75年越しの『ごめんなさい』
神島しとう
あなたの後悔にさよならを
時は2091年。
日本のとある特定機能病院に、変わった診療科がある。
その名は、記憶没入科。
記憶没入科のある部屋には、巨大な装置があった。
仮想現実の究極型であるフルダイブ技術を用いた装置で、患者が自身の記憶に完全没入する治療法が特徴だ。
主に終末期の患者のケアで活躍している。
フルダイブ技術によって視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感が再現され、記憶の中の人物もAIによって再現される。
もう一度、体感したい過去、やり直したい過去。
患者は死の間際、後悔や未練の念を持って、この記憶没入科を訪れるのであった。
「安倉ミコさん、お入りください」
医師が声を出すと、自動ドアが横に開いた。
自動車いすに乗った患者と、その娘が病室に入ってくる。
AIが組み込まれた車いすはプログラムされた通りに移動して、医者の前で止まった。
「医師の
「よろしくお願いします、先生」
と言ったのは患者の娘だ。
患者の方はというと、背もたれにぐったりとした様子で背中を預けていた。
生奥野は娘に頭を下げる。
「早速ですが、フルダイブ装置の方に移動しましょう」
病室の半分以上を占めている巨大装置に車いすが移動し、医師と看護師が患者を持ち上げる。
フルダイブ装置は横に倒した空き缶を思わせるフォルムで、これといって際立った形ではない。
患者は台に乗せられ、医師がボタンを押すと中に収納されていく。
「それでは、安倉ミコさん。いつの記憶に遡りますか?」
「……祖母が死ぬ前日」
しわがれた声が、装置内から響いてくる。
医師がコンピューターを操作している間、患者はボソボソと呟き始めた。
「わたしは謝りたい。あのとき、祖母に盲目的な態度をとってしまった。わたしは気付いていなかった。祖母の優しさが。もう一度だけ、祖母に会わせてほしい……」
そう言って、白濁の瞳が閉じた。
コンピューターには、記憶が映し出されている。
高速で巻き戻されていく記憶の映像では、患者が若返っていく。
50代、40代、30代、20代……。
そして、目的の記憶を見つけた。
今から75年前の2016年5月14日。
その翌日の15日に、患者の祖母が死んだ。
「それでは、あなたの後悔にさよならを」
医師の人差し指が振り下ろされると、患者の視界は真っ暗になった。
「ねぇ、どうしたの? そんな、ぼぉーっとして」
誰かの声で視界が晴れる。
その瞬間、体は寝起きに似た重さに包まれた。
怠いというよりは、動かしにくい感覚に近い。
手足と瞼が重りをつるされたように重かった。
ここでようやく、私の意識がハッキリとし始めた。
高校の制服、肩にはカバン。
持ち上げた左手は、30代の頃から羨ましがっていたツルツルの肌になっていた。
私は若返った自分に、密かに歓喜していた。
「おーい、ミコちゃーん。起きてますかー」
呼吸をするたびに入ってくる匂い。
さんざん嗅いだ高校の匂いだ。
懐旧の念にかられてしまうのも無理がないほど、あのときの記憶そっくりであった。
あまりの懐かしさで、思わず涙がこぼれ落ちた。
すぅっと右頬を流れていき、顎から地面へと落下した。
突然、目の前で両手が叩かれた。
猫騙しによって、目覚めた意識が遠のいてしまう。
ビックリして見開きながら、友人の方に向き直った。
そういえば、さっきから人の声がしていた。
「おっ、ようやくこっち向いてくれた」
「こっち向いてくれたじゃないわよ。驚いて、腰が抜けそうになったよ」
「なんだか、おばあちゃんみたいな喋り方になってるよ、あはは」
友人は腹を抱えて笑っていた。
そうだ、この子はよく笑う子だった。
名前は、内田アヤ。
生涯の親友だ。
彼女は89歳のとき、心筋梗塞で倒れて翌週に亡くなったのであった。
「アヤは89で死ぬよ」
「いや、いきなり何言いだすの!? もしかして、さっきの相当恨んでる? ごめんね、あはは!」
「あはは、じゃないよ。もう、アヤったらいつまでも子どもなんだから」
私は昔の自分の話し方を思い出しながら、アヤと会話する。
アヤはひたすら話を続け、私は相槌を打つことを繰り返した。
ああ、懐かしい。
アヤの口から出る単語が、いちいち私の記憶を刺激する。
そういえば、そんな芸人もいたわね。
この頃は、こんな事件が起きていたのね。
2016年という年を、アヤとの会話で思い出す。
帰り道、ずっと会話を楽しんだ。
この何気ない日常会話が日々の癒やしとなっていたことに、今更ながら理解した。
いよいよ、分かれ道にさしかかる。
この二又で、いつもアヤと別れていた。
「じゃあ、また明日ね! バイバイ、ミコ!」
「うん、また明日!」
明日……。
アヤの背中を見つめながら、これからのことを思う。
そうだ、明日はおばあちゃんが死ぬ日。
カバンを強く握りしめ、私は通学路を走った。
はやく、家に帰って、わたしは……!
