Why are you lonely?

八神一久

第1話

「先輩って彼女いるんですか?」


 フラッと部屋に入ってきて、挨拶も無しに対面に座る後輩。そんな彼女は文化祭の後始末をしている俺に対し、そんなことを口走った。


「いない」

「え?マジですか?」


 驚かれるような事でもないし、驚く前に目の前で備品在庫のリストチェックをしている俺の手伝いを買って出て欲しい。


「先輩生徒会長でしょ?」

「それは関係あるのか?」


 生徒会長になると彼女を作らないといけないのか?それだと16年間彼女のいない俺はどうなる。


「えぇ~?生徒会長ってモテそうなイメージありません?」

「漫画とかアニメとかならわかるが、実際はこんなもんだろ」

「もっと夢をくださいよ夢を」

「何を求められているんだ俺は」


 手を止めて彼女を見ると、いつもよりも胸元の開いたシャツに目が行く。気を付けているつもりでも男の本能が肌色と谷間に視線を奪われた。


「でも、先輩って女の子からの人気あったりとかしないんですか?去年のバレンタインチョコの数は?」

「無いな。去年は生徒会の先輩方から一個ずつで計二個だ」

「去年のって阿部先輩とか?」

「広田先輩もだ」

「おぉ!前任の副会長と会計から貰ってるじゃないですか!そこからラヴへの発展は無かったんですか?」

「ないな」

「どうして!?」


 なんでこんなに大きな声で叫ばれなければならないのか。

 俺は会話の流れが全く見えないため、一石を投じた。


「柳沢、お前俺の事が好きなのか?」

「いえ。アタシ彼氏いるんで、そう言うのはチョット」

「ならなんで聞いた」


 真顔で断るな。少し期待した俺の心を返して欲しい。


「いやぁ、彼氏とちょっと喧嘩してて、むしゃくしゃして生徒会に来たら先輩がクソ真面目に働いてたんで」

「ちょっかいを掛けに来たと?」

「イエス!アイドゥー!」

「まったく……」


 俺は諦めと観念の意を込めてため息を吐き、笑顔を浮かべる。


「ウザい奴だな」

「可愛い後輩が愚痴を垂らしに来たんですよ!?もっと労わってください!」

「横暴過ぎるだろ!なんならちょっと期待させておいて落としたお前の方が悪い!」

「え?期待したんですか?このセクシーで人気の高い柳沢 奏(やなぎさわ かなで)を狙ってたんですか?」

「いや、狙ってはいない」

「じゃあ文句言うなし!」


 なんだこのやり取り…………。

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