第61話 討伐のついで
雨の中を、飛翔の魔法で飛んでいく。
クイーンとナイトは婚約者達と共におり、やっぱり着いてきたフレイアちゃんは俺の服の中に潜んでいた。
まあ、濡れたくないのは分かるが……そうまでして着いてくるのか。
そんなことを思っていると、王都から少し離れた街道に5000ほどのアンデッドの集団を見つけた。
感知魔法で調べるが、アンデッド以外に反応は無かった。
この前の1万のアンデッドといい、こんなにアンデッドが理由不明で出てくるのだから、どうにも作為的なものを感じるが……ひとまず、騒ぎになる前にサクッと光の浄化魔法でアンデッド達を葬る。
浄化魔法によって、アンデッド達は跡形もなく消えるが……どうにも引っかかるな。
念の為に、アンデッド達の居た場所を調べてみるが、やはり前回と同じように何も見つからなかった。
うーん、なんかモヤモヤするなぁ……
5000のアンデッドは脅威だけど、それだけでシスタシアの王都を滅ぼせるかは微妙なラインだ。
確かに、浄化魔法を使える神官たちの魔力も限りがあるし、多少の被害は出せそうだが、これでは陽動くらいにしか役に立たないだろう。
何か他に目的があったのだろうか?
とはいえ、俺の感知魔法のエリア内には特に反応はなく、フィリア達や王都付近にも今のところ危険はない。
一通り見て回ったし、ひとまず戻って報告をするか……
なんて、思っていたら、感知魔法の圏内にいくつかの反応が引っかかる。
人間が数名と、残りは魔物だろうか?
ゴブリン、オーク、更にその上位種であるゴブリンキングとオークロードだろうか?
気になったので向かうと、馬車を守るように戦う5人の冒険者達と結構な数のゴブリンやオークがそこには居た。
ゴブリンやオークは数が多ければ多いほど厄介になる。
奮闘してるが、このままではそう時間もかからず蹂躙されるだろう。
冒険者のうち2人は女性なので、彼女達はきっとゴブリンやオークの巣へと連れてかれて酷い目にあうのは確実。
男性冒険者は殺されるだろう。
想像するだけで胸糞悪いので、放置は出来ない。
そう思い、手を貸すことにした。
まずは、指揮官であるゴブリンキングと、オークロードを片付ける。
ゴブリンキングやオークロードは普通に戦えばそこそこ強いが、不意打ちでならそう手間もかからずに倒せる。
少し強めの風の魔法である風の刃を使えば……あら、不思議。
綺麗に切断されて派手に崩れ落ちるゴブリンキングとオークロード。
他のゴブリンやオークは、せっかく雨が降ってるので、雨を氷魔法で凍らせて魔力で強化して氷の雨を降らせて始末する。
弾丸のような氷がいくつもゴブリンやオークを貫くが……見てて気持ち悪いので、この方法はあまり使わない方が良さそうだと思った。
「これは一体……」
「お兄さん達、大丈夫?」
いきなり目の前でゴブリンやオークが倒されたことで驚く冒険者達の前に下り立つとそう聞く。
本当は、このまま立ち去っても良かったが、聞きたいこともあったしね。
「あ、ああ……もしかして、君が助けてくれたのか?」
「たまたまだよ。それより、怪我はない?」
「仲間が少しだけ、怪我をしたようだ」
見れば、女性の魔法使いと男性の剣士が軽傷をおっていた。
それを見て、俺はとりあえず治癒魔法で怪我を治す。
「これって、光の治癒魔法か?」
「凄い……」
「これで、大丈夫でしょ」
そう怪我も酷くはなかったので、すぐに治癒は終わる。
「すまない、助かった」
リーダーらしき冒険者がそう言う。
それなりに疲弊してるメンバーの中で1人だけ平気そうなのだが、見た感じ彼が一番強そうだな。
最低でもBランクの実力って感じかな?
「俺は、ベート。このパーティーのリーダーをしてる」
「そっか。俺はシリウス。それで、聞きたいんだけど……この付近ってこんなに魔物が出るの?」
そう聞くと、ベートは首を横に振って答える。
「いや、ここまでは初めてだ。普段はいてもゴブリンやオーク数体くらいだし、しかもゴブリンキングやオークロードなんて魔物は出たことはない」
「そっか……」
うーん、ここだけなのか、それとも他にも変化が起きてるのか……何れにしても、そのうち調べる必要があるかもしれないな。
アンデッドの件のついでに、このこともレグルス兄様とヘルメス義兄様に報告するとして……その後はお任せした方がいいかな?
シスタシアはヘルメス義兄様の国。
フローラの故郷でもあるし、俺も出来るだけ手は貸すがあまり出しゃばらない方がいいだろう。
この前のアンデッド1万の際は、自国だし領地が増えたのは仕方ないことだけど、こっちではなるべくヘルメス義兄様のやり方で処理した方が無難だろう。
まあ、それで俺の大切な人に危険があるなら俺がやるけど。
フィリア達を守るためなら、その辺は臨機応変の対応するつもりだ。
そうして、アンデッド5000の後にゴブリンやオークを始末した訳だが……食事前には見てはいけない光景かもしれないなぁと、ゴブリン達の死体を見て思うのだった。
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