内定の電話

 2020年12月 某県某所にて、スマホの着信音が鳴り響く。


「おめでとうございます、内定でました!」


「・・・ありがとうございます。」


 転職活動自体は9月からしていた。15企業くらい面接を受けた。若さという武器を持っていたため書類選考ではほとんど落ちなかった。それに昨今の新型コロナウイルスの影響もありほとんどリモート面接であったので、地方在住としては非常にありがたかった。多分今後リモート面接が主流になるだろう。


 そのような状況であるが内定を貰ったこの会社は二次面接から東京本社での対面面接という強気姿勢だった。


「お茶付さん(筆者の名前)の積極的な姿勢を評価されたみたいです。我が社にはいないタイプの人間だとのこと。周囲と協力して実績を残されてきた点も良いとのことでした。」


 エージェントさんはそう言うが、本来私はそのようなタイプの人間ではない。基本消極的な人間だし、できれば働かないでお金を貰いたい。ただこのような人間は評価されないし、他人からも良く思われない。だから私は現職でMRとしてドクターに面会する時も自分で引くほど笑顔で明るく話すし振舞う。転職の面接でも同じようにした。


 演じた自分で評価された会社に転職して私はやっていけるのだろうか。非常に悩んだ。それにこの会社は大丈夫だろうか。繰り返すがリモート面接が主流になっている中で二次面接から候補者を自社に呼ぶ強気姿勢だったのだ。私の考えがズレているのだろうか。考えれば考えるほどわからなくなる。


 そもそも一次面接を通過した意味がわからない。私はこの会社の一次面接で業務内容を間違える痛恨のミスをしていた。


「お茶付さん、弊社のHPってご覧になりましたか? 弊社では現在そのサービスは行なっていないんですよ。」


「あ、えっと・・・」


 いろいろリカバリーを考えたが何も思い付かず、


「申し訳ございません。」


 不安と疑念、ネガティブな感情がどうしても先行してしまう。でもどうだろうか。今回私が転職しようと考えた理由は東京に帰りたいと思ったこと、それにMRを離れてB to B の業務でキャリアに幅を持たせたいと思ったことの2点である。望みは達成される。現在抱いている不安はこの会社の業務や勤務地に対してではなく、内情や人間関係などに対してであり、それはもう入社して中に入ってみるしかわからない。


『悩んだ時は立ち止まらず、とにかく動け。動きながら考えろ』 

 新卒で入社した会社の元上司の言葉が思い浮かぶ。


「内定をお受けいたします。よろしくお願いいたします。」


 部長、私挑戦してみます。埼玉から応援していて下さい。




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