お題:最初と最後を同じセリフにする

『放課後に、屋上で待っているので来てください』


 そんないじらしいメッセージをファンシーな柄の封筒に包み、下駄箱に入れたのが4時間前。

 センパイ相手に一世一代の告白をして、ぶっ倒れそうになったのが1時間前。

 そしてその辺のドキドキ青春イベントが、全部台無しになったのが今ナウだ。


「ったくさぁ〜〜、魔物の野郎こんなタイミングで出てこなくてもいいだろコノヤロー……」


 無人になった屋上で。

 フェンスの縁に座りながら、私は手に持ったステッキで、ぽくぽくマスコットをぶっ叩く。


「痛っ、痛っ、ちょっとボク担当の魔法少女がバイオレンスだよーっ」

「るっせー、私は今不機嫌なんだ協力の代償としてこのぐらい我慢しやがれっ」


 あ、アタシ、魔物からこの街を守る魔法少女やってます。


                    ◇


 人が本当に勇気を振り絞って告白しちゃったその瞬間、学校の屋上、私の目の前に降って来たわけですよ魔物が。

 いやはや本当に大メーワク。

 聞こえた返事はかき消されるわ、センパイは私を守ろうとして魔物に殴られて気絶するわ。

 アタシの乙女心を何だと思ってるんだとブチギレモードで瞬殺したはいいけれど、腹の虫はおさまらない。

 魔法少女の戦いはフツーの人には秘密であって、巻き込まれた人の記憶は消さなきゃいけないワケなんだ。

 だからさっきの告白は全部パー。目覚めたセンパイは当然になんで屋上に来たかも覚えていない。

 あーもう、勇気の出し損だ。もう一回勇気を振り絞れったって無理。無理。絶対不可能。

 二度目ならひょっとしたら気軽にできるかもしれないけれど、気軽な告白とかなんかヤじゃん。

 乙女人生かけてるんだから、告白するときの緊張含めて、ちゃんと相手に受け取ってほしい。

 あー、もう、二人とも記憶が消えるならまだよかったのに、なんでアタシ魔法少女で記憶を消す側にいるんだろ。


 けれどもこんなこと程度でセンパイを諦めるのも嫌だから、頑張ってもう一回手紙を送ろう。

 今度だって上手くいくと信じて手紙を送ろう。


 文面はもちろん、『放課後に、屋上で待っているので来てください』ってね。

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