第3話 類は友を呼ぶ
昼休みを告げるチャイムが響く。
今日もボッチ飯!
大丈夫、みんな優しいから教室で食べてても何も言わないよ!
たまに目が合って気まずいけどね!
「あ、ヒトシ、こっちこっち」
「……」
空が青いなー……
「あ゛? なに無視してんの?」
「すぅ……」
もしかして、もう死ぬのかな……
手招きしてる姿が見える……
なぜかおばあちゃんじゃなくてクラスの女子だけど。
「ちょっと、よんでんだけど?」
「ゴメンナサイヒトチガイカトオモッテ」
「さっさと来なさいよ」
「はい……」
首根っこ引っ張られた……
「リンカ~? 誰それ~?」
「ダチ」
「えー、いがーい。なんてーの?」
「ヒトシだって」
「ひっしーね。よろしくー」
「よ、よろしくお願いします……」
「さっちーでいいよ」
「さっちーさん」
「そそ。よろー」
さっちーさんというらしい。
「んで、リンカ、いつ知り合ったん?」
「きのー」
「ほやほやじゃん」
「なにそれ」
「いままでかかわってなかったじゃーん」
「ま、いろいろあんの」
「ふーん」
「いいから、さっさとたべるよ」
二人がお弁当を食べ始める。
「たべないの?」
「あ、いただきます……」
「ひっしーって案外食べないんだ?」
「そ、そうですか?」
「りんか達とあんまかわんないしね」
「ね。男子ってもっと食べるもんじゃないの?」
「いえ、そのぉ……運動部じゃないので……」
「てか、手作り?」
「はい、一応そうです……」
「へーすごいじゃん」
これってやっぱり先生を恨めばいいのかな?
まずね、他人と話すとか無理なんですよね。
話すときには覚悟が必要なわけで、こうやっていきなり連れてこられた先で他人と話すとかきついんです。
そりゃね、全くの他人ならどう思われても関係ないので、そこまで緊張しませんよ? でも、これからもクラスは同じなわけで、ここで変なことしちゃうと今後そういう目でクラスから見られるわけで、特にこんな交流関係が広そうな人にそんな風に思われたらあああああ……
「聞いてんの?」
「はいきいてます」
色々考えていたせいで反応が遅れてしまった。
こういうのが陰キャとか言われる理由なんだろうね。
勝手にマイナスのこと考えて、いろんな方向に思考が飛んで行って、元々考えてたことなんだっけみたいに……
「おい」
「はいっ!」
「なに、体調悪いの?」
「イエダイジョウブデス」
「で?」
「え……?」
「今日暇なのかって聞いてるんだけど?」
「あ、え、暇ですけど……」
「そ、じゃ、あけといて」
「は、はい……」
いつの間にそんな話に……?
+++
「いえーぃ!」
カラオケ店にやってきております、小野田仁です。
えー、先ほど、さっちーさんの下の名前が
「じゃ、次はヒトシね」
「はい」
ふふっ……陰キャをなめちゃいけない。
なんだかんだ流行についていこうとして、人気の最新曲を調べたりしてるのだ。
+++
「おぉ……ひっしー結構上手じゃん!」
「そ、そうですか……?」
やったー!!
もしかしてさっちーさん結構いい人なんじゃ?
ギャルってだけで誤解してましたごめんなさい。
ギャルは陰キャに優しい設定のある最近の漫画にどうせフィクションとか思っててごめんなさい。
「なんかーあれだよね? 頑張ってる感じ伝わってきてよかったよ!」
「あ、それめっちゃわかる。ヒトシがこれ歌うギャップっていうか」
「そーそー! 意外だよねー」
「……」
優しいんじゃなくて悪気が無いだけでした。
そして、悪気のない正直な言葉でも十分の威力を持っていました。
「ひっしー、もっかいうたってよー」
「わかる、ききたーい」
覚悟を決めましょう。
私は道化となりましょう。
そう、私はエンターテイナー。
楽しんでくれることこそ至高!
+++
燃え尽きました。
「ひっしーがこんなおもしろいとか知らなかったー。またこよーねー」
「だね。またこよ」
なんだかんだ頑張った結果、報酬は女子二人の連絡先でした。
これは……おつりがくるのでは!?
「またがっこーでねー!」
「じゃね、ヒトシ」
「はい。また明日です」
二人と別れ、家に向かう。
妙な達成感が体を包んでいた。
+++
「はい。すみません、ありがとうございました」
いやー、今の俺、超『教師』やってる。
困ってる生徒のために自分の時間犠牲にするっていい奴過ぎるなー。
小野田のやつ、喜ぶだろ。
いや、泣いて崇めてくるか?
なんてな。
「こいつなら小野田とも相性いいだろうし」
小野田と同じく、馬鹿正直に友達がいないと書かれたアンケート用紙。
学年が違うってのは少し気になるけど……ま、一つの年齢の差なんて大したことないだろ。
あー、楽しみだなぁ。
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