第41話 パンケーキ

パンケーキとホットケーキの違いとは?


一応、最初の前世において定義上は、食事などで食べれる甘さ控えめなのが、パンケーキ。


一方、デザート用の甘いのをホットケーキと定義していたようだが……この辺、拘らずオシャレにパンケーキと呼ぶ人が俺の周りには多かった気がする。


店にも行ったことがない俺が、『この店みたいな写真映えするパンケーキよろ』と無茶振りを受けてそれらを知ったが、実物も見たことないのに作れってなかなかハードな注文な気がする。


まあ、普通に作るの自体はそう難しくはない。


実際、前世にはホットケーキミックスという魔法の粉もあったのだから、楽は楽だった。


無しのレシピも一応調べたが、作ること自体はそう難しくもなかった。


比較的手軽に作れるこの料理だが、やはりというか、この世界には無かった。


そして、何故俺がこの話をしたのかと言えば……


「あー!おじちゃまよるになにかたべてる!」


趣味である創作を夜も遅くまで行って、少し息抜きに料理でも……と、甘い物を作っていたのだが、何故かそこを姪達に見つかってしまったのだ。


「ティー、スワロ、こんな夜中にどうしたの?」


そもそも、俺の居る厨房とティファニーとスワロの実は別の棟にあり、こんな夜中ここに姪達が居るというのが不自然なのだが……


「えっとね、おひるねしすぎて、よるごはんちょっとしかたべれなくて……おなかすいたから、おじちゃまになにかつくってもらうとおもってさがしてたのでしゅ!」


何故かドヤ顔をするティファニーだが、それが可愛く見えるのが美少女の特権なのだろう。


後ろでスワロも頷いているが……というか、料理人じゃなくて俺に作らせようという発想はある意味凄いと思う。


この時間に姉妹に食べ物を与えたら間違いなく義姉や母様から怒られるが……お腹を空かせてる2人を放置するのも可哀想だし、仕方ない。


「分かったよ。皆にはナイショだよ?」

「はい!」

「……うん」


まあ、バレて怒られるだろうが、俺が叱られることで双子のお腹が満たされるのなら喜んでお叱りを受けよう。


マゾではないよ?


とはいえ、毎度こんなことをしたら、姉妹の健康にも良くないので、今日だけ特別という条件はつけるけど。


元々、多めに準備しておいた材料を使って、生地を焼くとタイミングをみてひっくり返す。


分厚いパンケーキでもいいのだが、薄めの方が個人的には好きなので、薄く作る。


「わぁ……!まほうみたい!」


幼い姉妹には、料理という現象がそう映るらしい。


興味津々に離れた位置に足場を作って見ていた。


あとはトッピング……色々合うけど、バターとメープルシロップは基本かな?


あ、でもメープルシロップないな……確か、水と砂糖で代用出来るってどこかで読んだけど……それなら他のがいいか。


はちみつなら、2人も好きだしそれでいいか。


アイスは……ああ、ダメだ。


お代わりした時を考えると、アイスは色々と自重した方がいいか。


そうして最終的にはちみつオンリーのシンプルなトッピングにしたが、なかなか美味しそうだった。


「はい、出来たよ」

「わぁ!おじちゃま、たべていい!」

「いいよ、召し上がれ」


2人は器用にフォークとナイフで切り分けると、小さな口でホットケーキを食べる。


「ん〜!おいしい〜!」

「……うん、おいしい」


もう、顔を見ただけで絶品だと分かるティファニーのリアクションと、知らないと分からないが、知ってるとめちゃくちゃ美味しそうな顔をしてると分かるスワロの表情。


うん、いい仕事したな俺。


「あら?美味しそうな匂いがすると思ったら……何してるのかしら?」


神出鬼没な、母様がそんなことを言いながら厨房へと足を踏み入れる。


俺が、元々多めに用意してたのは、こういう事態を想定していたからなので、丁度出来たのを母様へと献上する。


「どうぞ、ホットケーキです。あと、お叱りは後で受けますので何卒……」

「ふふ、大丈夫よ。でも、今日だけってちゃんと分からせてあげなさいね?」

「ありがとうございます」


予想外に寛容な言葉にホッとする。


「あら、本当に美味しいわね。丁度甘い物欲しかったのよ」

「おばあちゃま、おかわりだめ?」

「今日だけって約束出来る?」

「できましゅ!」

「……できる」

「よろしい、シリウスお願いね」


その言葉で俺はホットケーキを量産する。


さらりと母様が上品な食べ方で完食してお代わりを所望していたが……夜に間食して大丈夫なのだろうか?


まあ、太ることはないだろうし、母様の場合この時間まで仕事してた可能性もあるので、労わねば。


俺のレシピの件とかで、色々立ち回ってくれてるし……まあ、その辺は母様が自分から動いてるのだが、それでも俺はそれでそこそこお金を貰ってるので、感謝の気持ちを込めて少しだけ枚数を増やすのは忘れない。


後日、俺は義姉達に「何故自分たちをその場に呼ばなかったのか」という、予想外のお叱りを受けたが、実物を用意すると、今回は多めに見るとお許しを頂けた。


なお、姉妹達は次の日のおやつにホットケーキを所望したようで、かなり気に入って貰えたようだ。











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