平穏な日々はガラス細工

霜花 桔梗

第1話 空を見上げて 

 高校二年の春の事であった。


 わたしは体が弱く、退学して入院治療をおこなう寸前にいた。ある日、検査の為に一晩泊まることになっていた。不意に夜風にあたりたくなり、窓を開ける。


 うん?


 窓とは反対方向に人影を感じる。彼女は白いワンピース姿で白い帽子をかぶっていた。


「誰?」

「わたしの名前は『アイ』よ」


 帽子を深く被っているのに視線だけが感じられた。


 『アイ』は言った。彼女は魔女であり、わたしと契約したいと。


 契約は簡単で、『祈りの石』にわたしの不幸を与えるだけである。


 その『祈りの石』の力で健康を取り戻す事ができると。


 次の日の検査で異常は消えてはれて退院であった。そう、魔女と契約したのだ。


 軽い身のこなしはわたしに健康を象徴していた。それでも、親の心配を受けて保健室登校から始める事になった。この『南風女子学園』は保健室登校のカリキュラムもあり。


 安心して登校できた。


 それから一週間が過ぎた。同じく保健室登校の亜美ちゃんと一緒にいるが会話がない。


 亜美ちゃんは一昔前に流行ったホラー小説を読んでいる。わたしも大ヒット中のソシャゲーの『ワールドクラッシャー』を進めていた。この保健室登校と言うものは簡単な課題をこなせば後は自由時間であった。


「亜美ちゃんはどうして保健室登校になったの?」

「心理テストで危険と判断されたから……」


 ……。


 笑えない理由である。まだ、いじめられての方がかわいい。それでも孤独な毎日よりも友達が欲しかった。


「わ、わたし、お友達が欲しいの……」

「あそ」


 亜美ちゃんから視線を感じることなく終わったのであった。うん?保健の先生が慌ただしく入ってくる。


「今日は新しいお友達を紹介するわ」


 茶髪に染めた女子が現れて自己紹介を始める。


「あ、わたしの事は真由美って呼んで……以上」

「真由美ちゃん、できれば趣味とか紹介して仲良くしましょうね」

「『ワールドクラッシャー』かな」


 先生の言葉に気だるそうに話始める。


「真由美ちゃんだったわね、わたしも『ワールドクラッシャー』が好きよ」

「レベルいくつ?60以上でないとパーティーには入れられないわ」

「45です……ログインイベントなら一緒にできないかな?」


 真由美はほーなり少し考えている。視線はわたしの成長の止まった胸をみている。


「よし、今日からフレンドね」


 それから、真由美とメッセージアプリの交換をするのであった。何か引っかかるが友達になれた。保健の先生は安心したのか、すごろくのボードゲームを取り出す。


「さて、亜美ちゃんも一緒にしましょうね」


 亜美ちゃんもブツブツ言いながら始めるのであった。

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