第3話

「和馬、瑠里子ちゃんが迎えに来たわよ!」


母の声で、ベッドから起きた。

いつの間にか寝てしまって、翌朝になってしまっていたのだ。


今日は、僕と瑠里子の結婚式の日……

僕はいつものスリムな眼鏡をかけて瑠里子と一緒に車に乗った。


今はコンタクトレンズをしている瑠里子は僕を見てにっこり笑い、口を開いた。


「昨日押入れを整理してるとね、中学生の時にかけてた眼鏡を見つけたの。それをかけるとね、ずっと記憶になかった、卒業式の出来事の夢を見たんだ」


「えっ?」


僕は驚いた。

まさに、僕がした体験……それと同じことを瑠里子もしていたのだ。


「和馬にね。似合うと思った眼鏡のフレームを、プレゼントする所から始まった。そしたら和馬、由美ちゃんに告白してるんだもの。ハラハラしちゃった」


「そ……そうなんだ」


僕の心臓は高鳴った。


「でもね。何だか、すっきりした」


「すっきり?」


「だって、私……何故かあの日、和馬にプレゼントした記憶がなくて。

そっか、この日に和馬が振られて私と付き合うことになったんだって分かったんだもの」


目を細め晴れた顔をした。


「なぁ、瑠里子」


僕は恐る恐る尋ねた。


「もし、僕が昨日、同じようにその夢の中で由美ちゃんに告白してたとしたら……瑠里子、怒る?」


「えっ?」


不思議そうな顔をした瑠里子はしかし、何かを悟ったように微笑んだ。


「ううん。もし私と同じ体験をしたとしたら……きっと、和馬もあの日、何があったのか知りたかっただけだと思うの。だから、そんなことで怒ったりしないわ」


自分のことを誰よりも理解してくれている言葉に、ホッと胸をなでおろした。


「それより……今日、愛しの由美ちゃんも来るわよ! 私達の幸せぶり、見せつけてやらなきゃ」


瑠里子は悪戯そうに笑った。

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