思考実験って誰得なんです？

α版

って誰か言ってた。

思考実験って誰得なんです？

“Don’t think. Feel.”

カクヨム3周年企画に便乗中。

お題「切り札はフクロウ」

Gedankenexperiment

＊

　この世界で最強のフレンズはホモ・サピエンスである、というわけではないそうだ。ないそうだ、というのはわたしも誰かしらかからそう聞いたからなのではあるが、その誰かが本当に誰であったのかということをわたしはまったく思い出せない。それを思い出したところで、なんと取るに足らないことで相当な時間を無駄にしてしまったのかと後悔するであろうということはなんとなくは予想できるのだが、無間に続く自分の思考を、わたしは自発的に止めることはできない。

　ときにわたしは、自分が一体なにであったのかさえもしばしばわすれてしまう。海を泳ぐさかなであったのか、池に暮らすかえるであったのか、はたまたわたしは空飛ぶトリであったのか。考えれば考えるほど、その答えが遠ざかる気がしていたのだが、人は考える生き物であると誰かが言ったのを思い出し、わたしがその、まさに、ヒトであったと再確認する。この時間もまた、無駄な時間と言えるが、自分が何者であるのか、あるいは自分が自分でいるためには、たしかに大事な思考実験なのであると、わたしはそうおもう。

しかし、人は考える生き物である、とは一体誰の言葉であっただろうか。確かに哲学者かなにかが、人は考える葦である、と残したという。

そう、葦である。果たして、葦は生き物なのだろうか。百歩譲って葦は生き物だとしても、動物ではなさそうだ。つまり、ヒトは考える葦である、とは矛盾した文章なのかもしれない。こうやってまた、与えられた時間を殺しながら、わたしは生きていく。

　さて、わたしは生き物のことを冒頭でフレンズと示した。つまり、人は考える生き物である、ということは、人は考えるフレンズなんだね！ ってことでもあるというわけなのだ。逆にいうと、考えないフレンズは人ではない、つまりヒトデナシということにもなるのではないだろうか。でも、そういえば誰かが、”Don’t think. Feel.”とか言ってたし、感じるだけで、人間やっててもいいのかもしれない。考えないこと=ヒトデナシはさすがに言い過ぎたかもしれないな。うんうん。

このように、伝聞も含め、世界は曖昧なもので構築されているようにおもう。仮定の上に仮定を積み上げて、仮定が間違っていれば、また新たな仮定を構築して、もっともらしい真実を求める。そうやって、ヒトは生きていくのかもしれない。

そう考えると、自分が一体なにであったか、という問いもあまり意味をなさなくなる。

じゃあ、もう、わたしは人間じゃなくて、フクロウでいいや。ホーホー。夜行性なんでお仕事しんどいでーす。聞こえませーん。ちょっと何言ってるかわかりませーん。早退しまーす。

無敵である。

仮定する、つまりそういうことにしておくのである。

ほら、そういうことにしておけばこれから先もまたいい感じ、ってどこかのグループも歌ってたし、この仮定もとりあえず矛盾してはなさそうだ。

諦めるに似て非なるもの、そういうことにしておくことにより、仮定するための仮定を置くことができ、話を前進させることができるのだ。

って誰か言ってた。