チャーハンの確率
七寒六温
(11月19日水曜日)
僕こと、水原有人は、チャーハンが大好きだ。
具材はいたってシンプルでいい。焼豚、卵、ネギのみ。最悪卵だけでもいい。油でささっと炒められただけでご飯をあんなにも美味しくしてしまうのだから、大したもんだ。
僕が嫌いな冷や飯でさえも美味しく変化させてしまう。チャーハンは偉大だ!
もし、ご飯が残って冷や飯になってしまっても、ちゃちゃっとチャーハンにしてしまえば問題解決。
今夜このチャーハンが出てくる確率を勝手に予想してみた。
「今日の晩ご飯がチャーハンである確率は70%!」
なぜ、70%という確率になるかというと、さっき、冷蔵庫を開けて中を見たが、チャーシューとベーコンとエビというどれが選抜されても絶対にチャーハンが上手くなるメンツがそろっている。それに卵とネギも用意されていた。
これはチャーハンを期待してもいいのではないか?
僕は夜飯を楽しみにして、今日も学校に行く。今日は数学と国語が2時間ずつに、世界史、公民のオール座学。この偏った時間割を僕らは、「魔の水曜日」と呼ぶ。
偏り過ぎだ。
実質 数学と国語と社会の3教科しかないじゃないか? 2時間授業の嫌なところは、次も同じ教科だからっていう理由で、休憩時間が曖昧になる所だ。
「きりが悪いので、はい ここまでやりましょうね!」
と言って2分。僕らの休憩は奪われ、10分の休憩が8分になる。オーバーした分の補填はなく、当たり前のように開始のチャイムと同時に授業が始まる。2時間同じことをするだから時間の進みも遅い。
「魔の水曜日」
これが水曜日に組まれていることがまたいやらしい。これが金曜日ならばこれを乗り切れば明日休みだもんねーと割り切れるが水曜日だと今日を除いて後 2日も行かなければならない。地獄だ地獄。こんなの地獄過ぎるわ。
魔の水曜日に耐えて、ようやく帰宅。
おやつに、ポテトチップスが置いてあったが、70%の確率で、晩ご飯がチャーハンだと考えるとここは、食べずにお腹をすかせておいた方がいい。さっさと宿題を終えて、チャーハンを楽しめるように備えておくか。
「魔の水曜日」のメリットは1つだけある。
基本的にうちの学校では、授業があった日は必ずといっていいほど宿題が出る。体育等を除いては……この水曜日、教科的には数学、国語、世界史、公民。
数学がプリント1枚、国語はノートに問題として出された10個の言葉を漢字で書くだけ。分からなければ空欄でいい。世界史と公民は合わせてプリント1枚。
「魔の水曜日」は、宿題がものすごく楽なのだ。集中してやれば、1時間ほどで終わる。あくまで集中してやれば……
すぐに取りかかったのはよかった。
だが、集中力が持たず、つい、近くに置いてあった漫画に手を出して、読んでしまった。
読み始めるとこの漫画が面白いこと面白いこと。気付いたら最後のページをめくっていた。
結局、少しやっては、他のことをして、少しやっては他のことをしてを繰り返したら、2時間以上かかってしまった。予測時間の倍かかっている。
だけど、時間はかかってしまったが、時間がかかってしまったがゆえに、じきに晩ご飯だ。
宿題が早く終わってしまっていたら、
「今日はチャーハンか?チャーハンじゃないか?いや、チャーハンだ。チャーハンだと思うけど、チャーハンじゃないような気がする。チャーハンかな?」
チャーハンのことばかりを考えてしまい何をしても手につかなかったと思う。
「有人、ご飯よ!」
母に呼ばれて僕は急いで階段をおり、台所へと向かった。
「今日の晩ご飯は、3、2、1!」
「えっ?」
テーブルに置かれていたのは、ラーメンと明太子と焼きベーコン。
「あ、お隣の鈴木さんがね明太子をくれたのよ。だから白ご飯がいいなって思って、それだけだと寂しいからラーメンにしたのよ!」
白ご飯がいいなってことはもしかしたら明太子がなければ白ご飯じゃなかったかも知れない。
おい鈴木! なんてことをしてくれたんだ!
今日はチャーハンだと思っていたのに、余計なことをしたせいで、白飯になってしまったじゃないか?
確かに、明太子は白飯と食べると美味い。
好きだよ、ああ、好きだよ 明太子も!
ただ、明太子は朝だっていい!もう少し、もう少し遅い時間にくれればよかったんだよ。
チャーハンが…… 僕の…… チャーハンが
ラーメンの中に入っているチャーシューもネギも生卵も、チャーハン用だったはずだ。母もやけくそになったのか、ベーコンまで単体で焼いてあるじゃないか!
70%だったはずが……70%だったはずが……
結論、今日の晩ご飯は、チャーハンではなかった。
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