第34話
ある日、デラは不要になった物を捨てる為に、裏庭にある小さな焼却炉へと向かった。
「?」
角を曲がろうとした時、人の気配を感じ、思わず隠れてしまう。デラは遠目で焼却炉の前にいる人物を確認すると、立っていたのは意外にもレナードだった。
焼却炉などに一体なんの用があるのだろうか。不要なものは、従者に処分させるのが普通だ。余程のことがなければ、自らこんな場所などに来るはずがない。
はらり。
レナードの手からなにかが落とされ、それは燃え盛る炎の中に消えた。
今のは、リボン?
どこかで見たような。デラは記憶を辿る。……確か以前ヴィオラがレナードと一緒に繁華街へ買い物へ出掛けた時に、持って帰って来た物だった気がする。だが、どうしてそれをレナードが、燃やして……。
何となく怖くなったデラは、踵を返しその場を後にした。
数日後、ヴィオラはまたレナードと繁華街へ買い物へと出掛けた。
「お帰りなさいませ」
デラが2人を出迎えると、レナードは上機嫌で、ヴィオラは何故か元気がないように見える。レナードは、部屋までヴィオラを送り届けると、仕事の為自室に篭った。
「ヴィオラ様、如何されましたか」
記憶をなくしてからは、ヴィオラはデラと必要以上に会話する事はなくなっていたが、最近はまた少しずつ話をしてくれる様になっていた。レナードと買い物に行った時には、町の様子や何を買った、食べたなど色々話してくれ、デラは喜んでいたのだが……。
今日は黙り込み、俯いていた。
「あのね、実は……」
ヴィオラの話によれば、先日訪れたある店に、また立ち寄ったらしい。以前親切にしてくれた親子の話はヴィオラから聞いてる。その時、ヴィオラはとても嬉しそうにその話をしていた。人から親切にされた事が余程嬉しかったのだろう。
「いなくなってしまったって……」
その店に立ち寄ったが、店は閉まっていた。レナードからは、諦めて他に行こうと言われたらしいが、ヴィオラは残念がって渋った。
2人がその場に立ち尽くしていると、道行く人から声を掛けられ「暫くは、店は再開しないと思うよ。聞いた話では、店主の息子が行方不明らしくてさ。息子の靴が片方見つかったんだけど……血がベッタリついていたらしいよ」そう教えられたヴィオラは、始めは何を言われたか分からなかった。
「野盗か何かに襲われて、連れ去られたのかも知れない」
「へ……」
「そうしたら、もう生きては……」
レナードは深刻な面持ちでそう話したそうだ。それを聞いてヴィオラは、なんとも言えない気持ちになり、その所為で元気をなくしていた。
落ち込むヴィオラを見て、デラは眉を潜めた。この辺りに野盗が出るなどと聞いた事があっただろうか。
それに、何か違和感がある。先程の上機嫌なレナードといい、先日その店の店主から貰ったと思われるリボンを燃やしていたのも気掛かりだ。
瞬間ある事が頭を過る。だが、レナードがそんな事をする理由が分からない。
「大丈夫ですよ、ヴィオラ様。きっと、その方は無事でいらっしゃいます」
なんの根拠もない慰めだ。
「……そうね。きっと、大丈夫よね」
だが、純粋なヴィオラには効果的面だったようで、いつもの笑顔に戻った。
デラはヴィオラに分からないように、ため息を吐いた。
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