第16話

 視界の端にまだ表示されていた検索結果が、動いています。

 動いてって、新しい情報がキーボードをたたいているように、次々に表示されていくのです。

 


【隣町に伝達を頼むだけだが、大至急となるとどれだけの依頼料が必需になるのか。いや、お金のことをぐだぐだ考えている場合ではない。

 身の破滅だ。ジョーンさんもそうだし、僕も……。毒を、知らなかったとはいえポーションとして売ったとなれば……。もし、それによって誰かが犠牲になってしまったら……。

 急いで家に戻る。

「悪いが、あるだけのお金を出してくれ」

 妻に声をかけ、自分も家の中から金をかき集める。

「また、ポーションの材料で珍しい薬草でも買う気ですか?」

 妻はふぅっと小さくため息をつく。

「スマン、違うんだ……」

 娘の取った行動で、毒を売ってしまったことを話せば、妻は目に涙を浮かべて、急いで家じゅうからお金をかき集め、そして、大切にしまっていた祖母の形見も持ってきた。

「売ればいくらかのお金になるはずです。足りなければこれを……」

「すまん……」

「いえ、いえ……」

 今にも嗚咽を漏らしそうになる妻のもとに、娘がかけてきた。

「ねー、すごいの、来て、来て!」

 娘が妻の手を引いて小屋を出ていく。

 それを見送り、急いでお金を麻袋に突っ込み、自分の財産ともいえるポーションのレシピメモを手に取った。

 売れるものならなんでも売って金を作らないと……。

「あ、あなた、待って、待ってください……」

 家を出ようとしたところで、娘と一緒に妻が裏口から駆け込んできた。

「こ、これを……」

 妻の手には、小鳥が乗っていた。

 チュチュチュと鳴きながら、美しい羽根を毛づくろいしている。

 時折両翼を広げてバサバサとしている。

「今は、そんなことをしている暇は……」

 どこか怪我をしている鳥を捕まえたというのだろうか?パッと見た感じ、怪我などしていないように見えるが。

 小鳥が、僕の顔を見た。小さな丸い両目に僕の姿がうつる。】



 ああ、じれったいです。小鳥はどうでもいいから、早くギルドへ行ってください!



【頭に青い羽、体は黄色で、翼の先に緑の……。

「治ったのよー!」

 娘が嬉しそうに笑う。

「これ、前に保護した鳥でしょう?片方の翼と目が……すっかり治ったのよ」

 バサバサと小鳥も嬉しそうに妻の言葉に合わせて翼を動かした。

「ま、さ、か……」

 欠損部位まで治る……なんて、効果中なんてものじゃない。効果は特大じゃないか……。

「こ、小屋に片足を失ったウサギがいただろう、連れて来てくれ」

 もし、娘が何かを混ぜたこのポーションの効果が特大だとしたら。

 ギルドに1本でも買い取ってもらえれば金貨1枚や2枚にはなるだろう。そのお金で隣町への伝言は頼めるはずだ。

 いくら効果があるからといっても、即効性がなければ冒険者に売るのは危険だ。

 HPを早急に回復させたくて飲んで、痛みに1時間も苦しむなら、その間にモンスターに襲われて命を失いかねない。犠牲者が出る前に知らせなければ。

 鑑定結果で、効果中とでたのは、この痛みに耐える時間があるからトータルしての評価が中だったのかもしれない。】

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