さあ、友達作りなさい

皮以祝

第1話 友達いますか?いりますか?

「友達作れ」

「あはは」


 現在個人面談中。

 目の前には担任が一人。


「もしくは彼女」

「あはは」

「いや、ガチだから。2年の間に作れなかったら学生支援センターに報告するからな」

「いやいや、うそでしょ? 友達いないくらいで報告って」

「ガチだから」

「……ガチ?」

「ガチ」


 目の前の男は優しい笑みを浮かべている。

 そして、きっと俺も同じ表情を浮かべていた。

 担任、生田先生が立ち上がった。


「じゃ、帰っていいぞー」

「まって⁉ 冗談ですよね⁉」

小野田おのだ


 突然、肩に手を置かれた。


「先生?」

「お前の気持ちはよくわかる」

「先生っ!」

「でも、報告はする」

「先生!」

「まあ、待て。落ち着け」

「殴りかかるところでした」

「嘘つけ。椅子に座ったままだろう、お前」


 再び対面へと座った先生は、真剣な眼差しで俺の目を見た。


「俺は、大学1年の時に全く同じことを言われた」

「え、自分語りですか?」

「その時の先生だった人も、『小学生みたいなこと言うようだけど』とか言ってたなぁ」

「はあ」


 何聞かされてんの?


「当時の俺は、『あ、この人間も群れないと生きていけない弱者か』と思ってたんだ」

「いや、いった⁉ え、先生ってそんな中二病だったんですか⁉」

「いや、中二病じゃない。ただの一般ガチオタだった」

「一般とガチオタは共存できないと思いますよ」

「いや、昔は今よりオタクの基準が厳しかったからな。今ならライトオタクってやつだ」

「はあ」

「で、だ。まあ、いろいろ言ってくるわけだ。友達がいないと相談相手がいなくてどうのこうのとか。精神的に塞ぎこむとかな」

「ソウナンデスカー」

「で、結局、1年の間、友人と呼べる相手は一人もいなかった」


 そろそろ雪降りそうだなー。


「そしたら、いきなり電話がかかってきたんだ」

「え」

「『もしもし、理明りめい大学学生支援課の飛騨です。教育学部の生田武明たけあきさんの電話でよろしかったでしょうか?』」

「そんな」

「あれはな……つらいぞ」


 先生の目が……


「こっちが悩み無いなんて言ってもしつこく聞いてくるんだ。不安なことはありませんか、趣味は持っていますか、ってな。あっちからすれば面談した人間から頼まれたことだから仕方ない。そう、仕方なかったんだ」

「もう、やめてください」

「だから、おんなじ目にあってほしくないんだ」

「でも、どうすれば……」


 友達なんてできたこと……


「今は、俺がお前の担任だ。お前の気持ちは理解できる」

「先生!」

「ふっ、任せておけ」



+++



「あの、小野田ひとしくんですよね? 私、クラス委員長の木森きもり晶子あきこって言います。……その、生田先生に言われたので、えっと……私と友達になりませんか?」


 しにたい。

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