第33話 プレゼント計画始動

王都にある、有名な宝石店。


いつもなら、護衛であるシャルティアとメイドであるセシルを連れてくるが、用件が用件なので、一人で来た。


王城に来ている商人に頼んでも良かったが、それだと2人に勘づかれてしまう。


護衛無しでも、危険は無いので1人でのんびりと王都を観光してから、そこへと向かった。


「これはこれは、殿下。お待ちしておりましたよ」

「例の物は?」

「はい、出来ております」


裏へと案内されると、早速実物を見せてくれる。


注文したのは3つの指輪だ。


1つは、シルバーの綺麗なリングに、オレンジとブルーの装飾がついた指輪。


残りの2つは、黄色の装飾の綺麗な指輪に、真っ白な純白のシンプルなリング。


この3種類の指輪には、それぞれ俺が取ってきた最高級の魔石を使っている。


魔石を指輪に加工するのには手間もお金もかかるが、それ故に仕上がりはかなりのもので、普通に装飾品として使うにも相当な価値があるだろう。


それ以外にも、魔力をストックしたり、魔石の持つ力を少しだけ使えたりと便利なのだが、俺は何故これを頼んだのか。


まあ、順番に、フィリア、セシル、シャルティアへの贈り物だ。


フィリアには婚約指輪として受け取って貰う。


セシルとシャルティアには……うん、婚約の申し込みのための指輪だ。


しばらく一緒に過ごした結果、2人とならゆったり過ごせそうだという結論に達したのだ。


当然、フィリアには相談済み。


怒られるかなぁ……と思ったが、あの2人ならいいと快諾してくれた。


本当によく出来た嫁ですこと。


王子の側室なんて面倒とか、断られる可能性も無きにしも非ずだが……当たって砕けてみるのもいいだろう。


気持ちを伝えて、ダメなら仕方ない。


子供からの求婚を受け取ってくれるかどうかは分からないが、予約くらいはしないとね。


「うん、素晴らしい出来だ」

「ありがとうございます」

「それでだ。この件に関しては……分かっているな?」

「勿論、心得てございます」


別にこの件が漏れてもいいが、面倒な貴族が勘違いしても困る。


娘を連れてきて、『では側室にお願いします』とか言われても面倒だしね。


未だにパーティーでも、娘をなんとか俺の側室に押し込もうと……あるいは、フィリアを押しのけて正妻の座を狙おうとする奴らもいるから迷惑してるくらいだ。


俺が趣味や気分で編み出すものが、無限にお金を生み出してるから、そのお零れが欲しいのだろう。


あとは、第3王子との結婚とか公爵夫人とかのステータスか。


利用される娘さん達も可哀想だが、これが貴族という生き物なのだろう。


理解ある家族を持てて俺は幸せなくらいだ。


「そういえば、あれはどうなった?」

「ああ、そちらも丁度出来ております」


そう言ってから、1つのペンダントを渡してくる店主。


婚約指輪とは別口で頼んだ品だが、シルバーのデザインの綺麗なペンダントを受け取り、着けてみる。


うん、そこそこいいね。


鏡を見ると、子供に不釣り合いかも……なんて思っていたが、割と馴染んだ。


さて、じゃあ、本番といこうか。


「じゃあ、悪いけど確認だけ頼むよ」

「はい、承知しました」


そうお願いすると、俺はペンダントに魔力を込める。


すると、鏡から俺の姿が消えた。


「おお……凄いですね。見えないどころか、気配も感じませんよ」


スタスタと歩いてドアを開けるが、それにも気づかずに俺が居た場所に話しかける店主。


そう、このペンダントの効果は、完全隠蔽。


姿、気配、魔力、足音、俺の触れてる物の僅かな音でも全てを隠す力がある。


使ってる魔石は、ステルスドラゴンの魔石だ。


このステルスドラゴンは、臆病な性格で、年中姿を消して行動しており、見つけるのが困難なドラゴンだ。


俺も、たまたま見つけることに成功したので、加工をお願いしたが……これなら、出歩く時も大丈夫そうだ。


しかも、俺が触れてる物や人の声も音も隠してくれるので便利すぎる。


実際、店主に協力して貰って従業員やお客さんで試したが、誰も俺たちの姿を見つけることは出来なかった。


ただ、これだけ強力だと魔力の消費量も桁違いだ。


俺からしたら、消費量はさして多くもないが、普通の魔法使いでは実用化は難しいかもしれない。


まあ、とはいえ、こんな反則な代物が出回ると面倒事も多そうだ。


スパイや覗きなんて悪質なことも普通に有り得る。


健全な男の子としては覗きに興味を示す方がいいのだろうか?


でも、別に知らない女性の肌とか見たいとか思わないしなぁ……好きな人だからこそ、ドキドキするのであって、何の関心もない人の肌を見てもねぇ……


枯れてないよ?


こないだ、うっかりシャルティアとセシルの着替えの場面を目撃した時はめちゃくちゃドキドキした。


フィリアも、段々と育っているようで、膝枕の質が年々上がってるのだ。


そう、枯れてなどいない。


まあ、単純に好意がないと欲に繋がりにくいのだろう。


睡眠欲……ある

食欲……ある

性欲……ある (好意を寄せる対象のみ)


……あれ?性欲だけ違和感が……まあ、普通だよね?


うん、大丈夫!


そんな訳で、俺はプレゼント計画を始動させるのだった。
















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る