死刑制度がなくなったので人類貢献のため仮想空間(ヴァーチャル)で人を殺します。

第1話 フスの列聖

皆さんは、こんな話をご存知でしょうか。

スタンフォード大学による監獄実験です。有名な話ですから、検索すれば見つかるでしょう。

ジンバルドーは？いや、いいんです。

実験の名前は世に伝わっても、実験を指示した人間は、この世には知られてはいない。

皆さまは税金で飼われた奴隷です。犯罪者という概念は社会主義の国家では存在しなかった。ゆえに、犯罪者にとってのユートピア、楽園、犯罪し放題の広大な土地は永久に失われ、我々犯罪者に与えられた任務は。

わかりますか、カンパネルラさん。

カンパネルラは、モジモジしています。正確には、動かす手もないため、自分のAI、自動化された人口知能に任せています。

人口知能があなたがたの代わりです。

手足があるから悪さをする。

首から下があるからこそ悪さをするのです。

障害者に比べると健常者の犯罪件数は5倍にのぼる。あなた方は健常者、潜在的に犯罪の素質に恵まれている。

だからその頭脳を犯罪に生かしたところで、誰が責められますか。

優しい人たちは、障害者を排除し、元から特権階級である健常者のあなた方を愛し、尊敬してやみません。

あなた方健常者は、健常者しか出ないお芝居が大好きだ。それになんの疑問も持たず、手話を知らず、何も知らずに君たちは。

失礼。時間がきたようだ。

ゲートオープン。

狩人たる君たちに休息はない。

彼ら、いや、身心ともに病む人々を少しでも苦痛から遠ざけるために。

ああ。リドルストーリーは知っているはず。

競技場に虎を放り込む。

奴隷である青年は、扉が開いたら虎に噛み殺される。

しかし、もしも、扉を管理する人が扉を開けなかった場合には、青年は助かる。

ところが、だ。虎はとてもお腹が空いていて、この虎の腹を満たしてやらなければ、観客席にいる無辜な大衆を斬り殺してしまう。

君たちにわかるはずもないか。

そのためにだけ存在する君たちなんだから。

会えて楽しかったよ。

それじゃあね。