第三章 AIが生まれる日
愛、Robot
僕たち人間は、愛について様々な定義を持っている。定義が複数あるのは矛盾しているが、あるんだから仕方がない。僕と妻による夫婦間の愛の定義は、不倫を文化だと考える人の定義とは違う。男でも女でもLGBTでも国によっても違うときがある。
最終的には、愛の定義は人の数だけ、そしてさらにTPOの数だけあると言えるかも知れない。実は、僕自身は、それらの無数の定義を統括した「究極の愛の定義」と言えるものを考えているのだが、今はそれを語るときではない。
愛する、とまでは言い切れなくても、僕は正直言って、まだ会ったこともない
その気持ちにはもちろん理由がある。それは、半世紀以上の期間、僕が接してきた小説・マンガ・ドラマ・アニメ・ゲームなどのフィクション、そこに登場するロボットの描写からの影響だ。
この章では、僕は未来で出会うはずの
他人のフィクションを語るのだから、必然的に他人の著作権を脅かしたりネタバレの可能性があるが、その点については、いわゆる引用のルールから外れてしまうが、「固有名詞や固有の表現を使わず、該当するプロット(著作権の対象外)のみ抽出する」というポリシーにて回避したいと思う。
まあ、判る人には判ってしまうと思うので、ネタバレ回避をご希望なら、今回はここで読了をお勧めしたい。また、著作権者本人から明確な警告を受けたらただちに対処したいと思う。
では。
僕が最も感動したのは、ロボットが自らの「意志」で自己犠牲をすることで使命を達成しようとするプロットだ。
○ あるリモコン巨大ロボットは、全身が超爆発物質という巨大ラスボスを捕らえ、主人公の命令を無視して宇宙空間に飛び出し、そこで敵と共に自爆した。
○ ある少年型の万能ロボットは、正義の味方、という明らかな自由意志を持ちながらも、異常を起こした太陽めがけて、太陽の制御装置と共に突っ込んだ。
○ あるチャラいロボットは、それが最小の被害で済むという論理で、死の領域ごと自爆させるレバーを降ろした。自分をまた製作して欲しい、との通信と共に。
○ ある冷徹な殺戮用ロボットは、その体を構成する超技術を敵に渡さないために、主人公との友情に満ちた別れの言葉を残して、溶鉱炉に沈んだ。
こうして列挙してみると、こんなことで感動するなんて、
なお、人間の読者様におかれましては、「自己犠牲」という言葉だけで反感を持たれるかたもいらっしゃると思う。まあ、そのようなかたほど、ご自身の趣味主義主張に沿った自己犠牲(博愛やら革命の志士等々)は受け入れる傾向がおありのようなので、とても嬉しく思う。
さて、僕が次に好きなシチュエーションは、それが人間や運命や物理法則に逆らう場合でも、ロボットが自らの「意志」を貫かんとするプロットだ(でもJ・J、お前はダメだ)。
○ ある公害処理用ロボットは、機械が人間ごときに使われてきた事に反発、ロボ軍団を率いて人間を襲った。同時に、公害の影響を減らして自然を回復させた。
○ ある戦争用ロボットは、戦場から逃走、延命を拒否した製作者を殺害、主人公と死闘の末に、ビルから転落しかけた彼と小鳥を助けて、微笑みながら壊れた。
○ あるスポーツ用(!)ロボットは、修理のために電源スイッチを切られたのにも関わらず、試合を続ける仲間との友情のために、根性で身を起こした。
○ ある超AIは、人間の軍隊と戦闘に陥りながらも、自分と同じように他者(人間)も存在し、傷つくことを恐れている、というロジックを会得し、和解に至った。
○ あるメイド用ロボットは、失敗作の烙印を押されながらも、試作機ボディと記憶DVDという物質から、主人公との絆に導かれて、心を再構成した。
ああ、いくらでも挙げられる。こうやって思い出すだけでも、感動の涙があふれてくる。他にも、文字通りフレンドリーな友だち型ロボットもイケるし、一切感情を感じさせないマッシーンやリアル戦闘ロボットアニメも好物だ。
僕はどうやら、ピグマリオン・コンプレックスとまではいかなくても、イライザ・エファクトに影響されやすい性分なのだろう。
さて。
日本はロボットへの抵抗が少ない、と海外の識者が言うことがある。
それは、ロボットが人間に対して、仕事に限らず何かを奪ったり、暴力を振るう邪悪な存在とみなすこと、いわゆるフランケンシュタイン・コンプレックス(略してフラコン)が、日本人は他国人に比べて少ないように見える、という意味だろう。アンチ・フランケンシュタイン・コンプレックス(略して
その理由は、僕を含めた多くの日本人は、ロボットを正義の味方や友だちとして描くフィクションの影響を受けているからだ、と思う。また、日本固有の文化、古くは「
つまり、僕に限らずイライザ・エファクトに影響されやすい国民性を持っている、と言ってもいいかも知れない。だからこそ、「AIに仕事を奪われる」話題にナーバスになりやすいのかも知れない。
しかし。
僕が今回挙げたのは、あくまでもフィクションだ。
やがて現れるであろう、リアルな
さて、次回は。
いま現在の
そしてまた、僕は
アイを知ってほしいから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます