その126 終焉の時、来たれり
私は少し考える。まずこの世界の中心はなんだ?
それはこの湖だったはずで、ニムエさんが拠点にしていたことからもここが重要な場所であることは間違いない。
つまり、この湖をめちゃくちゃにされると超困るはずである。
そうなると、当初予定していた湖の水ぜんぶ抜く大作戦を実行していたら相当な打撃になっていた可能性が高い。
ぬ、抜いてしまうか……? いや、今更抜く程度ではめちゃくちゃとは言えない。
じゃあ、抜くのではなく……枯らす!
それも、この森ごと全部だ!
「覚悟が決まりました! ──と、その前に。お兄様の身の安全を確保しなければなりません」
「自身の兄が危険になるほどめちゃくちゃにしようと言うのか主よ……」
「ね、念のためですから! ちょっとこの世界の全てを枯らそうとしているだけで!」
「我が妹ながら発想がえげつないな……」
「めちゃくちゃの方向性が我らとは別次元である」
「あれー!? さっきまで乗り気だった二人に引かれてる!?」
私なりによく考えて出しためちゃくちゃに対する結論だったのに、まさかここではしごを外されるとは!
そ、そんなに枯らすのっておかしいですか? 私の頭が鳥頭で考え無しのカラス脳ですか!?
カラスは賢い方だけど!
「安心せよ主、この世界でなら我もいくらか魔法が使える。彼のことは我が守ろう」
「まさか俺が守られる立場になるとは……」
「『私から』守られるなのが色々おかしいですね」
いつの間にか事態はヘンテコなことになって、私とお兄様の立場が逆転どころか明後日の方向へ転がり落ちていた。
どうしてこんなことに!
「一応、ニムエの作り出した世界であるから、全てを破壊しても元通りに直せるとは思うが」
「じゃ、じゃあ、枯らしても大丈夫ですね?」
「敵の心配をするようになってしまったか……まあいい。ラウラ、終焉を
「はい! 世界に終わりを告げます!」
「主は世界の救世主だったはずなのだがな……」
いつの間にか世界の破壊者となっている私だった。
しかし、世界を破壊するなんて体験、人生一度で間違いない上に──すっごい中二心が疼きます!
オタクなら、誰もが一度は妄想する世界の終わり。
それを己の手で叶えられるとは!
「
「何を言っているのかまったく分からないがその調子だ」
「この調子で大丈夫であるか……?」
うおー! だんだん気分が乗って来た!
魔法はこういう気分が最高潮になった時に最大の発現をするもの……今なら世界をめちゃくちゃに出来る気がする!
ビバ! 中二マインド!
「始めます!」
後方ではお兄様の周囲を光の輪が包み込む。どうやらそれがエクシュの守護魔法のようで、これなら私も安心して世界を終焉の闇に沈められるというものだった。
中二ハート大活性! 最高に気合を入れた恥ずかしい詠唱も、今なら恥ずかしげなくやれる!
行くぞー!
「『神の如き権限により世界に
怒涛の勢いで発した私の詠唱に応えて、頭上にナニカが生み出されていく。如何にも恐ろしげなナニカが。
中心は暗黒で、しかし周囲は輝く赤い炎を纏ったその謎の球体は、やがてこの世の全てを枯らすべく超高温で熱を発し始める!
魔法は己の意思で放つので、この熱が私を傷つけることはないが、周囲の青々とした自然は違う。
地上に顕現した黒い太陽によって、全ては急速に枯れていく……!
地は干上がり、ひび割れていき、空気も熱によって歪み、枯れた木々は更に燃え始め、地上すらも同じく炎を発し、世界は一瞬で地獄絵図と化した。
………………やりすぎだったかもしれない!
地獄じゃん! 地獄作っちゃったじゃん!
中二精神に任せてやってみたけど、私の魔法は私が思っている以上にヤバい代物だったようだ。
うん、こんな魔法やっぱりいらないから、記憶は取り戻しておくものだな!
「やりすぎとかそういうレベルじゃないでしょこれ~!」
「あっ、ニムエさんだ」
荒廃した大地からひょっこりとニムエさんが姿を現す。
その周囲には光の輪が広がっており、エクシュと同じ魔法を使っていることがうかがえた。
よ、よかった……死んでなくて!
「地獄を作らないで~~~~~~! も、戻せるけど~~~~……」
「戻せるんですね! た、多分そうだとは思っていましたが、良かったです……」
「よくないわよ~~~~~~~~~~~~~!」
超お怒りのニムエさんだった。お、お兄様曰く今や敵なのだけど、それでもなお申し訳なさすぎる。
でもここで怯んでいたら世界を地獄へと堕とした意味がない! 記憶を返してもらわないと!
「さあ! この地を元に戻すなら私の記憶も一緒に戻していただきましょう! ハリーアップ!」
「魔王だわこの子~…………」
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