第21話
手首のあたりに、まるで腕輪のように5ミリほどの線がぐるりと3本描かれています。
肩に近いほうから赤、青、青です。
あら、かわいい。と、じーっと見ていると、何か言葉を待っているのか、犬耳男が、私の顔をじーっと見ています。
ううう、待てをしているときのバーヌにしか見えないからやめてぇ!
思えば、バーヌも美犬でした。
人間になれば、この目の前のイケメンくらい整った顔立ちをしているのかもしれません。
って、そんなことを思うと、バーヌの生まれ変わりみたいな風に見えてくるから不思議です。
違う違う。
ジーっと見てくる男の顔を、思わずシーっと見返してしまいました。
「あの、もしかして、奴隷紋のこと、知りませんか?」
こくりとうなづきます。
奴隷制度があるっていうことも知らなかったんんです。奴隷紋のことなど知るわけもありません。
「えーっと、解放奴隷は、奴隷を解放された人で、奴隷紋は消えます。破棄奴隷は、破棄された奴隷で、奴隷紋は残ります」
何が違うのでしょう?
主人に手放されるっていう意味では違いがないように思えますが……。
首を傾げたら、続けて説明してくました。
「解放してもらうためには、奴隷ギルドで奴隷解放魔法を受けなければいけません。ご主人様と奴隷の双方の合意が必要です。奴隷を破棄するには、ご主人様の一存で可能です。奴隷が役に立たなくなったり、必要なくなったり、それから奴隷を養うための糧がなくなった場合などいろいろな理由で破棄します」
ってことは、世の中に結構破棄奴隷っているんじゃないでしょうか?
いらなーいと思ったら破棄すればいいんですよね?
稀有な存在じゃなければそのまま生きていたって別によくないのでは?
「僕は捨てられて2日たちました。1日ごとに、奴隷紋が半分ずつ赤く染まります。すべて、赤く染まれば死にます。奴隷と言う立場から解放されたわけではないので、逃亡奴隷と同じ位置づけになってしまうのです。ただし逃亡奴隷は線が黒く変化します」
「は?」
ちょっとまってください、情報が多すぎます、えっと、何?
「あと、4日以内に新しいご主人様を見つけなければ、僕は死にます」
「え?」
どういうこと?死ぬなんて突然言われても、理解できません……。
「破棄された奴隷は、自分で奴隷ギルドへ行き、破棄されたことを告げます。そうすれば、ギルドが新しいご主人様を期日までに探してくれます。破棄されても、奴隷という身分に変わりはなく、逃亡を防ぐためにこのような仕組みになっています」
誰かに仕えなければ6日で死ぬ?
た、確かに、役に立たなくて破棄することがあるっていうことは、わざと役立たずを演じれば破棄してもらえて奴隷の身から解放されるとかだったら……困るのかもしれません。えっと、えーっと……でも、たった6日で死んじゃうなんて……。
「あなたも、じゃぁ、奴隷ギルドへ急いで行ったほうが……」
犬耳がぴくんと動きました。
「もう一つ、自分でご主人様を見つけるという方法があります。どうか、お願いです。僕のご主人様になってください!」
ひぃー、土下座が始まりました。っていうか、バーヌがちょんっと足元で甘えるしぐさに似てます。
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