フィリアは俺の婚約者達の中ではフローラと一番仲が良かった。
まあ、フィリアもフローラも元々コミュ力が高いのか他の婚約者達とはすんなりと打ち解けていたが、中でもやはり似たような性質からか、2人は親友とも呼べそうな程に仲良しだ。
「フローラさんは学園には通わないのですよね?」
「まあ、あまり魔法は得意じゃないからね」
俺とフィリアが通うのは、学科としては魔法科という学科になるのだが、元々才能のあるフィリアとは違い、フローラにはあまり魔法の才能はないので、学園には俺とフィリアだけが通うことになっていた。
お付きもセシルとシャルティアだけになる予定だが……ソルテも連れて行ければ連れていきたいものだ。
とはいえ、ハーフエルフへの偏見がまるで無いとは言いきれないので様子を見ながらかな?
「残念です。でも、シリウス様との学生生活は私が独り占めですね」
どこか悪戯っぽくも恥ずかしげにそんなことを言うフィリアさん。
……いやはや、ここ数年で更に俺を堕とす術を心得ておいでとは恐れ入った。
婚約者達は何かと俺を魅了する術を日に日に体得しており、何とも居るだけでときめく程にチョロい俺なのだが、こうした好意に疎かった俺からしたらこれだけ向けられる好意に堕とされても何も不思議はなかった。
この世界に転生してから10年……まだまだ、前世のあの過酷な期間の年数の四分の一も消化してないはずだが、正確な年数はまるで分からなかったりする。
……うん、まあ、ぶっちゃけ、自分が何歳で死んだのか定かではないどころか、自分の年齢を数えられる余裕すらなく、誕生日なんてこの世界で初めて祝われたくらいなので、本当に俺はいくつで死んだのか分からないが、それでも思い出してみると、体感2、30年くらいだろうか?
何にしても、そんな前世とは違ってこうして愛されて大切な人が出来た今世はかなり最高だと俺は思う。
そうして、アスタルテ伯爵家から、残っているフィリアの荷物を運んでから、フローラを迎えに行くことにするが……こんな風に自分のために転移を使えるのはいいねと、正直思った。
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