横を車が通っていく。
久々に、全力で疾走した。
あの車に食らいつこうと脚をぶん回す。
そうだった、若い頃はこんなに動けるものだった。
老体の自分と比較して考えてしまう。
身体が衰えるなんて、昔は想像すらしていなかった。
どうせ、10年もすれば不老になるような薬が開発されているに違いないと未来にばかり思いを馳せていた。
結局、10年経っても20年経っても70年経っても不老になるという薬は開発されなかった。
それに、75年先の未来と比べても大して変わってなんかいなかった。
空飛ぶ車なんてないし、瞬間移動できる装置も、あれもこれも全部実現していない。
とはいっても、私の空想が思い寄らなかっただけで、信じられないようなデバイスやロボットが開発された。
誰もが宇宙に行けるようになったし、情報の伝達速度も格段に向上した。
外見は変わっていないように見えても、中身は飛躍を遂げている。
それが75年間、生きてきて見てきたことだ。
家までの帰路なんて、すっかり忘れていた……。
はずなのに、操られたように足が勝手に動く。
両側に田んぼがある小さな道を駆ける。
そして、見慣れた景色が目に飛び込んできた。
そうだ、この道を曲がった先に私の家があるんだった。
腕を振って、脚をとにかく前に出す。
息を荒くしながら、ようやく我が家に帰ってきた。
この茶色の一軒家は、まさしく私の家であった。
玄関の前で、一回転する。
本当に私の家であるかを見渡しながら、思い返した。
間違いなく、16年間育った場所だ。
そして、玄関に手を伸ばす。
ここにきて、ドアノブを引くのが怖くなった。
ドアノブを握る手が震えている。
ちゃんと、おばあちゃんに謝れるだろうか。
それから、育ててもらったことを感謝できるだろうか。
深く呼吸をしてから、玄関ドアを開けた。
両親は共働きで、夜遅くまで家に帰ってこなかった。
私は親の顔をろくに見たことがなかった。
登校する時間帯も、親は上で寝ている。
一緒に住んでいるというのに、なんとも不思議な空間である。
一階と二階とで次元が切り離されているようだ。
そんな中、いつも頼っていたのはおばあちゃんだった。
家で食べるものは、おばあちゃんの手料理だし、買い物もおばあちゃんとだし、授業参観もおばあちゃんが来ていた。
おばあちゃんとの時間が、両親よりも確実に多かった。
それゆえに、私が反抗期を迎えるとおばあちゃんに当たり散らしていたのだ。
――もう! 勝手に私の部屋に入って掃除しないでよ!
――だから、別になんでもないって! ちょっと喧嘩しただけ!
――ほっといてよ! わたしのことなんて! どうせ、おばあちゃんには分からないんだから!
――なんで、いっつもおでんばっかりなの! 練り物はあんまり好きじゃないの!
――おばあちゃんなんか、大っ嫌い!
心が成長するにつれて、自分の家庭が嫌になっていった。
友人が家庭での事情を話すとき、いつも羨ましがっていた気がする。
高校に入ってから、それは顕著に表れ始める。
休日はどこかに出かけ、平日は暗くなるまで友達と過ごした。
おばあちゃんに若者の流行なんて分かるわけがないと決めつけ、私は家にいる時間を少なくした。
家に、おばあちゃんがいることが耐えられなくなった。
それでも、おばあちゃんは私を「ただいま」と温かく迎えてくれた。
もう、まもなく深夜だというのに。
「外は寒かったでしょ。おでんつくっといたから食べや」
なのに、私はぶっきらぼうに返事をして、さっさと二階に上がっていった。
「また、おでん? そんなんで体が温まると思ってんの? 私、食べないから」
私はなんて酷いことを口にしてしまったのだろう。
反抗期というものは実に厄介で、親に反抗的な言動をしても居心地の良さに甘えてしまう時期である。
反抗期が訪れるのにも、ちゃんとした理由がある。
親から自立するために、ひどい暴言を吐くのだ。
反抗期に対して、冷静に向き合えたのは私が母親になってからだった。
娘が高校生になって反抗期を迎えてから、私はおばあちゃんへの尊敬の念が増していった。
暴言を聴いて、どうしておばあちゃんは叱らなかったのだろう。
そう……私の悪い言動に、おばあちゃんは一言も注意することはなかった。
怒っているところを見たことがないし、怒る様子も想像できない。
これが家庭教育において良いか悪いかはさておき、おばあちゃんはなんて我慢強い人なんだと敬ってしまう。
おばあちゃん、おばあちゃん……。
「おばあちゃん!」
叫びながら、玄関の段差を駆け上がった。
靴を脱ぎ捨て、カバンも雑に放って居間を駆け込む。
ドアを勢いよく開け放ち、居間の様子を確認した。
居間に人がいる気配はなかった。
すぐに、和室の襖を開きに急いだ。
襖の重さを右手に感じながら、左に引いてもそこには誰もいなかった。
虚しさを煽る風が向かいの窓から流れ込んでくるだけだった。
「ミコが帰ってきたの?」
唐突に声が二階から聞こえてきた。
同時に、階段を下りる何者かの足音も響いている。
あの温もりを感じる声と、聴く人を安心させる小気味よい足音は……。
振り返ると、そこには75年前と変わらない姿があった。
「おばあちゃん……! おばあちゃん!」
「まあまあ、どうしたの」
思わず、おばあちゃんの胸に飛び込んだ。
おばあちゃんの匂いと肌に触れる服の生地が、涙をとめどなく溢れさせた。
服の胸辺りが涙で濡れていっても、おばあちゃんはただ私の背中を優しく撫でるのであった。
撫でる手の感触が、背骨に優しく伝わっていく。
「おかえり、ミコ」
「ただいま……おばあちゃん」
両腕で目のあたりを拭いた。
腕に涙の跡ができあがる。
おばあちゃんはニコニコと微笑みながら、居間に入っていく。
腫れた目で、おばあちゃんの背中を見つめ、その後ろを付いていった。
居間の中央に置かれたテーブルには、おかきが積み重なった器がある。
皺くちゃの手でおかきを取ると、小さな口に運ばれた。
「ミコちゃん、おかきあるよ」
「……食べる」
あの時は、おかきなんて目に入らなかった。
だから、食べると言った私自分が驚いている。
おばあちゃんは相変わらず微笑んで、私が席に着くのをじっと見守っていた。
普段とは様子の違う私なのに、おばあちゃんは平然としていた。
「あのね、おばあちゃん……」
次の言葉を続ける前に、私はおかきに手を伸ばした。
きつね色のおかきを手に取り、口に頬張る。
硬いけど、甘い。
口の中でとろけていくおかきは甘くて、こんなにおいしいものだったのかと感心してしまった。
いつの間にか、おばあちゃんはお茶を用意してくれていた。
味わっている時間が思いのほか、長かったようだ。
お茶を飲み干して、口内を潤す。
一息ついて、私はおばあちゃんの瞳を見据えた。
「私、おばあちゃんに謝りたくて……おばあちゃん、私をいつも見守ってくれてありがとう! いっつも私、迷惑かけてばっかりで……それなのに、私と向き合ってくれた。私のこと、見捨てなかった。ごめんなさい、こんな私で」
「ミコは、あたしの唯一の孫なのよ。見捨てることなんて、せぇへんよ」
また、涙が目尻に溜まりだした。
ますます、私は罪悪感に見舞われた。
私自身が祖母となり、孫がいるからだろうか。
後悔の念が胸の内から湧いて溢れてくる。
それを少しでも減らすために、私はおばあちゃんと会話した。
会話の内容は、これから先のこと。
私が母になったこと、おばあちゃんになったこと。
私の将来を具体的に話したところで、おばあちゃんにとって訳の分からない言葉の羅列にしかならない。
妄想を口にしているようなものだ。
なのに、おばあちゃんはじっと、じぃーっと耳を傾けてくれた。
相槌も打ってくれるし、楽しそうに聴いてくれている。
未来の自分を信じてくれているのだ。
私にとって、一番のカウンセラーは間違いなく私のおばあちゃんだ。
日が暮れ、外は真っ暗になった頃。
おばあちゃんは盛大なご馳走をつくってくれた。
といっても、あの頃よく食べていた煮物やらおでんやらだが。
それでも今の私にとって、ご馳走には変わりなかった。
それから一緒にクイズ番組を見たり、膝枕してもらったり。
贅沢な午後を過ごしていたのだった。
お風呂をあがった後、私はおばあちゃんに忠告することにした。
「おばあちゃん!」
湯飲みをもった両手を下ろし、私に視線を合わせた。
「どうしたの、ミコちゃん」
「明日、階段を下りるときはちゃんと手すりを掴んでや! そうしないと、おばあちゃん……死んじゃうから」
いきなりの忠告を驚かずして聴けるだろうか。
だけど、おばあちゃんは違った。
「そうかい。ありがとう、ミコちゃん。気を付けて、下りるね」
ニコッと笑って、了承してくれた。
それでも私は安心しきれず、階段に片足をかけて再度、忠告した。
「絶対、ぜぇーったい、階段下りるときは気を付けてや! 絶対やで! おやすみ!」
そう言い放ってから、階段を駆け上った。
背後から、おばあちゃんの声で「おやすみ」と響いてきた。
朝になっても、私は言い続けた。
玄関を出るまで、ずっと。
おばあちゃんに死んでほしくない一心で、私は注意を促した。
満足するまで声をかけてから、登校したのだった。
「いってくる!」
「いってらっしゃい、ミコちゃん」
四時間目の終わりを知らせるチャイムが鳴る。
クラス中が活発になった。
持ってきた弁当を机に出すと、アヤが椅子を引っ張ってきて横に陣取った。
「今日も、おでん? 渋いねぇ」
「私は、満足してるからいいの」
「……珍しいね、そんなこと言うなんて。昨日から、なんか変だよ?」
私は別人のように見えるだろう。
75年も年を重ねれば、中身もすっかり変わるものである。
それに昨日、ちゃんと謝れた。
「アヤの弁当は揚げ物ばかりで太りそう」
「私も満足してるから、いいの」
笑いながら箸を持ち上げた瞬間、誰かが私の肩を叩いた。
振り返ると、そこには担任の先生が立っていた。
表情を険しくしながら「教室の外に出ろ」とだけ言って、さっと出ていく。
私は言われた通り、外に出ると担任が小声で話し始めた。
「さっき、病院から電話がかかってきてな。お前の祖母が意識不明で倒れたらしい」
「……えっ」
一気に意識が遠のいた。
「すぐに帰る用意をしてくれ。俺が病院まで運転するから」
「はい……わかりました」
ここからほぼ無意識だった。
気がついたら、私は病院に着いていて、次の瞬間には、おばあちゃんが横たわるベッドの傍に移動していた。
おばあちゃんの頭には包帯が巻かれ、目を閉じていた。
動く気配はない。
風前の灯火を目の前で見ているような感覚であった。
私の後ろには、両親がいた。
両親は、医師から事情を聞いていた。
「なんで……おばあちゃん、なんで」
あんだけ言ったのに。
耳に胼胝ができるくらい何度も何度も言ったのに。
なんでなの。
「おばあちゃん……死なないで」
おばあちゃんの手を握り、私はしゃがみ込んだ。
祈るように、ぎゅっと冷たい手を握る。
私を撫でてくれた手は、あんなにも温かったはずなのに。
「あぁ……」
とても小さな唸り声が聞こえた気がした。
おばあちゃんの口許を見てみると、微かに口角が震えている。
握っていた手がほんの一瞬、脈打つように動いた。
最後の力を振り絞って、私の手を握ろうとしているようだった。
「おばあちゃん……?」
その呟きは、声に出たのか分からないほど小さかった。
眉をひそめながら、耳をおばあちゃんの口に近づける。
近づけた耳に当たるのは、虫の息と言っていいほど弱々しい息だった。
「ミコの『ごめんなさい』は……うれしかったよ。おばあちゃ……ちょっと……出かけて、くる、ね。いい子で……待ってるの、よ……」
命の限りを尽くして、私に言葉を遺した。
私の手を握ろうとしていた手は力尽き、ベッドに落ちる。
おばあちゃんは逝ってしまった。
「……いやや、私も行く! おばあちゃん! おばあちゃん!」
病室によどむ重苦しい空気を爆発させるように叫び声を張り上げる。
おばあちゃんの手を力強く握り締め、息を吹き返すよう祈った。
泣き叫んで、泣き叫んで、おばあちゃんが去った現実を受け入れないようにする。
「なんで、私を置いていくの! 私も行く! すぐに、おばあちゃんのところに行くから! 行くから、私を……置いていかんといて! お願いやから!」
おばあちゃんの体にしがみ付こうとしたが、両親によって引き剥がされてしまった。
医師は看護師を呼んで、ベッドに集まる。
私は引っ張られながら、おばあちゃんの方に手を伸ばした。
届かないと分かっていても、それでもあがき続けた。
「置いて、いかないで……」
目の前が光で覆われていく。
前方から伸びてくる光が視界を奪ってくる。
迫りくる光の波に押され、私は尻もちをついた。
医師も看護師も、両親もおばあちゃんも光に飲み込まれ、私だけが取り残されている。
白金に包まれた光景を眩しいと思うことはなく、不思議と直視できた。
一度、瞬きをする。
すると、前方におばあちゃんのシルエットがあった。
「おばあ……ちゃん?」
影は何も答えない。
私は立ち上がって、影まで走った。
その影に縋りつこうと必死になって駆ける。
影は私の存在に気付き、大きく両腕を広げた。
「おばあちゃん! 待ってて、すぐそっちに行くから!」
私は、おばあちゃんの胸に向かって飛び込んだ。
「おばあちゃん! だいすき!」
甲高い電子音が記憶没入科の病室で鳴り響く。
生奥野がボタンを押すと、装置から安倉ミコが排出された。
娘は駆け寄ろうとしたが医師に肩を掴まれ、止められる。
医師は娘に対して首を横に振ると、娘は泣き崩れる。
電子音が鳴り止んだ後は、鼻水をすする音と嗚咽がしていた。
安倉ミコの顔は微笑んでおり、目尻から一滴の涙がこぼれ落ちる。
ごめんなさい――彼女から後悔は消え去り、満足そうに笑っていたのだった。
75年越しの『ごめんなさい』 神島しとう @shimei4977
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます