今度こそ

今度こそはちゃんと、さよならをしよう。


「ただいま〜疲れた〜」


0時半。


いつも通り。


「おかえり。ごはん、どうする?」


「済ましてきた〜」


「お風呂は?」


「入る入る」


風呂に入るまでは、近づかない。


その方がいい、お互いに。


貴方は気づいてないだろうけど。


女物の香水の匂い。


ベタベタしすぎると、わからなくなるのかしら。


この香水を、私は知っている。


彼の、妹の香水だ。


だって、私が贈ったものだから。


「い、いいんですか?!こんな高そうな!」


フランス旅行のお土産だった。


血の繋がりはないけどそんなの関係なしに大事な妹なのだと紹介されたから、私も大事にしたくて贈ったのだ。


「ありがとうございます!お義姉さん!」


はにかんだ彼女の笑みを当時の私は天使のようだと捉えたが、今となっては悪魔だ。


今度こそはちゃんと、さよならをしなくちゃ。


「はぁー気持ちよかった」


彼が、私の匂いになった。


あぁ、ダメだ。


今日もまた、さよならできそうにない。

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