その115 筋肉大好き
慌ててボロボロになったグレンの元まで急ぐと──何故か彼の服は派手にはだけていた。
鍛え上げられた胸筋が非常にセクシーで目のやり場に困るのだけど……しかし、どうしても見てしまう自分がいる。
エロい! ナイスバルク! もうでかい! 筋肉縄文杉! 巨乳! 大胸筋が歩いてる! マスクメロン! 肩にちっちゃいジープ乗ってんのかーい!
……いや、そうじゃなくて!
今は筋肉の美しさも鎖骨の淫靡さもどうでもいいんだよ!
グレン倒れてるんだから!
「ぐ、グレン、大丈夫ですか?」
「……よ、余裕だぜ」
よろよろと立ち上がり親指を立てて見せるグレンだが、明らかにギリギリでまるで余裕には見えない!
「すまんグレン、未知の魔法すぎてかき消しきれなかった。なんとかダメージは服だけに留めたのじゃが……」
「服だけにダメージ留めるの逆に難しくないですか!?」
見た目はボロッボロで疲労困憊な様子だけど、ナナっさんの魔法は何とか間に合っていたらしく、吹っ飛び方のわりにグレンへのダメージは少ないようだった。
よ、よかった……空中で錐揉みしながら飛んで行ったときはどうなることかと……。
「服に過剰にダメージが残ったのはラウラウの魔法の効果じゃろうな」
「私のせいだったー!?」
「魔法と言うのはその人間の意思が重要じゃからな。どれだけ強力な魔法でも、ラウラウの魔法でグレンが大怪我負うことはないじゃろうと思っておったよ」
「私の意思がグレンの裸を求めたと言うんですか!」
「いや、裸にはなってねぇよ。半裸だ半裸」
男性から見れば上半身裸程度は何でもないのか、その逞しい筋肉を見せつけるように平然としているグレンなのだけど、私は筋肉大好きらしく、興奮を抑えるので大変だ。
ヤバい、変態が加速してる……!
でも、筋肉は全人類好きだし、変ってほどじゃないよね……?
「しかし、これではっきりしたのう。ラウラウは儂に並ぶ魔法使いになれる……いや、超えられるかもしれん」
「くそっ、強力なライバル登場だな……」
「ライバりませんから!」
「ライバるって動詞ではねぇよ! ちなみに今回で三回目の敗北だから、お前は三人目のライバルだ」
「そこそこ負けとるのう!?」
世界最強を目指す決闘好きのグレンだが、思いの外負けている!
いや、誰彼構わず決闘を挑んで三回の敗北で済んでいるのなら、かなり強いのかな……?
「一人はお前の兄貴のジョセフ、もう一人はヘンリーだ」
「お兄様でしたか……」
「うん? まてよグレン、お主、ラウラウ甘やかし隊の中でも、もしや下の方の強さなのではないか?」
「なんだと!?」
挑発的とさえ言えるナナっさんの言葉に衝撃を受けたグレンは、指折りラウラ様甘やかし隊(このグループ名本当にひどすぎる!)を数え始める。
ええっと、でも、確かに私、お兄様、ヘンリーに負けているとすると……。
「まず三人に負けている時点で序列四位に落ちるのじゃが、そこから更にイブンが入って来ることで五位に落ちる。更に更にジェーンは天才じゃから、きちんと戦えばお主とは互角……もしくはそれ以上の可能性も高い。そうなると、お主がラ甘隊で確実に勝てるのは──ローザだけじゃ!」
「し、下から二番目だと!? この俺が!!!!」
「ローザはそもそも戦闘魔法に興味がないサポート役であることを考えると、番外に置いてもよい。そうすると……」
「最下位じゃねぇか! マジかよ!」
冷静に分析した結果、なんとラ甘隊においてグレンの強さは最下層にあるらしい。
そ、そんな馬鹿な!? 暴……暴なんだっけ? 何とか領域は超強そうだったのに!
というか事実として強いでしょ!
「いや、あの、ラ甘隊が強すぎるだけでは?」
「それはそうじゃな、平均値が高すぎる。あと、グレンとジョセフとヘンリーは正直そんなに変わらんと思うから、負けたのは時の運じゃと思う。それにジェーンは将来的には凄いじゃろうが、今はまだグレンの方が強いと思うぞ」
さすがにからかいが混じっていたのか、フォローするように言葉を選ぶナナっさん。
つまり、戦闘力を数字にして考えると90・89・88みたいな並びになっているということだろうか。
いや、この図式で考えると、私が99とかになっちゃうんだけど……。
「そんなの言い訳にならねぇよ……マジか……マジか……」
吹っ飛ばされたこと以上にグレンはダメージを受けているらしく、地面に膝を突き、光の無い目でどっか遠くを眺めている。
泣きっ面に蜂すぎない?
い、いくら何でも可哀そうすぎる……。
「ぎゃ、逆に考えましょうグレン! 強い人の集まったラ甘隊で一番になれば、自然と世界最強に大きく前進します!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます