空のくじら
@utau-aruku
第1話 ぜんぶで いくつでしょう?
そんなこと聞かれたって わからないなぁと、私は考えていた。太郎君が りんごを3個買って、次郎君が2個買って、ぜんぶでりんごが いくつでしょう?なんてこと どうしたらわかるんだろう。だってお店にもまだあるかもしれないし、家にもあるかもしれないし、ポケットにも入ってるかもしれないし、と頭は動いているから、返事をしている場合じゃなかった。「もう一度言うよ?」と白衣のお姉さんが問題を読んでも、ますますこんがらがるばかりだった。だって、ぜんぶと言ったらぜんぶだ。オールだ。すべてだ。ぜんぶでりんごがいくつあるのかなんて わからない。じっと考えだまっていた。「むずかしい?」と聞かれた頃には机の上に突っ伏していた。むずかしいに決まってるよ。りんごがぜんぶでいくつだなんて!と心の中で思ってはいるけれど、そう簡単には声に出して自分の気持ちを困り具合を伝えられないことこそが、物事を複雑にしていた。答えられないまま次の問題になった。まだ頭の中が終わってないから、ずっとりんごのままだ。りんごだらけだ。それから太郎君はどんな服なんだろう?太郎君と次郎君は友達だろうか?なぜ、いっしょにりんごを買いに?とりんごのままだ。すると、問題を読んでいたお姉さんが言った、「言語の刺激でできないね。式ならとけるのかな?やってみようか?」
りんごを数えられない理由を やっと言ったら、数字だけ取り出すんだよ。と、私の頭にさらにむずかしくなった。だって、太郎君の家の情報がないし、どんな服があるかわからないし、ポケットの中も調べられないし、次郎君にも聞いてないのに。頭は沸騰寸前で、説明できそうになかった。頭の隅では別のことも考えていた。これがわからないと どのくらい わからないことになるのだろう。だから、みんなの話しがわからないのだろうか?
手書きで書かれた数式の +の意味も わからなく、「これ、なんのことか忘れちゃった。」とやっと言ったら「わかるのだけでいいよ。」と。だから、どうして 教えてくれないんだろう。教えてくれれば できるのに。
まさか こんなことになるとは 思ってなかったのだそうだ。別のテストに切り替えることになった。
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