第45話

【妻が産後全く血が止まらず、今夜が峠だと言われた。イチかバチかモモシシのレバーを手に入れた。そして、方々に手を尽くして、レアポーションを入手した。男性にはほとんど効き目はないというが、女性の悩みには絶大なる効果を発揮するというレアポーションだ】

 レアポーション?

 女性には効果が高い?

【妻の口に、モモシシのレバーのかけらを入れる。もう、咀嚼する力も飲み込む力もないようだ。口にレアポーションを入れ、妻の口に流し込んだ。ああそういえば、キスで目覚める王子という話があったな。娘に話して聞かせよう。妻の代わりに、俺が娘にたくさん話をしてあげなければ……】

 んん?王子がキスで目覚める?日本では眠り姫とか目が覚めるのは姫だけど……って、それはいいとして、そのあとは空白が数十行。え?なんで?

【昔々あるところに、眠ったまま目を覚まさないお姫様がいました。と娘に話して聞かせると、妻が笑う「王子でしょう?」と。俺は笑いながら娘の顔を見る。「パパが死にそうなママにキスしたら目が覚めたんでしょう?だから、お姫様でいいのよ」と、娘が妻に説明を始めた】

 後日談!

 この感じだと、奥さんは、モモシシのレバーとポーションを口に含んで元気になったってことでいいよね?

 あれ?

 手元のポーションを見る。

 レアポーション?女性特化?彼にもらって大切にとっておいた?

 もしかして……。

「遅くなってすまない。せっかくいい肉なんだから、あれもこれもと思って準備に手間がかかってしまった」

 ダタズさんが大荷物とともに戻ってきた。

「バーズ、ナイフを貸して!」

「え?何を?」

 ナイフを受け取ると、すぐにレバーを少しだけ切り取る。

 そして、ピンクのレアポーションと一緒にタダスさんに差し出した。

「鑑定魔法で、鑑定したら、面白いことが分かりました。効果の現れる人も現れない人もいますが、何人かはこの方法で……モモシシのレバーとこのピンクのレアポーションを一緒に口にすることで血が止まって元気になったみたいです」

「え?あ?」

 到着そうそう、目の前に謎のピンク色のポーションと、捨ててしまう部位のレバーを差し出されてダタズさんが閉口する。

「奥さんに……レバーはちょっと食べにくくていやだと思うかもしれませんが、体に害はありませんし、むしろ、今は新鮮だから害がない状態のはずで、明日にはもう食べたらお腹が痛くなるかもしれなくて……とにかく、すぐに食べさせてみてください!病気が治るかもしれません。治らなくても体に害はないので、とにかく急いで試してみてください。野菜を切ったりといった下準備はこちらでしておきますから。急いで!」

 ダタズさんがびっくりした顔のまま、私からレアポーションとレバーを受け取って、街に向かって駆け出した。

 ニンジンのようなもの、玉ねぎのようなもの、ピーマンのようなもの、セロリのようなもの、じゃがいものようなもの……野菜類はとにかく皮をむいて食べやすい大きさに切っておけばいいかな。

 特製ダレはすでに用意されている。あとは何をすればいいのかな。調味料として、ダタズさんが何か持ってきている。匂いを嗅ぐと胡椒みたいなもの。マスタードみたいなもの。塩。

 あとはニンニク。油と小麦粉とパン。

 シチューと言っていたけれど、油と小麦粉を使うんだよね。何のシチューだろう。牛乳系はないし、トマト系もないし……。

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