第18話
「ジョーンさんから買った毒だというポーションを一つください」
「はぁ?何に使うんだ?」
リーダーがポーションの瓶を一つ手渡してくれる。受け取ると、すぐに、破棄奴隷の口に持っていった。
「飲んでください」
「うわ、ばか、坊主何のつもりだ!毒を飲ませるなんて!」
慌ててリーダーが私の手を止めます。
そりゃ、毒だと信じて疑わないリーダーからすれば、私の行動はおかしく見えるでしょう。
だけど、私はこのポーションが効果特大のものだと知っています。止めようとするリーダーの手を振り払い、ぎっと強い目で見ました。
「まさか、苦しむくらいなら一思いに息の根をとか、そういうことか?」
まったく違うけれど、そういう理由で納得したのか止めるのをやめてくれました。
破棄奴隷は、よほど喉が渇いていたのか、それとももう耳も聞こえないのか、毒だと言われたポーションをゴクリゴクリと飲み干しました。
そのとたんに、体がビクンと大きく一度波打ち、倒れ込みます。しばらくして胸をかきむしるような動きをして、地面に激しく頭を打ち付けるなど苦しみだしました。
ああ、もうちょっと、もうちょっと我慢して。
「おいおい、なんだ、あのガキ。目もそらさずじっと見てるよ」
「俺はもう見ていられない。行くわ」
「ああ、そうだな……」
と、次第に野次馬が減っていきます。
「おい……まさか、ずっと見てるつもりか?」
槍の男が私の背中をつつきました。
「もう少し待って。たぶん、1時間もすれば……」
「1時間だぁ?」
リーダーがあきれた声を出します。
「はぁ、しゃぁねぇ。乗りかかった船だ。最期まで見届けるか。墓くらいは掘ってやる」
やっぱりいいひとです。
「墓は必要ないですよ。それより、最後までちゃんと見てください。ジョーンさんとの話し合いはそのあとに続けてくれますか?」
「話し合い?ああ、まぁ、そうだな。ちょっと俺たちもヒートアップしすぎていたか。ちゃんと話し合うよ……」
リーダーがふぅっと小さく息を吐きだしました。
「使ったポーションの金貨1枚はまけられない。それから買ったポーションの代金の返金、それから慰謝料は金貨1枚。幸い無事だったしな」
ジョーンさんがほっと息を吐きだし、頭を下げました。
「ありがとうございます、ありがとうございます、あの、すぐにはお金は準備できませんがギルドで誓約書を、必ずお支払いいたします」
あれ?
「いや、だから、話し合いは、最後まで見てからにしてほしいんですけど……」
二人が握手をしているところに割って入ります。
「あはは、ユーキ、助かったよ。お前のおかげでな、大丈夫、うまく話がついたから」
と、ジョーンさんが私の頭をなでました。
「坊主、効果特大のポーションってのはもしかして冷静になって話し合うってことだったのか?確かに心を落ち着ける効果は特大だったな。破棄奴隷……あいつのおかげでもあるか」
と、リーダーが破棄奴隷に視線を向けました。
先ほどまで苦しみうめいていたけれど、今はピクリとも動かず体を丸めています。
「ああ、息を引き取ったか……」
槍の男が近づき、すぐにリーダーを呼んだ。
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