空白の一日

いっき

第1話

勉強机の整理をしていると、大きな正方形レンズ二つ、機能性のみ重視の眼鏡を見つけた。


この眼鏡は、中学生までかけていた。

卒業式の日、僕はずっと憧れていた女子に告白しようと思っていた。


でも……中学校の卒業式の日に何があったのか、何故か僕は覚えていない。

所謂『空白の一日』だ。

ただ、中学生までつけていた眼鏡はその日以降一度もつけていない。


高校からは僕は別の眼鏡をかけ、告白しようと思っていた女子とは別の、昔からの幼馴染と付き合い始めた。



その眼鏡を持つと、中学時代の思い出が蘇った。

勉強も、苦手なスポーツも精一杯頑張った。


由美ちゃんに振り向いてもらうために。

なのに、彼女に告白したかどうかさえ覚えていない。


僕は何気なく、今かけている眼鏡を外し、古い眼鏡をかけてみた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る