第30話 それはそれで

サンダータイガーの討伐から数日後、俺は自室でのんびりとしていた。


久しぶりにああいう運動をしたが、割と楽しかったので、暇な時にお小遣い稼ぎでもするか。


コンコン。


そんなことを考えていると、部屋にメイド服を着たセシルが入室してきた。


「……シリウス様、手紙」

「うん、ありがとうセシル。シャルティアは?」

「……騎士団長と稽古」

「そっか、じゃあ、差し入れに行こうか」


ベッドから立ち上がって、手紙を受け取ると、読みながら厨房に向かう。


内容は大したことではないので、必要なさそうだと判断してその場で燃やしてから、サクッとサンドイッチを作ってシャルティアへの差し入れにする。


あの、サンダータイガーの討伐の後、シャルティアとセシルの引き抜きは難航……するかと思えば、そうでもなく。


2人のパーティーメンバーは、新しくパーティー結成するからいいよと優しいのかドライなのか分からない感じで2人を送り出していた。


そして、ギルマスにBランク冒険者2人の引き抜きを打診すると、快く受け入れてくれた。


2人の事情をそれなりに知ってたらしく、むしろ良かったと言っていた。


そんな訳で、シャルティアとセシルは正式に俺の側に居ることになった。


一応、セシルは専属メイドとして、シャルティアは希望通り俺の近衛騎士になった。


ずっと、俺の側で護衛でも良かったのだが、折角なので騎士団長に空いてる時間に指導を頼んだ。


俺の指導もしており、人柄も良く知ってる。


有望そうな人なら、喜んで教えるので、任せることにしたのだ。


まあ、勿論、メインは俺の護衛だけど。


「シャルティア、お疲れ――」

「――シリウス様」



一区切りついたのか、騎士団長に礼をしてから、呼びかけようとすると、すぐに飛んできて俺に傅くシャルティア。


びっくりするぐらい速くて、これが騎士団長の指導なのかと勘違いしてしまいそうになるが……ふと、顔に土がついていたので、俺はハンカチで拭ってあげる。


「……申し訳ありません」

「いいよ、頑張ってたんだよね?お疲れ様」

「……はい」


照れつつも微笑むシャルティア。


歳上なのに、可愛い人だとしみじみ思う。


「……シャルティアは策士」

「……偶然だ」

「……シリウス様、後で私も」

「はいはい」


可愛い要求をすらセシルの頭を撫でる。


2人とも俺より歳上なのに、何となくこうして愛でたくなる。


2人の魅力だろうか?


「おお、殿下!楽しそうですな!」


そんなことをしてると、この国の騎士団長であるディアボがその険しい顔を緩めて声をかけてきた。


「やあ、ディアボ。シャルティアの指導ありがとうね」

「いえいえ!このような見込みのある娘を娶るとは、殿下も流石の観察眼ですなぁ!」


ガハハ!と笑うディアボに、シャルティアは少し恥ずかしそうにする。


……まあ、俺が2人を囲ったように見えてしまうか。


2人とも表向きは、新しい俺の護衛と世話役だが、側室か愛人を囲ったようにも見えてしまう。


一応、婚約者であるフィリアには2人を紹介したが、仲良く出来そうな感じではあった。


基本的にあの娘はいい子なので、余程の性格で無ければ大丈夫みたいだ。


ただ、帰り際に『私の1番はシリウス様ですからね』と耳元で囁いたのは反則だと思う。


ああ見えて、俺の心を掴む術を心得てる小悪魔なので、将来が楽しみすぎた。


騎士団長と軽く話してから、外で食べようと3人で俺が作ってきた軽食のサンドイッチを摘む。


本来は、2人が俺と食べるのは良くないが……何となく、ぼっち感が減るし、楽しいので誘っていたのだ。


2人に好きな人が居たら迷惑をかけてる気もしたが、2人とも、そんな人は居ないと、居ても気にしないと言ってくれたので、遠慮なく誘っている。


まあ、俺としてはフィリアと本人達が良ければ側室として迎えるのもありかなぁ……なんて考えも少しあったりする。


……上から目線っぽいけど、照れ隠しなので分かって欲しい。


男らしく、『俺の元に来い!』的なことを言いたいが、この好感度が分からない状態で言ったらひかれる可能性もあるので、それは遠慮しておく。


どうせ側室は迎えなきゃならないなら、2人みたいな好ましい女性がいいしね。


年齢差とか気にする人も居るかもだけど……俺としては好ましい女性なら年の差自体は別にどうでも良い。


少なくとも、女神様やフィリアがどんな姿形だろうと、愛してしまえば関係ないという考えが強い。


2人のことも、まだ知りあったばかりだが、良好な関係を築けてると思う。


我ながら変わってるけど……外野がどうであれ、この世界では俺は好きに生きると決めたのだ。


もう、あの頃の社畜には戻りたくない。


家族に迷惑をかけずに、自由に生きる。


なので、側室は自由に選ばせて貰うよ。


……ただ、本人達の意思が大切だから、無理強いはしないよ。


これだけは言っておくが、今のところ他の面識のない令嬢を側室に迎えるくらいなら、俺的好感度が高めの2人の方がずっといいしね。


ここに俺のハーレム伝説が幕を開ける!


……とはいえ、それはもう少し先だろう。


「どう?2人とも」

「……うん、美味しい」

「ええ、美味しいです、シリウス様」

「なら良かった」


とりあえず、ぼっち飯の機会が減ったのは喜ばしいことだろう。


そう結論付けて、のんびりと軽食食べて話すのだった。









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